イランはなぜイスラエルとの戦闘で孤立状態だったのか-QuickTake

イランは長期にわたり、「抵抗の枢軸」と呼ばれる親イラン勢力を築き中東で影響力を拡大してきた。だが、イスラエルの攻撃や米国による主要核施設への空爆に直面する中、イランは孤立状態となった。イスラエルとの暫定的な停戦は24日に発効した。

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  イランが長年にわたり資金や武器を提供してきた同盟勢力は苦境に立たされている。シリアでは親イランのアサド政権が昨年12月に崩壊した。イスラエルとの2年近くにわたる戦いで、パレスチナのイスラム組織ハマスやレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラも弱体化している。イエメンの武装組織フーシ派は依然として抵抗を続けているが、米軍の空爆で戦力は損なわれている。

ヒズボラ

  ヒズボラは、今回のイランとイスラエルの衝突には加わらなかった。武装組織であり、かつ政治的影響力も併せ持つこのイスラム教シーア派組織は今後の対応を模索している。

  ヒズボラは1982年、イスラエルによるレバノン侵攻に対抗する形で結成された。2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃後、ヒズボラはイスラエルにロケット弾攻撃を仕掛けたが、イスラエルによる報復で指導部や戦力が弱まった。

  たとえヒズボラがイランを支援する上で戦力を保っていたとしても、動機の問題がある。イスラエルとの戦闘の中でイランがヒズボラを見捨てたように見えたことで不満を抱くメンバーもいる。

  ヒズボラの支持基盤には戦争疲れも広がっている。支配地域はイスラエルによるレバノン空爆の標的とされ、多くの住民が家や財産を失った。

  イランはヒズボラに戦略的判断を委ねる一方、密接に連携し影響力を保っている。ただ現在の微妙な関係を理解しており、イラン当局はヒズボラに戦闘への参加を求めることには慎重になっている可能性が高い。

フーシ派

  フーシ派もまた、今回のイスラエルとイランの衝突では傍観する姿勢を保ったが、必要に応じて関与する意思があるようにも見受けられた。

  フーシ派は首都サヌアを含むイエメンの約3分の1を支配下に置いている。ハマスによるイスラエル攻撃以降、フーシ派はパレスチナ支援の一環で、イスラエルをミサイルやドローン(無人機)で攻撃し、紅海を航行する船舶への妨害を展開した。イランから一定の支援を得ているが、直接的な指示は受けていない。

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  フーシ派は3月以降に激化した米軍による攻撃で打撃を受けている。依然として強力な戦力を保持しているものの、越境・精密攻撃を可能にしていたものなど一部兵器は破壊されている。

  フーシ派にもまた動機の問題がある。フーシ派は地域の不満を抱えて活動する組織で、イランの代理勢力というよりも独立した主体として見られることを目指している。

  パレスチナ自治区ガザの戦闘に積極的に関与していると自認し、支持も得ているが、必ずしもそれがイランへの支援に結び付くわけではない。

ハマス

  ハマスは依然としてイスラエルとの戦闘を継続する意志を持っているが、2年近い戦いを経て、イランの代理として脅威になり得るような攻撃を行える状態にはない。「抵抗の枢軸」の他のメンバーほどイランと緊密でもない。

  ヒズボラやフーシ派と同様、ハマスは米国からテロ組織に指定されている。イランから資金・軍事支援を受けているが、要請や自制の呼びかけに常に従うわけではない。両者の関係は、緊密なパートナーというよりも便宜上の結び付きに近い。

シリア

  1979年のイラン革命以降、アサド政権下のシリアはイランにとって最も関係が近い国だった。アサド政権崩壊はイラン当局にとっても意外だったが、イランは崩壊阻止に向けた措置を講じず、代わりに次期政権と少なくとも基礎的な関係を構築する可能性に期待した。

  だが、シリアのシャラア暫定大統領には他の優先事項があるように見受けられる。具体的には、米国やその同盟国との関係強化に加え、湾岸アラブ諸国に近づき、経済的利益の追求を通じて支持基盤を固めるとともに統治の困難を克服することだ。

  近隣国との問題のない政策を追求する中で、シャラア氏はイスラエルによるシリア攻撃に対してほとんど反応を示さなかった。イスラエルが対イラン作戦で自国の空域を使用することさえ容認した。

原題:Why Iran Faced Israel, US Alone as Friends Stood By: QuickTake(抜粋)

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