物議のピアストリ接触「僕が悪いと言うなら、F1にいるべきじゃない」とノリス、マクラーレン連覇の裏で高まる緊張 / F1シンガポールGP《決勝》2025
2025年F1第18戦シンガポールGPで、チームメイトのオスカー・ピアストリと接触した件について、ランド・ノリス(マクラーレン)は自身に一切、非はないと強調した。チーム内での摩擦は避けたいところだが、「もし僕が悪いと言うなら、その人はF1にいるべきじゃない」と言い切り、一歩も譲らない姿勢を示した。
ピアストリの怒りを買ったスタート直後の接触
問題となったのはレースのオープニングラップ、ターン3でのシーンだ。好スタートを切ったノリスは、前を走るマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とピアストリとの間に割って入ろうとイン側に飛び込んだ。
だが、フェルスタッペンのリアと接触したノリスは姿勢を乱し、コース外側へと膨らんでピアストリに接触。幸い両車ともレースを続行したが、ピアストリは無線で不満をあらわにした。
担当レースエンジニアのトム・スタラードから「ランドはフェルスタッペンを避けなきゃならなかったんだ」と説明されても、ピアストリは「他のクルマとの接触を避けるためにチームメイトにぶつかるなんて、避け方としてはクソみたいな仕事だ」と納得しなかった。
「フェアじゃないよ。悪いけどあれはフェアじゃない」
レース後、ノリスは接触の原因を路面コンディションに求めた。
「スタートは良かった。グリッド右側のグリップが良く、ターン1から2にかけて良いポジションを確保できた。そこからオスカーのインサイドへ仕掛けたんだ。まだ濡れている箇所があってかなり滑りやすく、マックスのリアに軽く接触してしまった。それで少し修正が必要になったんだ」
また、自身を批判することは不適当だと反論した。
「まだオンボード映像すら見直してないから確認する必要があるけど、グリッド上の誰もが僕と全く同じ行動を取ったはずだ。もしイン側にドカドカと空いているスペースに行った僕に落ち度があるというなら、その人はF1にいるべきじゃないと思う」
「確かにマックスとの距離を少し見誤ったけど、レースはそういうものだ。それ以外には何も起きていないし、僕はイン側を取ったわけで、いずれにしたってオスカーの前に出ていたはずだ。だって彼は外側のダーティサイドを走ることになっただろうからね」
「今後に向けてどうすべきか考えてみるけど、FIAは問題ないと判断したし、チームもそうだった。それで終わりだ」
さらに、「チームメイトとの接触は一番避けたいことだ。特に、そういうことになると君ら(報道陣)から質問攻めにあうだけだからね」と付け加えた。
両者の間の緊張は、今に始まったことではない。2戦前のイタリアGPでは、ノリスのピットストップが遅れ、ピアストリの後ろに下がった際、チームから順位を入れ替えるよう指示が出た。ピアストリは明らかに不満そうだったが、最終的には従った。
その時、チーム代表のアンドレア・ステラは「それこそがマクラーレンの価値観と理念を体現している」と語っていた。だが今回のシンガポールでは、その理想が再び試されることになった。
連覇達成の裏で高まるチーム内緊張
マクラーレンはこのレースでコンストラクターズ選手権連覇を確定させた。チームとしての目標を達成した今、残る焦点はドライバーズタイトルのみだ。
首位ピアストリにノリスが22ポイント差で迫る微妙な状況下で起きた今回の接触が、一過性の出来事では終わるかどうかは不透明だ。今後のレースでもその火種がくすぶり続け、タイトル争いの行方を揺るがす可能性もある。
マクラーレンの“オレンジ・デュオ”の関係が、次戦以降どのように変化していくのか注目されるが、チームは今後も「自由にレースさせる」方針を維持する考えだ。
ステラは「“レースをさせる”という理念を守りたい。彼らは素晴らしい個性を持つドライバーであり、チームの成功に大きく貢献している。シーズン最後までこの関係を保てるよう努力する」と語った。
2025年F1第18戦シンガポールGP決勝レースは、ジョージ・ラッセル(メルセデス)がポール・トゥ・ウインを飾り、2位にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3位にランド・ノリス(マクラーレン)が続く結果となった。
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を舞台とする次戦アメリカGPは10月17日のフリー走行1で幕を開ける。