26年4月以降の日銀国債減額、市場から加速・維持・減速と幅広い意見
日本銀行が6月の金融政策決定会合で議論する2026年4月以降の国債買い入れ方針について、市場関係者から現在の毎四半期4000億円の減額ペースの加速、維持、減速を求める幅広い意見が寄せられた。
日銀が20日、債券市場参加者会合に向けて事前に行ったヒアリングの結果を公表した。それによると、減額は停止すべきだ、段階的な減額を終了して一度に大幅な減額を行うべきだといった意見も示された。同会合は21日まで2日間行われる。
20日は証券会社や銀行などのグループの実務担当者との会合を本店で開き、意見を聴取した。日銀からは金融市場局長や市場調節課長らが出席。内容は公表されていないが、複数の参加者によると、大手銀行勢の中でも意見が分かれていたという。
事前ヒアリングでは、26年4月以降の計画の終了時点における買い入れ額についても、ゼロ、1兆-2兆円程度、3兆円程度とさまざまな意見が出た。新計画の期間は、現行と同様に2年程度とすることが望ましいとの意見や、1年以内に望ましい水準まで減額し、その後は同水準を維持する方針を示すべきだとの声も聞かれた。
約576兆円の国債を保有する日銀は現在、毎四半期に4000億円程度ずつ国債買い入れを減らし、月間の購入額を昨年7月末の5.7兆円程度から来年1-3月に2.9兆円程度まで圧縮する計画を進めている。来年4月以降の方針については6月会合で行う減額計画の中間評価で議論する予定で、特に減額ペースが現在の計画から変化するかを市場は注視している。
みずほリサーチ&テクノロジーズの井上淳上席主任エコノミストは、多様な意見があることから「日銀ができることとすれば、なるべく市場に影響を与えないよう安定した運営をすることが一番重要」だと指摘。システマティックに一定のペースを維持して減額をする方が適切との見解を示した。
現行計画に関しても、買い入れ減額のペースを早める、現行計画通り進める、減額をより緩やかなペースに変更する、一度に大幅な減額を行うといったさまざまな意見が出た。
超長期ゾーン
金利が急騰している超長期ゾーンに関しては、流動性の低下が著しいため、減額の停止や買い入れ金額の増額、10年超の区分の統合といった柔軟な対応を検討すべきだとの意見が出た。一方で、超長期ゾーンの需給悪化は、発行に比べて投資家需要が少ないという構造的な要因によるものであり、日銀が根本的に対応できる余地は小さいとの意見も寄せられた。
20日の債券市場では、20年国債入札の低調な結果を受けて超長期債が大幅下落した。新発40年国債利回りは3.6%、30年国債利回りも3.14%とそれぞれ過去最高水準を更新した。新発10年債利回りは一時1.525%と3月下旬以来の高水準を付けた。
伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、「超長期もそうだが、全体的に長期金利に上昇圧力がかからないようにするというのが大事」との見方を示した。26年4月以降については「今の段階では何も動けないということだと思う。減額の加速はまずないと思う」と述べた。
国債市場の機能度に関しては、国債の買い入れ減額により国債市場の機能度は改善傾向にあるとの見方が示された。また、利上げ見通しや経済ファンダメンタルズ対比では金利上昇が抑制され、投資家の国債需要が十分に喚起されず、機能度の改善は道半ばとの意見も聞かれた。
日銀が16日に公表した債券市場サーベイの5月調査では、現状の機能度判断DI(高い-低い)がマイナス44と、前回2月調査のマイナス13から悪化した。悪化幅は2015年の調査開始以降で最大。金融市場局によると、米関税政策を受けて日本の債券市場でも変動率が高まり、超長期ゾーンを中心に流動性が大きく低下したことが要因として指摘されているという。
日銀は21日に機関投資家などの実務担当者からも意見を聞く。昨年7月の決定会合で決めた現行計画の策定に際しても同様の会合を開いており、出席者からどのような意見が表明されるか注目が集まっている。