注目の超小型グロースにカタリスト、「イケる!」の直感をAIで検証

すご腕投資家さんに聞く 『銘柄選び』の技 surf777さんの場合-1回完結
登場する銘柄
インフォメテ<281A>、ゼンムテック<338A>

取材・文/真弓重孝、高山英聖、イラスト/福島由恵

・「今さら聞くのが恥ずかしい」会計用語を調べるのに重宝している・面倒な企業価値分析を、シナリオ別に提示してくれるのが助かる・海外の未上場企業など、情報に乏しい企業のリサーチに使っている

・誰でも入手可能な定量情報の分析には、あえて使わないようにしている

人々の生活に、急速に浸透する生成AI(人工知能)。運用のプロ現場でも、今やその活用は日常的となり、その流れは、個人投資家にも広がりつつある。

『株探』編集部が毎春実施している「株探-個人投資家大調査」(2025年)の回答では、全体の16%が生成AIを利用している。これを、2倍以上に運用資産を増やした実績を持つ「強い投資家」に絞ってみると、利用率は30%近くに引き上がる(参考記事)。

では強い投資家は、どのように活用して成果を上げているのか。その実態を探るため、6人の投資家に取材した。彼らに加え、直近に紹介した趙さん(ハンドルネーム)を含めた合計7人の使い方のポイントを下の図にまとめている。

■各投資家の特徴(今回登場のsurf777さんは左上)

彼らの投資スタイルは「グロース」「バリュー」「需給重視」と異なるが、いずれも自身の勝ちパターンの強化につなげている点では共通している。

その姿を紹介するトップバッターはsurf777さん(同、以下surfさん)。本コラムでの登場は2度目で、前回の「『給料だけでは無理』と始めた株で、稼いだ生活費は1億円超え」は、超人気!のマークが付くほどだった。

読者から大きな関心を集めたsurfさんは、どのように生成AIを使っているのか。そしてなぜ、使うのか。これから見ていこう。

イラスト:福島由恵
■surf777さん(ハンドルネーム・50代・男性)のプロフィール:兼業投資家。2004年に投資を開始し、約20年間で500万円の元本から累積で1億円以上のリターンを生み出した。現在の株式運用額は4400万円になる。初心者時代は小型株を対象にした“雰囲気売買”で失敗も多かったが、生活費を稼ぐため2015年に本腰を入れて投資に向き合う。この頃から適時開示情報をこまめに見て、「どの材料が出たら株価が伸びるか」を研究するようになる。次第に短期モメンタム投資のスタイルが確立する。
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この記事を読んで分かること 1. モメンタムの見極めに活用する生成AIサービス 2. AIに指示を出す際のコツ 3. AIの回答精度をじっくりと高めていく方法
このカタリスト(株価上昇のきっかけ)が株価を押し上げるのは1日限りか、3日続くのか――。 surfさんは今日出た材料の中で「これはイケる!」と判断すれば、その日の夜間PTS(私設取引システム)から参戦して短期で値上がり益を狙うスタイルだ。 その勝負を分けるのは、株価モメンタム(騰勢)の読みになる。投資歴が20年を超えるsurfさんは、経験を基に自身の法則を作り上げ、1億円を超えるトータルリターンを生み出してきた。 だが、本人はこの現状に満足しているわけではない。自身が築いた法則は「結局は、勘と経験から導いたものに過ぎない」と感じているからだ。 その弱点を補うために導入したのが生成AIサービス(以下、AI)。自身の法則に一層合理性を与え、しかも迅速に行うことを目的に、日々AIと向き合っている。 日中は本業に忙しい兼業投資家のsurfさんは、仕事が一段落した夕方に『株探』『株探プレミアム』を利用して材料を確認。退勤後の夜間トレードに臨む。 タイトなスケジュールの中で、効率よく、そして効果的な判断材料をAIから引き出すためにどのような工夫をしているのか。

ソニー発ベンチャー、インフォメティスで200万円のリターン獲得

直近の成功例が、エネルギーに関するデータをAIで解析するインフォメティス<281A>でのトレードだ。同社は2009年にソニー(現ソニーグループ<6758>)内で生まれた事業構想が起点の企業で、13年4月に設立、24年12月に東証グロース市場にIPO(新規株式公開)している。

そのインフォメティスを、surfさんは今年(2025年)の6月27日から7月1日までの3営業日にかけて売買し、合計200万円のリターンを獲得した(下のチャート)。 夜間取引に加え、日中の市場でも取引した。

■インフォメティスの日足チャート(2025年6~7月)

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同

「基盤技術が正式な国際標準規格に」との材料に注目 注目のきっかけは、インフォメティスが6月27日の引け後に開示したリリースだ。家庭内や施設内の消費電力の内訳を家電別にリアルタイムに推定する同社の「機器分離推定技術(NILM)」が、IEC(国際電気標準会議)の国際標準規格として正式に認められたとする内容だ。 このセンサーでは、使用中の家電によって形状が変わる「電力波形」データが得られる。この波形をAIで解析し、どの家電がどの程度電力を使っているのかを推定するのが同社の基幹技術になる。波形の解析では、インフォメティスが10年以上にわたって学習したアルゴリズムを基にしており、精度を高めているとする。 同社はこのNILMを活用した電力消費の可視化サービスを手掛け、住宅メーカーや電力小売会社などを通じて建物にセンサーを設置している。 居住者や施設利用者は各種アプリで電力の使用状況を把握し、電気代の節約や効率化につなげられる。収益源は、機器販売代金や初期設定料、継続的な利用料で構成されている。 同社は単一セグメントである「エナジー・インフォマティクス事業」を展開し、可視化は中核サービスの1つになる。それ以外にも、太陽光発電や蓄電池の放充電を自動で最適化するサービスなどを提供している。

動意づくだろうが、そのモメンタムの程度を知りたい

このニュースを見て、surfさんは直感的に「株価に与えるインパクトは大きい」と判断した。理由は、同社が時価総額50億円に満たない超小型株だからだ(当時)。 「売上高が10億円に満たない同社の技術が国際規格として認められれば、業績の拡大を期待した投資家が買いに走る」との期待感が膨らんだ。 ポイントは、株価上昇に動いたとして、その“賞味期限”はどの程度になるか。どのような材料ならば株価が動意づくのかは経験則から導けても、モメンタムの強弱まで見通すのは未だに難しいと感じている。 そこでAIに検証を依頼したところ、強いモメンタムを期待できるとの判断材料が提示された。surfさんは、それらの材料を信頼に足ると判断した。 「生成AIは、もっともらしい嘘を平気でつく」。こうした弱点が指摘される中で、surfさんが今回「AIは嘘をついていない」との判断に至ったのは、2つのポイントを意識して使用しているためだ。 ※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

 

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