二転三転のトランプ関税に「72時間ルール」、投資家が防御に知恵絞る

二転三転するトランプ米大統領の関税政策に振り回された経験から、クレジットトレーダーの間で独自の対策に乗り出す動きが出ている。

  トランプ氏が方針を転換するかどうか見極めるため3日待ってから取引を行う、あるいは大統領が起きてソーシャルメディア投稿を始める前に取引を完了させるといった具合だ。

  ブルームバーグが取材した十数名の業界関係者はいずれも、トランプ氏の発言を真に受けて損失を被った経験から、防衛的な行動に追い込まれていると明かした。多くは匿名を条件に取材に応じた。

  事情に詳しい関係者によると、トランプ氏が欧州産ワインに200%の関税を課すと投稿した際、複数の投資銀行が影響を受け得る企業を対象に市場価格を下回る価格で店頭取引を開始し、先手を打とうとした。これには包装資材メーカーのアルダフ・グループや容器メーカーのベラリア、イタリアのラベルメーカーであるフェドリゴーニの債券が含まれていた。

  ところが数日後には、これらの債券価格は完全に回復。関税が正式に発表された際、ワインに関する言及は一切なかったことが判明したためだ。カナダ産鉄鋼に50%の関税を課すとの脅しも、すぐに撤回された。

トランプ氏のソーシャルメディア投稿に投資家は振り回されている

72時間ルール

   こうした中、一部の銀行や投資家は「72時間ルール」を採用し始めているという。これはトランプ氏の発言後、72時間経っても方針が変わらなければ、その政策が実際に実行される可能性があると見なすという考え方だ。

  インサイト・インベストメントのポートフォリオマネジャー、キャサリン・ブラガンザ氏は「すぐには動かないようにしている。常に朝令暮改のリスクがあるからだ。われわれもこうした事態に一定の免疫がついてきていると思う」と話す。その上で、4月初旬に数年ぶりの大幅な下げを記録した欧州のジャンク債市場がほぼ完全に下げを埋めた点に言及した。

起きる前に先手

  米国外のタイムゾーンにいることは、トランプ氏による場当たり的な対応を乗り切る一つの手段となり得る。欧州では債券売却の手続きを前倒しし、トランプ氏が目を覚まして投稿を始める前に取引の詳細を確定、実行しようとする動きが出ている。これは地合いを悪化させかねない米国市場の乱高下に先手を打つための方策でもある。

  「誰もが常時ニュースが飛び込んで来るリスクを強く意識している。とりわけ米国の営業時間はその頻度が高まる」。こう語るのはモルガン・スタンレーの欧州・中東・アフリカ(EMEA)投資適格債シンジケート共同責任者、マッテオ・ベネデット氏だ。「ニューヨーク市場が始まる前に取引を終えるのが間違いなく賢明だ」という。

  高格付け企業ですら、この状況を免れない。フランスの高級ブランドグループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは、19億ユーロ(約3100億円)規模の2本立て債券発行に関する最終条件を、現地時間午後1時前に決定した。米国市場が開く前に条件を確定するためだ。通常であれば、こうした優良企業がこれほどの切迫性を持って動く必要はない。

原題:‘72-Hour Rule’: Credit Traders React to Trump’s Policy Deluge(抜粋)

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