【特集】メモリ価格高騰の今、買うべきは32GBか64GBか?「16GBはもうキツイ」かも調べてみた

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 2025年11月からメモリの価格が急上昇している。特に大容量メモリの値上がりが大きい。これから自作PCを組み立てたり、メモリの増設を考えている人は、メモリの容量をどれくらい確保すればいいのか、悩ましいところだろう。

 そこで今回は16GB、32GB、64GBの容量でオフィスワーク、クリエイティブワーク、AI処理、ゲームプレイおよびゲーム配信を実行して、どこまで性能差があるのか確かめてみた。さらに、複数のアプリを開いてメモリを大量に消費している状態を作り、その場合での性能差も測定した。メモリ使用量が多い状態になるとどのような処理に影響が大きいのかも確かめていく。

 まずは、テスト環境を紹介しておこう。CPUは8コア16スレッドの「Ryzen 7 9800X3D」、マザーボードはX870Eチップセットを搭載するASUSの「ROG CROSSHAIR X870E HERO」、ビデオカードはGeForce RTX 5060を搭載するMSIの「GeForce RTX 5060 8G VENTUS 2X OC」だ。2025年秋の時点で人気の構成と言ってよいだろう。そのほかスペックは以下にまとめた。

CPU: Ryzen 7 9800X3D(8コア16スレッド) マザーボード: ROG CROSSHAIR X870E HERO(AMD X870E) システムSSD: Micron Crucial T700 CT2000T700SSD3JP(PCI Express 5.0 x4、2TB) CPUクーラー: Corsair NAUTILUS 360 RS(簡易水冷、36cmクラス) 電源: Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1(1,000W、80PLUS Gold)

OS: Windows 11 Pro(24H2)

 メモリについては、CFD販売のW5U4800CS-8G(DDR5-4800 8GB×2)、MicronのCrucial DDR5 Pro CP2K16G60C36U5B(DDR5-6000 16GB×2)を2セット用意した。これらを組み合わせて16GB、32GB、64GB環境を作る。また、メモリ速度による影響を減らすためにUEFIで4800MHz動作に統一してテストを実行した。

16GB環境はCFD販売のW5U4800CS-8Gを2枚搭載
32GB環境はMicronのCrucial DDR5 Pro CP2K16G60C36U5Bを2枚装着
64GB環境はMicronのCrucial DDR5 Pro CP2K16G60C36U5Bを4枚装着

 メモリ容量別にベンチマークを実行していくが、1つはベンチマークだけを実行したもの( グラフの「通常」 )、もう1つはWebブラウザのEdgeで25個のタブを開き、ZoomでWeb会議をしながら、Premiere ProとPhotoshopを起動した状態でベンチマークを実行したもの( グラフの「メモリ消費」 )になる。

 複数アプリを実行した状態でタスクマネージャーのメモリを見ると使用中は20.2GB、コミット済みは30.6GBに達する(64GB搭載環境)。意図的にメモリが使われた状態を作っているが、複数のサイトやアプリを同時に開くことは珍しくないので、性能に与える影響の参考になるはずだ。

アイドル状態だとメモリの使用中は9.5GB、コミット済みは13GBだ。これを通常時としてテストする
複数アプリを起動し、メモリを消費した状態だと使用中は20.2GB、コミット済みは30.6GBまでアップする。この状態をメモリ消費時としてテストする

 まずはオフィスワークから試そう。実際にMicrosoft OfficeやEdgeを動作させてスコア化するPCMark 10 ApplicationsとProcyon Office Productivityを実行する。

Procyon Office Productivity

 どちらのベンチマークもOffice系なので似たような傾向にはあるが、注目すべきはPCMark 10 Applicationsの通常時のExcelだろう。16GBだとスコアが32GBや64GBに比べるとガクッと落ちる(約14%)。16GBの詳細データを見るとコピー系の処理が軒並み遅い。メモリを消費した状態だと16GB/32GB/64GBのどれもコピー系の処理が遅くなっているのが分かる。Excelの処理を快適に行なうには32GB以上のメモリを搭載し、なるべくほかのアプリを同時に起動しないほうがよいだろう。

 ほとんどの処理は64GBのスコアがトップに立つが、例外的なのがWordだ。PCMark 10 Applicationsの通常時、Procyon Office Productivityのメモリ消費時は32GBがトップになる。4枚挿しによる64GB環境が悪いのか、Procyon Office Productivityの詳細を見るとメモリ消費時は文書比較の処理が32GBより64GBのほうがかなり遅くなっている。複数回テストしても同じ傾向だったので、そういうこともある……ということだろう。

 続いて実際にPhotoshopとLightroom Classicを動作させてさまざまな画像処理を実行するProcyon Photo Editingを見てみよう。

 Photoshopで処理を行なうImage Retouchingではメモリの影響が顕著だ。メモリ消費してない状態では16GBだとスコアがガクッと下がる。詳細を見ると画像を結合する処理に64GBに比べると2倍以上かかっている。そしてメモリ消費時だと32GBでもスコアがガクッと下がってしまう。複数のアプリを使いながらPhotoshopでも画像処理を行ないたいなら、64GB以上あったほうが安心だ。その一方でLightroom Classicを使うBatch Processingでは64GBのスコアが一番よいが大きな差にはならなかった。

 次はPremiere Proで動画編集を行なうProcyon Video Editingを試す。

 Procyon Video Editingについては、ビデオカードによる動画のエンコードがメインになるためメモリの影響はあまりない。メモリ消費時はわずかにスコアが低下するだけだ。処理内容によっては影響が出ないこともある、というケースと言えよう。

 次は複数のLLM(大規模言語モデル)を実行して、その生成速度からスコアを出すProcyon AI Text Generation Benchmarkをやってみよう。主にGPUを使用する処理ではあるが、どこまでメモリ容量が影響するのか注目したい。

Procyon AI Text Generation Benchmark

 今回の中で一番パラメータ数が多く、負荷の高いLLAMA 3.1だと通常時でもメモリ容量の影響があり、64GBがもっとも高スコアだった。メモリ消費状態だと容量の差による影響は大きいようで、すべてのモデルで64GBが高いスコアとなっている。複数アプリを使うなら64GBが強いと言ってよいだろう。

 ではゲーミングだとどうだろうか。ここではApex Legendsを用意し、射撃訓練場の一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで計測している。また、ここではメモリ消費の方法を少し変更し、WebブラウザのEdgeで25個のタブを開き、OBS StudioでYouTubeにH.264/10Mbpsで配信しながらプレイした場合を測定した。配信しながらプレイすることを想定したテストだ。

Apex Legends(フルHD、最高画質)とCapFrameXだけの動作ではメモリの使用中は12.9GB、コミット済みは21.8GBとなった
Webブラウザで25個のタブを開き、OBS StudioでYouTubeに配信するという処理を加えると使用中は14.1GB、コミット済みは27.8GBになった

 通常時はわずかに64GBのフレームレートが高いがその差はわずかだ。メモリを消費すると平均フレームレートはそれほど落ちていないが、最小(1%)は100fps以上も下がる。メモリが少ない状態だとフレームレートがガクッと落ちる瞬間が増えるということだろう。その中でも64GBが平均、最小(1%)とも一番優秀なフレームレートになった。

 今回のテストを見ると、16GBでは処理によってはスコアが低くなっているのが分かる。ほとんどのシーンでは32GBあればPCの性能を十分に発揮できると言ってよいだろう。ただし、複数アプリを起動してメモリを消費した状態では、Photoshopの画像処理やパラメータの多いLLMモデルでは64GBよりもスコアを大きく落とすこともあった。

 現在では仕事でもプライベートでも多くのWebサイトを開きながら、コミュニケーションツールやOffice系のアプリを同時に起動することは珍しくないはず。32GBあればとりあえずは十分と言えるが、できるだけ処理性能を安定させたい、少しでも性能を伸ばしたいなら64GB以上の搭載をおすすめしたい。

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