JALモバイルに「ahamo」参入の衝撃 ドコモのホワイトレーベル戦略で“第2のahamoショック”が起こる?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
日本航空とドコモは、6月25日に「JALモバイル powered by ahamo」のサービスを開始する。日本航空は、IIJmioをホワイトレーベル的に活用し、JALモバイルを展開しているが、そこにドコモのahamoが加わる形だ。ユーザーは、選択肢が豊富なIIJmio回線かシンプルで海外でのデータローミングも無料なドコモ回線のahamoを選択できるようになる。
これまでも、MVNOが経済圏を持つ企業に対し、ホワイトレーベルとして回線を提供する事例はあったが、自社でネットワークを持つMNOのドコモが同様の形態で回線を提供するのは異例といっていい。ドコモ自身も、dポイントを軸にした経済圏を拡大しているからだ。JALモバイルやドコモにとって重要な一手になるのはもちろん、業界全体に与えるインパクトも大きい。その詳細を解説する。
JALモバイルは、2025年に誕生したサービス。IIJmioの回線をそのまま使い、システムだけを連携させるホワイトレーベルの仕組みを活用し、人気を博している。IIJmioの契約獲得にも効果を発揮しており、IIJの決算説明会などではたびたび好調だと語られてきた。こうした背景もあり、JALモバイル powered by ahamoが驚きをもって受け止められた。
サービスの建てつけは、JALモバイル powered by IIJmioとほぼ同じ。ホワイトレーベル的にドコモが回線を提供し、日本航空側と連携することで、毎月のマイルや上級会員になるために必要なLife Statusポイントが入手できる(LSPは新規、MNPのみ)。また、JALモバイルの特徴だった“マイルの使いやすさ”も踏襲されており、1年に1回、「どこかにマイル」が通常よりも5500マイル少ない1500マイルで利用可能になる。
JALモバイル powered by ahamoで毎月たまるマイルは、一律125マイル。1年間回線を使い、マイルをためていけば、1回どこかにマイルに交換できる仕組みだ。システム的にはahamoのオプションとして提供されるため、契約時に2200円の料金はかかるが、それ以外の料金はahamoと同じ。「大盛りオプション」や「ポイ活オプション」といったオプションも、そのまま利用できる。
日本航空のマイレージ・ライフスタイル事業本部長を務める執行役員の西田真吾氏が「契約しないともったいないプランであると申し上げたい」と語ったのは、そのためだ。日本航空は、コロナ禍などで航空需要が急減したことを契機に、非航空事業に注力している。マイルを軸にしながらユーザーをつなぎ止めつつ、収益の多様化を図る生き残り策だ。JALモバイルも、その一環としてスタートしている。
では、なぜ好調だったJALモバイルにahamoを新たに追加するのか。西田氏は、ユーザーから「海外でも使いたいというお声を多数ちょうだいしていた」と話す。実際、筆者もJALモバイルの担当者にインタビューした際に、「海外ローミングを提供しないのか」との質問をぶつけていた。国際線も手掛ける日本航空のユーザーと海外ローミングは、非常に相性がいいことは間違いない。
ただ、加入者管理機能を持たないライトMVNOだと、国際ローミングを提供するのは難しい。JALモバイルでは、IIJの海外eSIMを活用する形で「JALモバイル 海外eSIM」を6月から提供しているが、ahamoであれば、普段使っている回線そのままでローミングが可能。しかも追加料金もかからない。小容量プランを選べるIIJmio回線とは、料金面での差別化もできる。
また、西田氏によると、「MNOのサービスを使いたい」という声もあったという。通信品質面で、接続点のボトルネックがないMNOの回線を選びたいニーズもあったことがうかがえる。こうした事情で、ahamoに白羽の矢が立った。
日本航空とドコモは、これまで、回線以外でも協業をしてきた。2014年には、dポイント(当時はドコモポイント)とJALマイルの相互連携を開始。2020年には、住信SBIネット銀行と共同で「JAL NEOBANK」のサービスを導入している。住信SBIネット銀行はその後ドコモ傘下に入り、8月にはドコモSMTBネット銀行に社名を変更する予定だ。こうした縁もあり、ドコモとの提携に至った。
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MNO最大手であるドコモが、ホワイトレーベルとして回線を提供するインパクトは大きい。影響を受けそうなのが、こうした事業に活路を見いだしていたMVNOだ。最近では、先に挙げたIIJmioのJALモバイル以外にも、MVNE専業のミークがホワイトレーベルに特化したミークモバイルを立ち上げたり、オプテージのmineoがMVNO支援サービスの「MVNO Operation Kit」を提供したりと、異業種を取り込む動きが活発化していた。
特にJALモバイルで個人向け回線も復調していたIIJにとって、JALモバイル powered by ahamoは第2の“ahamoショック”になってしまうかもしれない。ahamoショックとは、ドコモが2021年にahamoを低料金で導入したことで、MVNOの伸びが止まった状況を指す。各社とも、ahamoに対抗すべく値下げを余儀なくされた他、主戦場がahamoと差別化しやすい小容量プランに固定化されてしまった。
ギガプランの導入やそれを活用したJALモバイルの導入で反転攻勢をかけていたIIJに、再びahamoの波が押し寄せようとしているのは皮肉な話だ。西田氏は、「IIJmio版のプランをにわかにいじることは考えていない」というものの、ahamoとデータ容量のかぶりが大きい25GB以上のプランは、獲得が減ってしまう恐れはある。小容量プランだけにユーザーが集まれば、収益性は悪化する。
また、現在、JALモバイル powered by IIJmioで中・大容量プランを選んでいるユーザーが、同じJALモバイルのahamoに乗り換える可能性もある。サブ回線として契約していたJALモバイル powered by IIJmioをahamoに一本化してしまう動きも出てくるかもしれない。IIJはもちろん、ホワイトレーベルに活路を見いだしていた他のMVNOにも、間接的な影響はありそうだ。
一方で、ドコモがどこまでホワイトレーベルとして回線を提供するかが見通せない部分もある。日本航空の場合、JAL NEOBANKやdポイントなどで既に連携していた実績があり、経済圏での重なりもあるため導入のゴーサインは出しやすかったはずだ。ただ、ネットワークサービス以外を全て自前やドコモ以外のサービスで完結している企業に、回線だけを提供できるかは未知数といえる。
坪谷氏も、「経済圏(の拡大)そのもの自体にブレーキをかけるわけではない」としており、ドコモとして、dポイントを軸にした経済圏は依然として重要視していることを示唆した。座組によっては、提供が難しいこともありそうだ。この点では、大きな経済圏を持たないMVNOの方が身軽に動ける。MVNOとして、いかにキャリアと差別化していくかも生き残りの鍵になりそうだ。
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