ダークエネルギーカメラが撮影した合体中の銀河団「エイベル3667」
こちらは、くじゃく座の方向・約7億光年以上先の銀河団「Abell(エイベル)3667」とその周辺を捉えた画像です。
画像の幅は満月の視直径の1.7倍ほど(視野は52.6×52.6分角)。一見すると無数の星々が輝いているように思えますが、ここに写っているのはほとんどが銀河なのです。
【▲ セロ・トロロ汎米天文台(チリ)のブランコ4m望遠鏡に設置された「ダークエネルギーカメラ(DECam)」で観測された銀河団「Abell 3667」(Credit: CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Acknowledgment: PI: Anthony Englert (Brown University); Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF NOIRLab))】この画像は、ブランコ4m望遠鏡に設置された観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam ※)」で取得した28時間分の観測データを使って作成されたもので、NSF NOIRLab=アメリカ国立科学財団の国立光学・赤外天文学研究所から2025年8月5日付で公開されています。
※…暗黒エネルギー(ダークエネルギー)の研究を主な目的として開発された観測装置で、画素数は約520メガピクセル、満月約14個分の広さ(3平方度)を1回の観測で捉えることができます。当初の目的である暗黒エネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されました。
NOIRLabによると、Abell 3667ではより小さな2つの銀河団が合体しつつあります。その証拠としてあげられているのが、画像の中央付近を左上から右下に伸びている黄色い構造です。
これは合体する過程ではぎ取られた星などでできていて、2つの銀河団の中心を“橋”のようにつないでいます。元の銀河からはぐれてしまった星々からのこうした淡い輝きは「銀河間光(intracluster light)」と呼ばれています。
“橋”のような構造の左上端には、合体しつつある2つの銀河団の片方で最も明るい銀河「IC 4965」が位置しています。また、右下端の周辺には、銀河団内を移動する時に受けるガスの圧力(ラム圧)によって物質がはぎ取られ、尾を引くような姿をしている「JO171」や「LEDA 397363」といった銀河も写っています。
【▲ セロ・トロロ汎米天文台(チリ)のブランコ4m望遠鏡に設置された「ダークエネルギーカメラ(DECam)」で観測された銀河団「Abell 3667」(中央)と、興味深い銀河の拡大画像。1: 銀河団ガスからの動圧(ラム圧)を受けて物質がはぎ取られている銀河「JO171」。2: 同様に物質がはぎ取られている銀河「LEDA 397363」。3: 合体中の銀河団の片方で最も明るい銀河「IC 4965」。4: 天の川銀河内の希薄な星間雲によって部分的に隠された銀河「NGC 6862」(Credit: CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Acknowledgment: PI: Anthony Englert (Brown University); Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF NOIRLab))】なお、2025年6月に画像が初公開されたベラ・ルービン天文台の「シモニー・サーベイ望遠鏡」は、10年間にわたって夜空の超広角・超高解像度のタイムラプスを取得する観測プロジェクト「Legacy Survey of Space and Time: LSST」にて、同様の長時間露光を南半球全体の夜空で実施する予定です。LSSTで得られた観測データは銀河団の研究にも役立つことが期待されます。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部