【毎日書評】「断れない」「頼れない」「気にしすぎる」。職場のいい人を卒業するための心理学(ライフハッカー・ジャパン)

仕事はあくまで、生活するための金銭を稼ぐ手段のはず。また、同僚や上司など“職場の人間”は、基本的には仕事を通じた関係でしかありません。つまり本質的には、職場は「三者関係」を基盤にした空間なのだと著者は述べています。 三者関係とは、自分と他者の役割や立場、相互の関係性に対する理解を含むものであり、私たちが社会で他人と関係を築く上でのひな形。バウンダリーの上に構築され、バウンダリーを機能させるための人間関係であるのだといいます。 しかし職場は一般的に、境界線の問題が起きやすい環境でもあります。たとえば次のようなものが、一般的な境界線の問題として考えられるでしょう。 ・期待に応えようとして断りきれず、自分の限界を越えた仕事を引き受けてしまう ・同僚に頼ることができずに一人で仕事を抱え込んでしまう ・過度に業務や責任を負わされてしまう ・職場のなかで、誰にも頼ったり相談したりすることができない (206ページより) こうした悩みは、ほとんどすべての人が抱えているものではないでしょうか? その理由は、私たちが仕事を二者関係における対象、すなわち自分自身の人格と深く結びついた対象としてしまっていることにあるそうです。 態度や感情、才能や価値観といったもの、すなわち人格は、本来は精神的な境界線において守られ、自分の内側に留めておくべきものです。しかし、現代に生きる私たちは、それを仕事へと引っ張り出してこざるを得ない文化で生きているのです。(207ページより) そのため仕事は人格そのものと結びつけられ、仕事が思い通りにいかないときには心が乱れてしまうわけです。(205ページより)

本来であれば職場とは、努力してバウンダリーを設定しなくてもいい場所。仕事でバウンダリーを設定するためには、仕事をきちんと本来あるべき三者関係に戻すようなメンテナンスの機会がなにより大切になるはずです。 そこで具体的には、次のようなことを心から実感していかなくてはいけないと著者は主張しています。 ・仕事はあくまで生活の一部であり、すべてではないこと ・仕事やそこでの評価が、私たちの価値を決めるものではないこと ・仕事で成功することだけが人生の目標ではないこと (208ページより) 仕事のなかに留まり続けていたなら、こうしたことを心から実感するのは困難。逆説的ではありますが、“仕事以外の生活のなかにやりがいや生きがいを見つけること”こそが、仕事でのバウンダリーを設定するために必要不可欠であるということです。 たとえば、趣味を見つけて休暇を楽しみ、友人や家族と交流する──。小さなことだと思われるかもしれませんが、そういったことが、職場での境界線を安定させてくれるわけです。そうして初めて、職場でのバウンダリーの設定が可能になり、効果を生むということ。 とはいえ、支配的な境界線を構築することが仕事術として容認されていたり、あるいはバウンダリーが「わがまま」「意欲がない」と見なされたりするような環境であったとしたら、それを主張することが有効であるとは限りません。しかも残念なことに、個人のバウンダリーを尊重しない職場は、しばしば見られるのだそうです。 したがって、そうした環境にいる場合には、転職することも含め、仕事から精神的・物理的に距離を置く“環境調整”を検討する必要もあるようです。(207ページより) 自他境界とは、「誰か」に振り回されることなく、「自分」のために生きることを可能にするものだといいます。人間関係のトラブルを解決し、より心地よく生きていくために、参考にしてみる価値はありそうです。 >>Kindle unlimited、500万冊以上が楽しめる読み放題を体験! Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

印南敦史

ライフハッカー・ジャパン
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