愛犬の個性はどこから来る? 心理学と遺伝学が交差して見えてきた「十犬十色」のメカニズム

『犬の性格を科学する 遺伝子でひもとく「最良の友」の進化』(今野晃嗣、村山美穂 著、集英社新書)の著者のひとりである村山美穂さんは、京都大学野生動物研究センター教授。 動物の性格についての興味はサルからスタートしたそうですが、やがてその興味がイヌへと広がっていったのだといいます。 専門的な話になるので詳細は省きますが、「ヒトの性格に関連する遺伝子の報告を見つけて、サルやイヌの遺伝子ではどうなっているのか、調べてみた」というのです(なお、ここからは「犬」ではなく、生物学などで用いられている「イヌ」という表記を用いることにします)。 サルは生物の分類として私たちヒトに近いですが、身近な動物の代表はイヌです。そのイヌの遺伝子にも、ヒトと似た部分や違う部分が見つかってきました。「遺伝子」というツールを使ってみると、イヌからヒトまで、同じ言葉で表現できる。まるで望遠鏡や顕微鏡で、みえなかった世界がみえるようになったようなものです。みえていた行動の後ろに隠れていた未知の扉を開けたような感覚に、わくわくしました。(「まえがき」より) かくして研究をつづけていく過程で出会ったのが、共著者である今野晃嗣さん。動物心理学を専門とする、麻布大学獣医学部動物応用学科講師です。 別の大学にいた今野さんが、文学部の卒業研究でイヌの性格をテーマに選び、大学院で遺伝子との関わりを調べたい、と私の研究室を訪ねてこられたのです。(「まえがき」より) つまり本書は、それぞれの立場からイヌに関心を抱くおふたりの共同作業によって生まれたわけです。きょうは序章「イヌの性格の科学」に焦点を当て、基本的なことを確認してみることにしましょう。

人類の「最良の友」といわれるイヌ。学名は Canis familiaris (カニス・ファミリアリス)。「イヌ属の飼いならされた種」という意味です。その名が示すとおり、イヌは古くからヒトとともに生活してきたため、ほかの野生動物にはみられない独自の領域をもっています。(14ページより) その特徴のひとつが、同じ種とは思えないほどに見た目が多様なこと。 たとえばメキシコ原産の小型犬種として知られるチワワは体高がわずか15~25cm、体重も1~3kgしかありません。しかしその一方、スイスの山岳救助犬として活躍した歴史をもつセント・バーナードは体高が70~90cm、体重は50~80kg。かなりの差があることがわかります。 もちろんサイズだけでなく、姿かたちもさまざま。日本犬の代表である柴犬は、短く整った赤茶色の毛をまとい、ピンと立った耳とクルっと巻いた尾が印象的。一方、フランス原産のプードルは水をはじく縮れたカーリーヘアーが特徴ですし、ドイツ原産のダックスフントは極端に短い脚が魅力でもあります。 しかもイヌの豊かな個性は、犬種による違いにとどまらないようです。なるほど、同じ犬種であったとしても柴犬には赤毛や黒毛などの毛色の違いがありますし、プードルやダックスフントは毛色のみならずサイズのバリエーションも豊富です。 こうしたことからもわかるように、イヌは「十犬十色」と表現できるほど多様性が高いわけですが、見た目以上に個性的なのが「性格」です。 愛犬家ならおわかりでしょうが、誰とでもすぐに仲よくなれる社交的なイヌがいる一方、初対面の相手にはうまくなじめないシャイなイヌも。そればかりか、同じ犬種でも性格が違ったり、あるいは犬種は違うけれど性格は似ているというケースもあります。「人それぞれ」ならぬ「イヌそれぞれ」なのです。 今野さんもここで、自身が飼ってきたイヌの特徴を明かしています。 今野家にはいつもイヌがいました。私が子どもの頃に一緒に暮らしていたドンという名のイヌは、人あたりのよい優しい性格でした。一方、高校生の頃にわが家に迎え入れたダンはかなりの怖がりで、見知らぬ訪問者には激しく吠え続けていました。ドンもダンもどちらも雑種で、どちらも同じ家庭で育ったのにもかかわらず、その性格はまったく違いました。こうした一頭一頭のイヌの性格の違いは、いったいどこからくるのでしょうか。(15ページより) たしかに、その理由は知りたいところ。しかし残念ながら現在の科学は、こういった性格の違いを生み出した個別の原因を完全に解明するには至っていないようです。とはいえイヌの性格研究は着実に進んでおり、一頭一頭のイヌの性格を理解するヒントとなりうる発見が日々刻々と積み上げられているそうです。(14ページより)

ライフハッカー・ジャパン
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************

関連記事: