【米国市況】S&P500種、最高値圏に上昇-円は買われ一時143円台

26日の米株式相場は上昇。S&P500種株価指数は午後の市場で、終値ベースでの最高値を一時上回る場面があった。連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを再開し、米企業の業績見通しを後押しするとの期待が広がった。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6141.02 48.86 0.80% ダウ工業株30種平均 43386.84 404.41 0.94% ナスダック総合指数 20167.91 194.36 0.97%

  S&P500種は一時1%近く値上がりし、2月19日に付けた終値ベースの最高値6144.15を一時上回った。大型ハイテク銘柄が上げをけん引した。銀行株も高い。ウェルズ・ファーゴのアナリスト、マイク・メイヨー氏は「リセッション(景気後退)が起こらない限り、銀行株の勝負はこれからだ」と指摘した。

  米株式市場の「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)は16に低下。関税を巡って市場が混乱した4月には一時52を超えていた。

  グラナイト・ベイ・ウェルス・マネジメントのポール・スタンリー氏は「さまざまな不確実性が薄れ始める中、株式相場は最高値に戻っている」と指摘。「貿易問題で進展が続くとの期待や中東情勢の緊張緩和が投資家に安心感を与えている」と述べた。

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  1-3月(第1四半期)の米実質国内総生産(GDP)確報値は前期比年率0.5%減少。個人消費が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期以来の弱い伸びとなった。米国の失業保険継続受給者数は2021年11月以来の高水準に増加した。一方、新規失業保険申請件数は減少した。

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  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏は「景気は減速しつつも、依然として底堅い」と指摘。「全体の経済指標は強気派と弱気派いずれの決定打にもなっていないが、市場はハイテク株の強さとS&P500種が最高値に戻る可能性に注目しているようだ」と話した。

  グラナイトのスタンリー氏は、株価が最高値に近づいているのは非常に心強いが、相場をここからさらに押し上げる次の材料については多くの疑問が残るという。「7月中旬に決算発表シーズンが始まり、企業が関税を巡る不透明感が高い4-5月にどう対処したかを物語る、より具体的な指標となる」と指摘。「今最も大きなリスクは乗り遅れることではない。短期的なニュースに過剰反応することだ。それは投資判断の誤りにつながりかねない」と述べた。

国債

  米国債相場は上昇。一連の米経済指標が全体として、年内最多3回の利下げ観測を補強する内容となった。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.80% -2.9 -0.60% 米10年債利回り 4.24% -4.7 -1.10% 米2年債利回り 3.72% -6.1 -1.62%     米東部時間 16時55分

  利回りは全年限で低下し、米金融政策見通しに敏感な短期債利回りが長期債利回りよりも大きく下げた。広く注目されている5年債と30年債の利回り差は101ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余りに広がり、2021年以来の大きさとなった。イールドカーブのスティープ化は総じて、米利下げ期待と関連している。

  この日実施された7年債入札の需要は旺盛だった。

  BMOキャピタル・マーケッツの米金利戦略責任者、イアン・リンジェン氏は「全体的にデータは強弱まちまちだったため、短期ゾーンの緩やかな相場上昇は続くとみている」と指摘。「最大のサプライズは個人消費だった」と述べた。

  トレーダーらは9月の利下げ再開を引き続き見込んでおり、年内2回の利下げが完全に織り込まれている。3回目の0.25ポイント利下げは確率半々との予想だ。次回7月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合を前に、3日に発表される6月の雇用統計が重要な判断材料になりそうだ。

  パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の後任がトランプ大統領の利下げ要求に応じるとの見方から、市場はパウエル氏の任期が満了する2026年半ば以降の急速かつ大幅な利下げを織り込んでいる。この一週間、FRBのウォラー理事とボウマン副議長が相次いで、早ければ次回の会合で利下げを支持する可能性を示唆した。

  ブルーベイ・フィックスト・インカムのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は「ウォラー、ボウマン両氏が早期利下げを推進していることから、短期債が上昇し、利回りカーブのスティープ化が進んでいる」と指摘。「トランプ氏が次期FRB議長を早期に指名すると報じられたことも、FRBへの政治的圧力を強め、利下げを促す可能性がある。これもスティープ化の一因だ」と話した。

外為

  外国為替市場ではブルームバーグ・ドル指数が低下。米GDPで個人消費が弱い数字となり、年内の利下げ路線が改めて意識された。

  円は対ドルで上昇し、ニューヨーク時間早朝には一時1%高の143円75銭を付ける場面もあった。ユーロは対ドルで1ユーロ=1.17ドルを上回った。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1194.07 -5.59 -0.47% ドル/円 ¥144.42 -¥0.82 -0.56% ユーロ/ドル $1.1697 $0.0038 0.33%     米東部時間 16時55分

  トランプ大統領が次期FRB議長の早期指名を検討しているとの報道も、ドル売りの要因になった。

  ジゼラ・ヤング氏らシティグループのエコノミストは「失業保険継続受給者数のさらなる増加は、失業率の上昇を示唆する。来週発表される6月の雇用統計では4.4%を見込んでいる」とリポートに記した。

  27日には5月の米個人消費支出(PCE)価格指数が公表される。FRBが重視する食品とエネルギーを除くコアPCE価格指数は前月比0.1%上昇の予想。実際にそうなれば3カ月連続で同率の伸びとなり、3カ月ベースでは5年前のパンデミック以降で最もインフレが抑制された局面となる。

  サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、ブルームバーグTVとのインタビューで「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整を開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」と語った。

  リッチモンド連銀のバーキン総裁はニューヨーク・ビジネス経済協会(NYABE)主催のイベントで関税が物価に上向きの圧力をかけると予想。不確実性がなお非常に大きいことから、FOMCは政策金利を調整する前に見通しが一段と明確になるのを待つべきだとした。

  ボストン連銀のコリンズ総裁も、今年は少なくとも一度は利下げがあると見込みつつ、7月はまだ利下げには早過ぎるとの見方を示した。

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原油

  ニューヨーク原油相場は小幅高。米軍によるイラン核施設への攻撃が同国の核開発計画にどの程度の打撃を与えたのか、また米国が今後もイランの石油輸出を標的にし続けるのかについて情報が交錯し、市場は反応に苦慮している。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は一時2.3%上昇する場面があった。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、米軍による攻撃後もイランの高濃縮ウラン備蓄は大半が無傷で残っているとの欧州の見方を伝えた。一方でトランプ大統領はソーシャルメディアへの投稿で、攻撃前にイランが核物質を移動させたとの報道を否定した。

  そうした中、イランでは国際原子力機関(IAEA)との協力を停止する法律が発効した。

  午後に入ると原油はこの日の高値を離れた。米国がイランとの協議再開に向けたインセンティブの提供を検討しており、その一環として制裁緩和の可能性もあるとのCNNの報道に反応した。

  ホワイトハウスのレビット報道官の発言も相場の重しとなった。レビット氏は記者団に対し、戦略石油備蓄(SPR)を早期に補充する計画はないと述べた。また米国とイランの間で核協議を行う予定もないとした上で、米国はイランの核開発能力を破壊したと改めて説明した。

  シティグループのアナリスト、フランチェスコ・マルトチャ氏は「市場は地政学的リスクが大幅に後退したと判断しているようだが、今後の展開は依然不安定となり得る」と分析した。「OPECプラスが8月の産油量を7月上旬の会合で決定するため、原油の需給ファンダメンタルズを巡る弱気な環境が再び注目されるかもしれない」と続けた。OPECプラスは石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は前日比32セント(0.5%)高の1バレル=65.24ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限はほぼ変わらずの67.73ドル。

  金スポット相場はほぼ変わらず。ニューヨーク時間午後4時1分現在、37セント(0.01%)安の1オンス=3331.96ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は4.90ドル(0.15%)高の3348ドルちょうどで引けた。

原題:S&P 500 Briefly Tops Its February Closing Record: Markets Wrap(抜粋)

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