「世界最大の天然鏡」ウユニ塩湖。ほんとかどうか衛星使って調べてみた
「鏡っぽい」でもええやん…って、甘い?
地球上で一番大きな鏡って、どこにあるか知っていますか?
ボリビアにあるウユニ塩湖は、「世界最大の天然鏡」と言われています。
地球で一番大きな塩湖で、人気観光スポットでもあるウユニ湖ですが、とある科学チームが「本当に世界最大の鏡なの?」と、その真偽を本気で検証したのです。そして結論からいうと、その答えは「ある意味、最大」という微妙なものでした。
ウユニ湖という名前は知らなくても、その画像を見たことある方は多いでしょう。ボリビアにあるこちらの巨大な塩湖には、毎年たくさんの観光客が訪れます。雨の季節になると薄い水膜に覆われ、鏡のようになった様子をカメラに収める人の姿が数多く見られます。
ウユニ塩湖は、まるで塩でできた砂漠のよう。そして世界最大の天然鏡でもあるともいわれています。百聞は一見に如かず、その光景を画像や動画でご覧ください。
表面が水に濡れると驚くほどきれいに反射し、たしかに大きな鏡のようです。
Image: Salar du Uyuni official websiteただ、これを「とはいえ、本当に世界最大の天然鏡なの?」と科学的に証明しようとした者は誰もいませんでした。彼らが現れるまでは…。
本当に巨大な鏡なのか?
9月19日付の学術誌『 Communications Earth & Environment 』に掲載された最新の研究で、研究者チームが欧州宇宙機関(ESA)のセンチネル3号衛星データを活用し、ウユニ塩湖の鏡面反射の実証的証拠を探りました。ちなみに衛星データが使われたのは、雨季になると広大な塩湖内部に立ち入ることが難しくなるためです。
今回使用された1対の地球観測衛星には、それぞれレーダー高度計が搭載されています。これはレーダーパルスを地球に向けて照射し、信号が跳ね返ってくるまでの時間を測定する装置。返ってくる信号が強いほど、その下にある地表は平坦で反射率が高いことを意味します。
イタリア国立研究評議会生物物理学研究所のステファノ・ヴィグヌデッリ氏が率いる研究チームは、2016年から2024年に観測された39万件以上のレーダー測定データを分析。
さらに2024年には雨季のピーク時にあたる2月に、衛星観測結果を検証するため、光学機器を用いて水面の滑らかさを調べるための現地調査を実施しました。また、水面に反射する太陽光の画像をドローンで撮影し、その平滑性を視覚的にも確認しました。
結論は…「微妙」。
研究チームの研究結果によると、肉眼では均一な鏡のように見えるウユニ塩湖も、レーダー波長でみると均一な鏡ではないことがわかりました。つまり可視光線の波長においても、均一な鏡ではない可能性が高くなり、水面の反射率は空間的にも時間的に変化しています。
研究チームによると、最も鏡面に近い状態になるのは、大雨が降った後、水が蒸発する前の時期。大雨の時期と鏡面効果の相関関係は、鏡面現象が地域的な気候パターンに直接起因していることを示唆しています。ちなみに鏡面現象を観測するのに最適なトップシーズンは、11月下旬から3月上旬とのこと。
この現象は特定の条件が揃った場合にのみ発生し、ウユニ塩湖全体が同時にその影響を受けることは難しく、常に「世界最大の天然鏡」でいられるとは言い難いのが現実です。とはいえ、その驚異的な美しさに変わりはありません。
この研究で最も興味深い発見の1つは、風が鏡面効果を乱さないこと。おそらく水深が浅すぎて波紋が形成されないのが、その理由だと考えられます。今後の研究ではこうした点を調査し、自然の驚異が生まれる独自の特性について、さらに深い知見を得られることが期待されます。