米CIA、クルド人部隊への武器供与進める イランでの民衆蜂起引き起こす狙いと情報筋

2日、ホワイトハウスで開催された名誉勲章授与式に出席するトランプ大統領/Alex Brandon/AP via CNN Newsource

ワシントン/イラク・アルビル(CNN) 米中央情報局(CIA)がクルド人部隊への武器供与を進めている。イラン国内で民衆蜂起を扇動する目的があるとみられる。計画に詳しい複数の関係者がCNNに明らかにした。

情報筋によれば、トランプ米政権はイランの反体制派組織やイラクのクルド人指導者らと軍事支援の提供について活発な協議を続けている。

イランのクルド人武装組織は、主にイラクのクルド人居住地域など、イラクとイランの国境沿いで数千人の兵力を展開している。戦争開始以来、いくつかの組織が公式声明を発表し、差し迫った行動を示唆。イラン軍の兵士らに対して離脱を呼び掛けてもいる。イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)はクルド人組織を攻撃しており、3日には数十機のドローンでクルド人部隊を狙ったと発表した。

また3日、トランプ大統領はイラン・クルド民主党(KDPI)のムスタファ・ヒジュリ党首と会談したと、イランのクルド人高官が明らかにした。KDPIは、IRGCが攻撃対象とした組織の一つ。

イランのクルド人反体制派は、今後数日間でイラン西部における地上作戦に参加する見通しだと、イランのクルド人高官がCNNに語った。

「今が絶好の機会だと確信している」と、情報筋は作戦のタイミングについて説明した。同筋はさらに、民兵組織が米国とイスラエルの支援を期待していると付け加えた。

トランプ氏は1日、イラク・クルド人指導者らと電話会談し、イランにおける米軍の作戦や、作戦進展に伴う米軍とクルド人勢力の協力体制について協議した。米当局者2人と会談内容に詳しい第三の情報筋が明らかにしたもので、米メディアのアクシオスが最初に報じた。

イランのクルド系組織への武器供与を試みる場合には、イラクのクルド人の支援を受けつつ、武器の輸送といった活動を行う必要があるとみられる。

協議内容に詳しい人物によれば、この構想はクルド武装勢力がイラン治安部隊と交戦し、その動きを封じることを念頭に置く。そうすれば主要都市の非武装のイラン市民が抗議活動に参加しやすくなるからだ。1月の騒乱時には、こうした市民が多数虐殺されていた。

別の米当局者は、クルド勢力が地域に混乱を招き、イラン政権の軍事資源を分散させる役割を果たせると指摘。さらに別の構想では、クルド勢力がイラン北部の領土を占領・維持し、イスラエルにとっての緩衝地帯を創出できるか否かも焦点となっている。

CIAは本件に関するコメントを控えた。

「急速な」蜂起狙う

CNNの国家安全保障アナリストで、オバマ元大統領時代の国防総省高官を務めたアレックス・プリツァス氏は、米国がクルド人への武器供与を通じてイラン人による政権打倒プロセスを「急ごうとしているのは明らか」だと指摘する。クルド人は歴史的に、現地での米国の提携相手となってきた。

「イラン国民は全体として武装しておらず、治安機関が崩壊しない限り彼らが政権を掌握するのは困難だ。誰かが彼らに武器を与える必要がある」とプリツァス氏。イラン国内に武器が入り、政権打倒に動く勢力が増えることを米国は期待しているとの見方を示した。

バイデン前大統領の下で中東専門の国務省上級職員を務めたジェン・ガビト氏は、クルド人に武器を供与する影響について十分に検討されているのかどうか懸念を示した。

「ただでさえ国境の両側は不安定な治安状況に直面している」「これはイラクの主権を損なう可能性があり、実質的に説明責任のない武装民兵組織を強化することになる。それが引き起こしかねない事態をろくに認識もしないまま」(同氏)

情報筋の一人によると、イスラエル軍はここ数日、イラクとの国境沿いに位置するイランの軍・警察の前哨基地を攻撃している。その一因は武装したクルド人勢力がイラン北西部へ流入する可能性に備えた布石だという。こうした攻撃は今後数日で激化する可能性が高いと、あるイスラエルの情報筋は明らかにした。

それでも、イラン政権打倒を支援する任務を負うクルド人の地上部隊に対して米国とイスラエルが何らかの後押しをするのであれば、その内容は広範なものでなければならないと、事情に詳しい関係者らは述べた。米情報機関の一貫した評価によれば、イランのクルド人勢力は現時点で政府への反乱を成功に導けるような影響力や資源を有していない。関係者の一人はそう語った。また事情に詳しい情報筋によれば、イランのクルド系政党は、抵抗運動への参加を約束する前にトランプ政権からの政治的保証を求めているという。

クルド系の反体制派組織は、歴史的な緊張関係やイデオロギーの違い、対立する目的によって互いに分裂してもいる。これらの組織の後押しに関する議論に携わってきたトランプ政権当局者の一部からは、米国を支援する動機が彼らにあるのかどうか、懸念を示す声が上がっている。

「米国が代理勢力を説得して戦わせれば済むような単純な話ではない」と、あるトランプ政権当局者は指摘。「自らの利益を考える集団が存在する中で、問題は彼らを巻き込むことが彼ら自身の利益と合致するのかどうかだ」と述べた。

米国とクルド人勢力との長い歴史

クルド人は公式な国家を持たない少数民族だ。現在推定2500万~3000万人のクルド人が存在し、その大半はトルコ、イラク、イラン、シリア、アルメニアにまたがる地域に居住している。大多数はスンニ派イスラム教徒だが、クルド人社会は多様な文化的・社会的・宗教的・政治的伝統を有し、様々な方言も存在する。

トランプ政権の多くの高官は、クルド人部隊が過去に米国と連携した際に感じた幻滅や、米国に見捨てられたという不満を頻繁に訴えていることを、非公式に警告してきた。

CIAはイラク戦争の一環として、数十年にわたりイラク・クルド人勢力との複雑な協力関係を築いてきた。事情に詳しい2人の関係者によると、同機関は現在イラン国境付近に位置するクルド人居住地域に前哨基地を置いている。米国は同地域のアルビルに領事館も構える。また米軍と有志連合の部隊は現地に駐留し、過激派組織イラク・シリア・イスラム国(ISIS)掃討作戦の一翼を担っている。

一部のクルド人は、米軍との連携の見返りとして、イラクの準自治地域であるクルド人居住地域が独立を勝ち取ることを期待していたが、それは実現しなかった。

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