AI研究者が生成AIで「ググる」新機能「AIモード」を試したら「検索ビジネスの終わりの始まり」が見えた(BUSINESS INSIDER JAPAN)

Google検索に「AIモード」が本格始動した。8月21日、日本を含む180の国と地域に展開するとグーグルが発表し、すでに一部英語地域では有効になっている。これはChatGPTのように、「検索エンジンと会話して探す」という新しいモードになる。 【全画像をみる】生成AIで「ググる」新機能「AIモード」をAI研究者が試したら「検索ビジネスの終わりの始まり」が見えた 前回、「OpenAIの破壊的新戦略」の寄稿で指摘したとおり、今、巨大AI企業の戦いは次のフェーズに移り始めている。これはAI研究者でプログラマー経営者の筆者から見ても明らかだ。 AIモードでグーグルが何を試そうとしているのかは非常に興味深い。2000年代最大の発明だったGoogle検索とそのビジネスの「終わりの始まり」を、グーグル自身が予見しているように見えるからだ。なにせ、グーグルの親会社アルファベットの売り上げ3500億ドルの過半(56%、2024年実績)を占める検索ビジネスに、手を加えようというのだから。 AIモードは原稿執筆時点では日本語環境ではまだ未実装だが、VPN接続することでその体験を分析することができる。触ってみると、グーグルが直面する「危機感」が見えてきた。 清水亮 / Ryo Shimizu[ギリア株式会社ファウンダー・顧問] ギリア株式会社ファウンダー・顧問。株式会社ゼルペム所属スペシャリスト。1976年長岡生まれ。米大手IT企業で上級エンジニア経験を経て1998年に黎明期の株式会社ドワンゴに参画。2003年に独立して以降19年間に渡り、5社のIT企業の創立と経営に関わる。2018年〜2023年まで、東京大学 客員研究員として人工知能を研究。主な著書に『よくわかる人工知能』など

グーグルには、わざわざ「AIモード」など作らなくても、Geminiという立派なLLM(大規模言語モデル)がある。実際問題、「AIモード」で動いているのはGeminiだ。 Geminiの画面は、とてもChatGPTによく似ている。 反対に、AIモードは、検索エンジンの側に「ボタン」として、一見目立たない形で追加されただけだ。 「AI Mode」というボタンをクリックすると、やはりChatGPTと似た画面にジャンプする。 このモードがこれまでの検索体験とどう違うか。もしくは、GeminiやChatGPTとどう違うか。簡単に言えば、「AIが生成する内容に、広告が混じるようになった」ということだ。 これがユーザー体験を損なわないように、細心の注意を払っている、というのがおそらくグーグルの言い分だろう。 試しに、テキサス州オースティンで人気のBBQレストランを検索すると、広告も合わせて表示される。 「AI Mode」は、通常のGeminiのインターフェイスよりも、広告のサムネイルが入る分、幾分リッチに見える。こっちの方が楽しそう、好ましいと思うユーザーも少なくないだろう。 しかし、AIの出力結果に広告が入ってくることを諸手を挙げて喜んでいいものか、一抹の不安を感じるのは事実だ。 AIの出力結果そのものにグーグルが広告主かそうでないかで「手心」を加えることは、当面はないだろう。しかしそれは、「そもそもGoogle検索にはもともと一切の広告が入っていなかった」という昔話も想起させる。 世界中がGoogle検索に依存し、いわば検索中毒になりきった状態の2002年、グーグルは検索キーワード連動広告を導入した。 当初、グーグルの広告は、検索結果の邪魔にならないよう、検索結果の動線とは無関係に、ウィンドウの右端に表示されていた。ところが今は検索結果そのものであるかのように、堂々と先頭に表示されるようになった。 あえて言葉を選ばずに言えば、近年特に「ひどい」のは、AI関係のニセのサービスの広告が堂々と表示されることだ。 例えば、人気の動画生成サービスの「Pika」を検索してみよう。すると、Pikaではない他の動画生成サービスの広告があたかもPikaそのもののように表示され、本物のPikaに辿り着くためには、広告を三つも飛ばして四つ目まで辿り着かなければならない。 既にGoogle検索の体験は、ほとんど末期的と言ってもいい。AIサービスの検索などまだ良い方で、健康食品や保険商品や不動産といった「高価格でアフィリエイト収入が見込める商材」では、どれがフェイクでどれが本当に価値ある情報なのか、素人が見分けるのは不可能なほど荒らされている。 筆者はAI関連の本当に新しいニュースを探すときは、基本的にエックス(x.com)かDiscordで探すようになった。 グーグルのAI StudioやOpenAIのChatGPTに「最新のAIニュースを教えて」と言っても、古いニュースしか出てこない。「Deep Research」を使ったとしても、本当の最新情報には辿り着かない。 特にAI業界の最新情報というのは、各種学会の論文の下書きが集められたサイト「arxiv」や、世界のAIが最初にデプロイ(展開)される「HuggingFace」のようなコミュニティにしかない。その上、それらは毎日大量に投稿される。玉石混交の情報から宝物を探すには、自然と、x.comやDiscordのような場所で、人の噂話を調べるしかなくなるのだ。

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