「妻とは別れる」で30年間“婚姻を先延ばし”→関係が破たん 「一生を踏みにじった」と“10億円請求”する女性…裁判所の判断は?

離婚に伴う慰謝料は内縁関係でも認められますが、それが「不倫関係」であった場合、法的な保護は受けられるのでしょうか。

「私の一生を踏みにじった」

30年にわたり事実上の夫婦として暮らしながら、入籍が叶わぬまま絶縁を突きつけられた女性のケース。本記事では、こうした重婚的内縁関係の破綻において、裁判所がどのように判断したのか紹介します。

※この記事は、飯野たから氏・神木正裕氏著、梅田幸子氏監修の書籍『男の離婚読本(第6版)』(自由国民社)より一部抜粋・構成。

「一生を踏みにじった」と慰謝料10億円を請求

離婚の慰謝料は、離婚原因を作った側か、またはその責任の重い側から支払われます。

これは内縁関係の男女間でも同様ですが、その男女が不倫関係にある場合には、公序良俗違反などにより関係そのものを無効とする考え方もあり、慰謝料請求できるかどうか争いのあるところです。

なお、内縁や同棲など結婚していない婚姻外男女関係事件の調停・審判でも、慰謝料・財産分与の取決めがなされる場合がありますが、その金額は一般的に、正式に結婚している夫婦の離婚と比較すると低めです。

ここでは、妻との離婚をエサに30年にもわたって重婚的内縁関係を続けた女性から起こされた慰謝料請求事件を紹介してみましょう。

X女は23歳の時、25歳年上の会社社長Y男と性的関係を持った。

当時、Y男には妻子がいたが、彼女は彼の「妻とは近く離婚する。結婚してくれ」という言葉を信じ、Y男の費用で建てた自宅で同棲生活を始め、その後1子を出生して認知も受けた。

しかし、同居から23年経って妻と離婚した後も、Y男はX女と入籍せず、しかも30年目を過ぎる頃から月々支払ってきた生活費も払わなくなり、事実上の絶縁状態になったため、X女がY男を相手取り慰謝料10億円を請求したという事件です。

裁判所が慰謝料1000万円を認める

原告X女は、被告Y男は結婚をエサに自分の一生を踏みにじったと主張し、婚約不履行または内縁の不当破棄を理由に慰謝料を支払えと請求しました。

なお、請求額は、被告の資産を500億円と推定し、そこから算定したものです。

一方、被告は結婚の約束もなく、内縁関係にもなかったと反論しました。

裁判所は、まず原告と被告との関係が重婚的内縁関係に当たると認定し、本件のように妻との関係が形骸化している場合には、重婚的内縁関係にも相応の法的保護を与えるのが妥当としたのです。

そして、2人の内縁関係が30年にも及んでいること、また関係破綻の責任は被告側にあることなどから、Y男に慰謝料1000万円の支払いを命じました(東京地裁・平成3年7月18日判決)。

なお、X女の請求額の基礎となったY男の資産額については、裁判所は明確ではないとして、請求の基礎にできないとしています。

  • この記事は、書籍発刊時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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