「日本一国旗を掲げる町」のまばらな日の丸 2日歩き見えてきたもの

東京社会部 平川仁

 「日本一日の丸を掲げる町」を目指した自治体がある――。そう聞いて2月、石川県中能登町を訪れた。「国旗損壊罪」の制定を目指す高市早苗首相ら自民党が、衆院選で圧勝した3日後。建国記念の日だった。

 雨のなか町に着くと、拍子抜けした。中心部の住宅約80軒のうち、日の丸を掲げていたのは4軒だった。

「国旗を掲げる」 施策が低調だった理由は

 町は2012~22年、日の丸の購入者に商品券を配った。日の丸を身につけた選手が躍動する五輪に着想を得た町議が、愛国心を育みつつ、町の話題づくりになると提案した。町の封筒には今も、「祝日には国旗を掲揚しましょう」とある。

 施策は浸透せず、制度の利用は低調だった。掲げない理由を町民たちに問うと、「雨が降ると片付けが面倒だから」「そんな施策は聞いたことがない」といった声が聞かれた。生活実感に基づいていた。

 「損壊罪」については賛否が分かれた。ただ、印象に残ったのは、次のような懸念の声だった。

「愛国心の踏み絵に・・・」 国旗は掲げても、抱える懸念

 雨の中、日の丸を掲げていた70代男性は「日本に生まれてよかったという思いから、自分にとって掲げるのはあたり前」と言いながら、「国や町が大上段から『国旗を大事にしろ』と言えば、それができている人は偉くて、できていない人は肩身が狭くなる」とも語った。

 雨で旗を掲げるのが面倒だったという男性(78)は、日の丸が燃やされるニュースを見て腹を立てたこともあるという。それでも、「国旗を物として見る人もいれば、国の象徴としてみる人もいる。損壊罪を作ったら、『どれだけ国旗を大事にしているか』という、愛国心の踏み絵にならんか」と話した。

 2人とも、戦争の影を親の背中に見た世代。「あるべき気持ち」を定められる窮屈さへの忌避感が、通底していると感じた。

2日間歩いて見えた、「自由」の形

 日の丸とは何か。

 高市首相はかつてブログで、国旗について「日本の威信・尊厳を象徴する」と書いた(現在は非公開)。

 一方で、故郷のなつかしい風景やスポーツの高揚感を思い起こす人もいれば、同じ旗の下で行われた自由の抑圧、侵略や虐殺を見る人もいる。

 国旗や、国への思いは自分で決める――。話を聞いた町民たちには、そんな気持ちが共通していたように思う。

 2日間、町を歩いた。まばらにあがった日の丸は、中能登の人々の気取らない「自由」を象徴していたように感じられた。

記者略歴

 ひらかわ・じん 2020年入社。石川県は初任地で、2年過ごした。自民党が強い地盤。「保守王国」とも呼ばれるが、国旗に対する考え方は予想したよりも多様で、驚かされた。国旗や「愛国心」が持ちうる意味を考え続けたい。

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