自衛官による大使館侵入事件は中国への最高の“プレゼント”に…「新型軍国主義に突き進む日本」変化する対日ナラティブ、高市首相がすべきこと(Wedge(ウェッジ))
「現役自衛官を自称する不法侵入者が、中国駐日大使館の壁を乗り越えて敷地内に強制侵入してきた。自らの行為が違法であると認めた上で、「神の名において」中国の外交官を殺害すると脅迫した」 【写真】ポケモンとSnow Manも「新型軍国主義」に 2026年3月24日、自衛隊3等陸尉の村田晃大容疑者(23歳)が中国大使館に侵入する事件が起きた。原稿執筆段階で事件の詳細については明らかになっていないことが多い。日本当局が情報公開に消極的なためだが、対称的なのが中国だ。 冒頭の一節は事件当日の中国外交部報道官定例記者会見のもの。事件の第一報、そして政府の見解や抗議の発表も中国が先んじた。日本で起きた事件にもかかわらず、国際社会が認知する初動発表を中国側のストーリーに誘導されたことは否めない。 中国側はなぜこれほど迅速に発表したのか。重要な背景となったのは、この一件は中国にとって歓迎すべきギフトであったという点だ。 なぜそう言えるのか。それを理解するには、中国が今年に入ってから組織的に構築してきた対日ナラティブを押さえる必要がある。
中国の対日批判には、一定の「型」がある。靖国参拝や歴史教科書問題によって引き起こされた日中対立の局面において、批判の矛先はあくまで「一部の右翼勢力」に限定されていた。日本の主流社会や日本国民は中国と立場を共にしており、敵は右翼のみという構図である。 この主張を強調するために、かなり小規模な日本政府への抗議デモであっても、中国で報じられることが多い。カメラの画角を工夫し、人数の少なさを悟らせない絵作りなど達人の域である。 ところが今年に入り、この「型」は大きく書き換えられた。26年1月9日、人民日報は「新型軍国主義将把日本再次引向深渊(新型軍国主義は日本を再び深淵へと引きずり込む)」と題した論評を掲載した。 二次世界大戦敗戦前の日本は、皇国史観などの教育と、虚構の勝利を告げる大本営発表を駆使することによって、日本国内に現実とはかけ離れた虚構の情報空間を作り出し、国民を欺いていたと振り返る。その上で、現代の日本で類似の動きが進行していると断じる。 「国家正常化」を旗印に防衛政策の転換を推し進め、歴史教科書を改竄し、若い世代を洗脳しつつある。日本国民全体が右翼勢力に騙されて誤った道へと進む「新型軍国主義」に日本が陥りつつあると指摘する。 すなわち、中国にとっての敵はすでに「一部の右翼勢力」にとどまるものではない。「右翼勢力に洗脳された人々、新型軍国主義に突き進む日本」へと拡大しているのだ。 この論評記事の執筆者は「鐘声」。「鐘」の中国語読みはジョン(Zhong)で「中」と似た発音だ。すなわち、この「鐘声」とは「中国の声」をもじってつけたペンネームで、中国の外交姿勢を伝える最高レベルのメッセージとして理解されている。中国外交においてきわめて強い“政治シグナル”とされる。