カナダの岩石、新たな年代分析で約41億6,000万年前と推測 世界最古の可能性も

この画像を大きなサイズで見るカナダ最北端のハドソン湾岸にある岩石 / Image credit:Jonathan O’Neil

 カナダ北部、ハドソン湾東岸の岩石が、新たな同位体分析により約41億6,000万年前に形成された可能性が高いと示された。

 もし本当なら、地球誕生(約46億年前)から約40億年前までの「冥王代」という地質時代の貴重な記録となる。

 冥王代(ハーディアン)は地球で最も古い地質時代で、ギリシャ神話の冥界の神ハーデスに由来する。

この研究は『 Science』誌(2025年6月26日付)に掲載された。

 カナダ北部のハドソン湾東岸に広がるヌブアギトゥク緑色岩帯(Nuvvuagittuq Greenstone Belt)は、地球最古の地質構造帯のひとつと考えられてきた。

 今回、オタワ大学、カールトン大学、フランス国立持続可能開発研究所の研究チームは、この地域の岩石に含まれる貫入岩(周囲の岩石に入り込んだマグマが固まった岩石)の同位体比を詳しく調べた。

 同位体とは、同じ元素でありながら中性子の数が異なる原子のことで、放射性同位体は時間とともに別の元素へと崩壊する性質を持つ。

 その結果、貫入岩の年代は約41億6,000万年前と推定された。

 貫入岩は周囲の岩石よりも後に形成されるものなので、その貫入岩が約41億6,000万年前のものであることは、ヌブアギトゥク緑色岩帯を構成する元の岩石がさらに古い可能性を示している。

 地球の地殻はプレート運動、火山活動、浸食によって絶えず壊されては作り直されており、最初に形成された地殻はほとんど残っていない。

 その中でこれほど古い岩石帯が存在することは極めて貴重だ。

この画像を大きなサイズで見るベヌブアギトゥク緑色岩帯 Image credit: Jonathan O’Neil

 どの国も「世界一古い記録」を自国で持ちたいと願うものだが、ヌブアギトゥク緑色岩帯の真の年齢は単なる国の世界最古記録の歴史にとどまらない。

 冥王代とその次の太古代(原太古代)の境界は約40億3,000万年前と公式に定められており、その基準となったのもカナダの基盤岩「アカスタ片麻岩帯(Acasta Gneiss Complex)」だ。

 冥王代はその後のどの地質時代とも大きく異なると考えられ、高温のマグマの海が広がり、安定した地殻の形成が難しかった時代で、当時の岩石の記録はほとんど残っていない。

 特に他に有力な候補がほとんどない中で、ヌブアギトゥク緑色岩帯がその条件を満たしているのか、多くの研究者が関心を寄せている。

この画像を大きなサイズで見るヌブアギトゥク緑色岩帯の縞状鉄鉱石の一部。現在はモントリオールのレッドパス博物館に所蔵されている。 / Image credit:Daderot via Wikimedia Commons (CC0 1.0)

 これまでヌブアギトゥク緑色岩帯の年代推定は、岩石に含まれるネオジム142(Nd-142)とネオジム144(Nd-144)の同位体比に基づくものだった。

 これは岩石が非常に古い可能性を示唆するものだったが、間接的な証拠であり、別のマントル物質の影響などで年代が古く見えている可能性も残されていた。

 今回の研究では、新たにこの岩石帯に貫入した火成岩(貫入岩)の同位体組成を測定することで、約41億6,000万年前という具体的な年代が直接的に示された。

 貫入岩は周囲の岩石より新しいため、周囲の元の岩石はこれより古いと考えられ、ヌブアギトゥク緑色岩帯のハーディアン代起源を強く裏付ける結果となった。

 もちろん、研究チームは別の説明の可能性も考慮している。例えばマントルの異なる部分が混ざらずに局所的に作用したという非常にまれな条件が必要になると述べている。

References: Science / New Claim For World's Oldest Rocks Dates Back A Whopping 4.16 Billion Years

本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。

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