「言い続けること大事」、日本の気候政策問う若手経営者-2050年意識
太陽光発電システムの提供を手がけるハチドリソーラーの代表取締役、池田将太氏(26)は、日本の気候政策を公然と批判する数少ない若手経営者の一人だ。政策に携わるあらゆるステークホルダーに対してより野心的な目標を求めるよう、人々に声を上げてほしいと呼びかけている。
日本政府は今年2月、2035年度までに温室効果ガス排出量を13年度比で60%削減する計画を閣議決定した。この削減目標を巡ってはアナリストや活動家らから必要な水準に達していないとの声が出ている。池田氏はこの計画などを議論するため開催された審議会の会合に参加し、外部の専門家20人のうちの一人として意見を求められた。
池田氏は少なくとも75%の排出削減を検討するよう要請。同時に、日本が排出国の上位であり続ける中で、この審議会会合が真の議論を妨げていると強く批判した。
池田氏は「間違ったことを間違ったと言わなくなったら終わり」とし、「こうした方がいいと思うことは言い続けることがすごく大切だ」と訴えた。
4月に発表された日本政府のデータによると、23年度の温室効果ガス排出量は製造業の減速とエネルギー消費の低下を背景に22年度から約4%減少し、過去最低を記録した。それでも気候アナリストらは、50年までに温室効果ガスの排出量を正味ゼロにする「ネットゼロ」達成にはこの削減ペースは遅すぎるとみている。
一部の有識者らは、日本が化石燃料の代替としての原子力発電の復活に過度に依存していると主張している。また、日本が他の先進国と同様に、排出量が多かった年(日本の場合は11年の福島第一原発事故を受けて各原発が停止していた13年)を基準に削減目標を設定していることも批判の的となっている。
非営利団体クライメート・アクション・トラッカー(CAT)によると、エネルギー・気候政策の策定における「透明性と公平性」を巡る懸念も、日本の計画に対する不安材料となっている。
同団体は新たな計画に対する暫定評価で、35年度までの削減目標は、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えることを目指すという世界的な目標と整合していないと指摘。ブルームバーグNEFも3月のリポートで、日本の削減計画はネットゼロ達成に不十分だとの見方を示した。
池田氏は昨秋の審議会会合で「より野心的な目標設定をすべき」との意見書を提出したが、その内容が「都合がよくなかったのか分からない」が、読み上げてもらえなかったとし、「忌憚(きたん)のない御意見というところの言葉もパフォーマンスではないか」と感じたという。
また、「普通におかしいよねってことをおかしいよねって言ったつもり」が、それに対する事務局の反応が「淡々」としていたことにも落胆したと語った。
これに対し、政府当局者は、池田氏の見解はその内容に合った議題の会議で示してもらいたかったと説明した。
審議会会合は環境省と経済産業省によって開催された。
日本政府は、自国の排出削減への道筋は野心的であり、「1.5度目標」と整合的だと主張している。経産省の説明によると、池田氏を含む外部の専門家らは、昨年12月の3回の会議で計10時間にわたって話し合った。今後の方針について十分に議論されたと委員らは認識しているという。
日本の排出削減への道筋は、長年にわたり科学・技術分野の有識者会議の影響を受けてきたが、このような審議会が実効性に欠け、社会全体を代表していないと批判する声もある。
自然エネルギー財団の研究員、後藤恵陸氏はこれらの会合はむしろ、政府当局者が提示した目標を微調整するだけの場になっているとの見方を示した。
独立系非営利組織クライメート・インテグレートの24年4月のリポートによると、日本のエネルギー政策に関して審議する15の会議体の参加者を調査した結果、50-70歳代が中心で、男性の割合が平均で75%を超え、多くが電力集約型産業と関係していたという。
池田氏は議論する中で、官僚らが代替案を十分に検討するのではなく、気候目標が不十分でも安易に支持する傾向にないかと懸念したと指摘。孫や子供世代が2050年を迎えた際、「どういう世界で生きているかという景色」を具体的に想像しているのか彼らに問いかけたいと語った。
環境省は、会議のメンバーは専門性や年齢層、性別におけるバランスに配慮したほか、計画策定の際には公衆の意見を含む諸要因を考慮し、可能な限り慎重な議論を重ねながらプロセスを進めたと考えるとコメントした。
東京大学未来ビジョン研究センターの教授で、前回の30年目標を議論した有識者会議に参加していた江守正多氏は、改革を促すためには、気候政策を策定するプロセスの課題について有権者が池田氏のように公然と批判すべきだと強調。「政治が動くためには『票に関わる』と思わせることが必要かもしれない」とした上で、今回起きたことは「さざ波程度の出来事ではないかと思うが、さまざまな機会をとらえて声を上げ続けることが必要」と語った。
原題:Japanese Climate Crusader Warns Nation to Cut Emissions Further(抜粋)