トランプ大統領、FRBで多数派獲得狙う-クック理事に辞任圧力
トランプ米大統領が要求する米連邦準備制度理事会(FRB)クック理事の辞任は、実現すれば、理事7人のうち過半数がトランプ氏寄りとなり、中銀への影響力を一段と強める機会が生まれることになる。
パウエルFRB議長率いる金融当局は、金融政策の決定から大規模な建物改修に伴うコスト超過まで、ホワイトハウスから絶え間ない批判を浴びてきた。
米連邦住宅金融局(FHFA)のパルト局長が、クック氏はより有利な融資条件を得るために銀行書類や不動産記録を偽造し、刑法上の住宅ローン詐欺に該当する可能性があると主張。これを受け、トランプ氏はクック氏に辞任を求めた。その後、クック氏は「辞任を強要されるつもりはない」と反論した。
FRBでエコノミストを務め、現在はニュー・センチュリー・アドバイザーズのチーフエコノミスト、クラウディア・サーム氏は「これは政権がFRBに対する支配を強化しようとする新たな試みだ」と述べ、「その支配を得るために、あらゆる手段を駆使している」と続けた。
クック理事への強い批判は、政権がFRBに対する影響力を拡大するために、いかなる手段も辞さない構えであることを鮮明にしている。金融政策決定は政治的圧力から遮断されるのが通例だった。ホワイトハウスはこれまでも、カリフォルニア州選出のアダム・シフ上院議員やニューヨーク州のジェームズ司法長官といった政敵に対し、同様の戦術を用いてきた。
今回の動きは21日夕に開幕するカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム「ジャクソンホール会合」にも影を落としている。パウエル氏は22日午前に議長として最後の基調講演を行う予定だが、トランプ氏が望む早期利下げを確約する可能性は低いとみられる。
FRB当局者は今年これまでのところ、トランプ氏からの利下げ要求を退けてきた。同氏の関税がもたらすインフレリスクを金利据え置きの理由に挙げている。
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クック氏が退任した場合、FRB理事7席のうち4席をトランプ氏の指名者が占めることになる。トランプ氏は1期目にすでに2人の現職理事を任命。3人目はバイデン前大統領が任命したクーグラー氏の早期退任で空席となったポストに、大統領経済諮問委員会(CEA)委員長のスティーブン・ミラン氏を指名する意向を表明している。
こうした戦略は、トランプ氏が他の連邦政府機関の理事会でも共和党の人材を送り込んできた手法と一致する。
もっとも、FRB理事会で過半数を握ったとしても、大統領が金利政策を思い通りに動かせるという保証はない。トランプ氏指名の理事らも連邦公開市場委員会(FOMC)の幅広い支持を得る必要がある。さらに言えば、任命された理事全員が大統領の要求に従う保証もない。
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原題:Trump Aims to Win Majority on Fed Board With Cook Ouster Attempt
(抜粋)