「今夜、逮捕します」26年経て動き出した時間 名古屋女性殺害事件

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高橋俊成 野口駿

 10月31日午後、愛知県警西署の一室。

 小さな机を挟み、高羽悟さん(69)は、県警捜査1課の男性警部と向き合っていた。

 この日、「重要な話がある。他の用事をなげうって来てほしい」と呼び出された。

 到着すると別の捜査員もいたが、すぐに退席し、2人きりになった。警部は切り出した。

 「26年間かかってしまい、申し訳ありませんでした」

 そして、続けた。

 「今夜、逮捕します」

 警部の目は潤んでいた。

高羽奈美子さん=1999年10月20日、悟さん提供撮影

 1999年11月13日、悟さんの妻、奈美子さん(当時32)が自宅アパートで殺害された。警部は未解決事件を扱う「特命捜査係」に所属し、昨年春から、奈美子さんの事件の捜査を担当してきた。

 「悟さんが知っている人です」

 「えっ」。だが、口をついて出た。「高校の同級生?」

 「当たりです」と警部。

 悟さんは、高校時代の運動部が一緒だった1人の女性を思い出した。「山口久美子?」

 「当たりです。何でわかったんですか」

 「山口」は、数時間後、殺人容疑で逮捕されることになる安福久美子容疑者(69)=名古屋市港区=の旧姓。

高校時代の安福久美子容疑者=関係者提供

 なぜ……。恨みを買うような、思い当たる節はない。でも、高校の同級生で思い浮かんだのは彼女だった。

 高校時代、バレンタインデーチョコレートをもらったり、好意を告げられたりしたことがあった。卒業後は県内の別々の大学に進学したが、大学に来たことも。喫茶店に連れていき、「受け入れられない」と伝えると、泣き出した。

 それから約20年の時をはさみ、99年6月にあった部活の同窓会で再会した。「結婚して子どももいて、家事も仕事もして大変」と明るく話しかけられた。

 奈美子さんが自宅で遺体で見つかったのは、その5カ月後。玄関には犯人のものとみられる血痕が残り、現場近くには不審な女の目撃情報もあったが、容疑者の特定には至らず、捜査は難航した。

雨で流れた血痕、繰り返したDNA型鑑定

 愛知県警の元捜査員は捜査が…

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