米バイオ企業が「太古のオオカミを復活」その功罪は?
これまで本欄で米バイオ企業による絶滅鳥ドードーやケナガマンモスの復活計画を紹介してきた。
そのバイオ企業「コロッサル・バイオサイエンシズ」が今度は絶滅した「ダイアウルフ」を現代によみがえらせたと発表した。1万2500年ほど前に滅びた「白いオオカミ」だ。
ただ、この動物は本当にダイアウルフといっていいのか。
さらには、ダイアウルフのような絶滅種をこんな形で復活させていいのか。
さまざまな議論が飛び交っている。
いったい、どういうことなのだろうか。
「絶滅動物の脱絶滅」
コロッサル・バイオは2021年に米ハーバード大教授の遺伝学者ジョージ・チャーチさんらが設立したスタートアップ企業で、米テキサス州ダラスに本拠地がある。
掲げているのは「絶滅動物のDE-EXTINCTION(脱絶滅)」。絶滅動物をそのまま復活させるのではなく、現代の近縁動物を利用して絶滅動物の特徴を備えた生物を生み出すという戦略だ。
マンモスならゾウを、ドードーならハトの仲間を使う、といったぐあいだ。
今回、「脱絶滅」させたダイアウルフは更新世の25万年前から1万2900年前ごろに北米に生息していた肉食動物だ。
現在のオオカミに似ているが、進化の過程にはよくわかっていない部分があった。
コロッサル・バイオの研究チームは、博物館に保管されている1万3000年前のダイアウルフの歯と、7万2000年前のダイアウルフの骨からDNAを取り出して分析した。
その結果、ハイイロオオカミと99.5%のDNAが共通で、現在の生物の中ではハイイロオオカミが最も近縁であることがわかった。
チームはダイアウルフに特徴的な遺伝子を特定し、ここから彼らが白くて厚い毛皮を持っていたことも突き止めたという。
さらに、ゲノム編集技術のクリスパーを使ってハイイロオオカミの細胞の14遺伝子の20カ所をダイアウルフの特徴を持つように改変した。
この細胞を犬の卵子に核移植して…