米関税、インフレと景気減速招く=バーFRB理事

 5月9日、米連邦準備理事会(FRB)のバー理事は、トランプ大統領の通商政策について、年内のインフレ加速、景気減速、失業増大につながる可能性が高く、FRBはどの問題に対処するかで難しい決断を迫られることになるとの認識を示した。米首都ワシントンで2023年5月撮影(2025年 ロイター/Evelyn Hockstein)

[9日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のバー理事は9日、トランプ大統領の通商政策について、年内のインフレ加速、景気減速、失業増大につながる可能性が高く、FRBはどの問題に対処するかで難しい決断を迫られることになるとの認識を示した。

アイスランド中央銀行での講演向け準備原稿で見解を示した。

バー氏は「最近の関税引き上げの規模と範囲は現代では前例がなく、最終的な形も分からない。経済にどのような影響を与えるかを把握するのは時期尚早だ」と指摘。

その上でリスクは明らかだとの考えを示し「私の見解では、関税引き上げは世界のサプライチェーンに混乱を招き、インフレに持続的な上昇圧力をかける可能性がある」とし、企業の流通網再構築に時間がかかるとの認識を示した。

小規模事業者など、一部のサプライヤーは迅速に適応できず、倒産する可能性があり、サプライチェーンの混乱に拍車をかける恐れがあるとも指摘した。

また「経済が減速する中で、関税が失業率の上昇につながることも同様に懸念している」とし「このため、インフレ率と失業率の双方が上昇すれば(FRBは)難しい立場に立たされる可能性がある」と述べた。

トランプ氏が4月2日に相互関税を発表する前の国内経済と労働市場が良好だったことを踏まえれば、金融政策は「状況の変化に応じて調整できる良い状態にある」との認識も示した。

バー氏は銀行規制の強化を推進していたが、広範な規制緩和を目指すトランプ氏との対立を回避するため、今年2月にFRB副議長(銀行監督担当)を辞任。異例の措置としてFRB理事にはとどまった。金融政策にコメントするのは約1年ぶり。

講演後の質疑応答では、関税のインフレや失業を中心に経済にどのように影響するか、金利調整前に見極める必要があると指摘。「昨年は経済成長が力強く、現在もその勢いを維持している。失業率は長期間にわたり低水準で安定しており、関税がどうなるかはまだ分からない」とし、「したがって様子見の姿勢が必要だ」と述べた。

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