米関税、現状は影響限定 需要減など先行きに懸念=日銀支店長会議
[東京 10日 ロイター] - 日銀が10日に開いた支店長会議は、米国の関税政策の影響は現時点で限定的との報告が多かった一方、先行きについては米国で値上げをしたり世界経済が減速した場合の需要減を懸念する声が相次ぎ報告された。25%の関税が上乗せされている自動車は、産業が集積する地域によって影響の判断が分かれた。
会議後に記者会見した正木一博・大阪支店長(理事)は、米関税を巡る不確実性が大きいとみている経営者が多いのではないかと述べた。対米交渉の結果次第でさまざまな経路を通じて企業収益の減少や経済の下押し圧力になる可能性があるとした。
<生産・輸出、「増加基調」と名古屋支店長>
関税の影響が直接的に出てくる輸出・生産に関し、自動車産業が集積する東海地方に位置する名古屋支店の上口洋司支店長は、足元は「増加基調」と述べた。自動車を中心に日本や北米などで需要が旺盛で受注残も高水準だと説明した。不確実性は極めて高いものの「現時点で、ただちに輸出が大きく減っていくことが見込まれている状況ではない」と語った。
一方で、佐久田健司・福岡支店長は、自動車の輸出が「5月入り後、はっきりと減少している」と述べた。その上で、九州からの輸出動向は本社の経営判断で決まってくるとした。
設備投資については、不確実性の高まりを背景に先送りや見直しを検討したり、実際に計画を変更する動きが見られると報告があった。もっとも、IT関連需要の拡大期待に基づく能力増強投資、人手不足対応や生産性向上のための省力化・デジタル化投資など、積極的な投資スタンスが維持されているとの報告もあった。上口名古屋支店長は「しっかりと将来を見据えた投資が行われている」と述べた。
賃金については、各国の通商政策の影響で企業収益が下振れた場合には今年度の冬季賞与を減額する可能性を指摘する企業の声が報告された。来年度の賃上げ動向に懸念の声がある一方、人手不足感が強い企業を中心に継続的な賃上げが必要との声も報告された。
正木大阪支店長は「人手不足が構造的で、不可逆的との認識は広がっている」と指摘。不確実性が大きいものの「賃上げの動きは継続していく蓋然性が高い」と述べた。
<インバウンド需要、「相当持続性ある」>
日銀が同日発表した地域経済報告(さくらリポート)は、全国9地域すべての景気判断を据え置いた。日銀担当者によると、地域経済報告に掲載された企業の声には7日にトランプ米大統領が発表した対日25%関税の影響は反映されていないという。
同リポートには、大阪・関西万博の開幕やインバウンド需要に伴う消費押し上げ効果を指摘する近畿地方の企業の声が複数掲載された。正木大阪支店長は、インバウンド需要は「相当持続性がある」と語った。
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