長年にわたって妻に薬を飲ませレイプ、動画をネットで共有 ドイツの61歳男に有罪評決
(CNN) ドイツの裁判所は19日、薬を飲ませ意識を失った妻を長年にわたってレイプし、犯行の動画をインターネット上で共有していたとして、61歳の男に有罪を言い渡した。フランスのドミニク・ペリコ被告の裁判と比較する声が上がっている。
有罪を言い渡されたのは学校用務員のフェルナンド・P被告。自宅で妻に虐待を加えてその様子を撮影し、妻の知らないうちにインターネット上で共有していたとされる。
被告はドイツ西部アーヘンの裁判所での公判を経て、19日に禁錮8年半を言い渡された。裁判所によると、上訴可能な期間は1週間以内。
裁判所は被告について、「34件の盗撮を通じて、私生活の最も親密な領域と個人の権利を侵害した。うち4件では、加重レイプと身体への危険な傷害を伴っていた」と指摘。被告は加重性的強要と性的暴行でも有罪を認定された。
裁判所は声明で「被告は自宅で繰り返しひそかに妻に鎮静剤を投与し、性的虐待を加えていた」「そうした行為を撮影し、グループチャットやインターネット上のプラットフォームで他のユーザーが入手できるようにしていた」と説明している。
被告が罪を問われた期間は15年近くに上り、裁判所は2018年~24年の犯行について有罪を認定した。
他の一部の罪状については無罪とされたが、詳細は公表されていない。
今回の評決の1年前には、フランス人のペリコ被告が10年近くチャットルームで見知らぬ数十人を募り、当時の妻ジゼルさんをレイプさせたとして、加重レイプで有罪を言い渡された。この事件では他の49人の男も全員、レイプや性的暴行で有罪を言い渡された。
ペリコ事件は世界に衝撃を与え、フランスの性別に基づく暴力や女性蔑視を巡り文化的な再考を促すきっかけとなった。
「非常に重要な事件」
被害者支援団体「ヌーア・ヤー・ハイスト・ヤー(イエスだけがイエスを意味する)」によると、アーヘンの事件はこの種の事案として初めてドイツの裁判所で審理された。「ヌーア・ヤー・ハイスト・ヤー」の団体名は、レイプの法的定義を変えるという使命を強調するもの。
ドイツでは昨年、ハンブルクを拠点に調査報道を行うジャーナリストが、薬を飲ませた妻をレイプする様子とされる動画を14年間アダルトサイトで共有していた男の証拠を突き止めた。だが、男は訴追されることなく、2024年に死亡した。
「ヌーア・ヤー・ハイスト・ヤー」の活動家、ジル・Sさんは19日の評決前にCNNの取材に応じ、アーヘンの事件は「非常に重要」「私たちの法制度のどこに欠陥があるかを示す事件だ」と語った。CNNはジルさんから、ネット上での嫌がらせを避けるため姓を伏せるよう依頼を受けた。
ドイツでは従来、性的同意は「ノーはノー」という原則で定義されてきた。これについて活動家は、特にアーヘンの事件のように薬を投与された被害者の場合、性的行為について明示的な同意を示す能力を奪うものだと指摘する。
「ヌーア・ヤー・ハイスト・ヤー」はレイプの定義を変更して、「イエスはイエス」の基準を盛り込むようドイツ政府に要請。現行法では、被害者はいまだレイプなどの性的暴行に言葉で抵抗する重荷を背負わされていると主張している。