ケネディ氏が苦しんだ腰痛 原因はADHD? 暗殺にも影響=黒田阿紗子

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毎日新聞 2025/7/20 06:00(最終更新 7/20 06:00) 有料記事 1937文字
演説するケネディ大統領=1962年5月、UPI

 今も米国のカリスマであるジョン・F・ケネディ元大統領は、若々しく、健康的なイメージを自ら演出していたことで知られる。実際には、幼少期から数多くの病気を抱えていた。

 重度のアレルギー疾患、腹痛や便通異常が繰り返される過敏性腸症候群、副腎の機能不全――。特に苦しめられていたのが、慢性的な腰痛だった。鎮痛剤は効かず、外科手術をしても良くならなかったという。

 この腰痛のせいで、ケネディ氏の暗殺が完遂されたという指摘もある。

 事件が起きたのは1963年11月、米テキサス州ダラスでのこと。選挙遊説に向かうため、オープンカーに乗ってパレードをしていたケネディ氏に銃弾が放たれ、そのうち2発が命中した。

 1発目は首を貫通したものの、致命傷ではなかった。普通なら、ここで倒れ込むだろう。だが、腰痛のため体幹をコルセットで固定していた。姿勢は直立に維持され、2発目が頭部を直撃し、死に至らしめたというのだ。

 この話を教えてくれたのは、東京大病院の精神科医で、痛みの治療を専門とする笠原諭さん(49)。「暗殺当日、銃撃の危険を承知しながらオープンカーに屋根を付けることを拒むなど、衝動的な行動が目立つ人だったと言われます」

 笠原さんは10年ほど前、体のどこかに慢性的な強い痛みを訴える患者の多くに、不注意や落ち着きのなさ、衝動的な行動が抑えられないといった注意欠陥多動性障害(ADHD)の症状があることに気付いた。2016、17年に診察した患者を調査すると、症状があった人は7割を超えた。

 痛みを脳内で伝えたり、制御したりする機能には、神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンが関与している。ADHDの症状は、これらの神経伝達の障害が一因とされるため、特に痛みを感じやすいと考えられた。

 「ケネディの腰痛も、ADHDが原因ではないか」

 そう考えた笠原さんは、2冊の伝記に着目した。

 1冊目は、01年に初公開されたケネディ氏の医療記録をひもとき、その生涯を病歴とともに再構築した「JFK 未完の人生」(邦題、ロバート・ダレク著)。もう1冊は、61年に邦訳が出版された「ジョン・ケネディ その生いたちと政治的横顔」(同、ジェームズ・M・バーンズ著)。こちらは本人の同意を得て関係者にインタビューを重ね、全ての私的な記録の利用を許可されて書かれたものだ。

 「学位論文について、教授から『誤字や語法の誤りが非常に多い』との評価」

 「しばしば本や衣服などを置き忘れて見つけられない」

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