古代エジプト人の全ゲノムを初めて解析 意外な祖先が明らかに

古代エジプト人男性の頭がい骨から3Dスキャンによって復元した顔/Caroline Wilkinson, Liverpool John Moores University

(CNN) 古代エジプト人の全ゲノムを初めて解析したという研究結果がこのほど発表された。エジプト文明初期に生きた男性の祖先について、意外な事実が明らかになった。

遺骨は土器の中に密封され、エジプトの首都カイロの南に位置するヌワイラートという村に埋められていた。4500~4800年前の男性とみられる。これまでに採取された古代エジプト人のDNAとしては最古のサンプルだ。研究チームは、男性の遺伝物質の80%が北アフリカの古代人、残る20%が西アジア、メソポタミア地域の民族集団に由来すると結論付けた。

英リバプール・ジョン・ムーア大学のアデリーン・モレズ・ジェイコブズ博士らが、3日に英科学誌ネイチャーに発表した。古代エジプトと現代のイラク(かつてのメソポタミア)やイラン、ヨルダンを含む「肥沃(ひよく)な三日月地帯」との間に文化的なつながりがあったことを示唆している。

エジプトと近隣地域の間に物品や知識のやり取りがあった可能性は、これまで土器などの出土品から推察されてきた。だがチームによれば、古代文明同士が緊密に交わっていたことを示す遺伝学的な証拠は確保するのが難しかった。

DNAパズルの解読

男性の遺骨が納められていた土器。1902年に発見された/Garstang Museum of Archaeology, University of Liverpool

古代エジプト人のDNAについては、2022年のノーベル生理学・医学賞を受賞したスウェーデンの遺伝学者、スバンテ・ペーボ博士が40年前に抽出を試みたものの、サンプルの保存状態が悪く、ゲノム配列を解読することはできなかった。

その後、特定のゲノム領域だけを濃縮する技術を使って、紀元前787年から紀元23年のエジプト人3人のゲノムが部分的に解読されていた。

さらにここ10年間で技術がさらに進歩した結果、今回の全ゲノム解析が実現した。

研究チームに参加した英アバディーン大学のライナス・ガードランド・フリンク博士によると、この研究ではゲノムを断片に分けて塩基配列を解読し、最終的に全体をつなぎ合わせる「ショットガン・シーケンス」という手法が使われたという。

チームによれば、男性はエジプトの初期王朝時代から古王国時代への移行期に亡くなった。当時は死者をミイラにする風習が一般的ではなかった。ミイラを作る過程で使われる薬品はDNAの保存には不向きだったが、この男性はミイラ化されなかったためにDNAがうまく保存されたとみられる。

ガードランド・フリンク博士によれば、暑さが厳しいエジプトの中でもこの地域は気温が比較的安定していることが、良好な保存状態の主な要因となった。さらに埋葬に使われた土器や岩でできた墓など、すべてが保存に好都合だったとみられる。

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