命がけのクマハンターに同行 「箱わなに入っていてもクマは怖い」 緊張の見回り

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 クマの目撃情報が急増する秋田県で対策に追われる猟師に密着すると、今までにない被害が見えてきました。

横手市では半年で527件目撃

 クマ対策に追われる列島各地。2日、北海道札幌市では1頭の子グマが塀を上り、住宅がある方向へ。警察やハンターが出動し、5時間後に駆除されました。

 秋田県ではクマが歩道を走り、住宅らしき建物の庭に入っていく様子が撮影されていました。

 県内では去年ゼロだった10月の人身被害が、今年は30件以上に増加しています。例年、クマの出没が少なかった地域でも被害が相次いでいます。

 番組が訪ねたのは秋田県横手市。平鹿猟友会の川崎賢一さんの見回りに同行させてもらいました。

「(わなに仕掛けた)餌(えさ)の状況を確認してくるので(車に)乗っていて下さい。危ないので」

 箱わなの中に仕掛けた餌に変化がないか確認します。

「(Q.どうでしたか?)大丈夫です。次の箱わなへ行きます」

 今年、クマ出没が急増している横手市。2024年度のツキノワグマの目撃情報は82件でしたが、今年は4月以降のおよそ半年間で527件に上っています。

 人身被害も3件発生し、市街地でも多くの目撃情報が寄せられました。

 先月22日には市の中心部に3頭のクマが出没。県内初の「緊急銃猟」が実施されました。

 保育園の送迎バスのドライブレコーダー映像には、保育園のすぐ近くの道路でもクマの姿が映っていました。

「(Q.クマは最近増えている?)今年は多く感じます。去年は(わなにかかったクマが)ゼロ。今年は10頭くらい(わなに)入っていた」

 この猟友会では、箱わなを500メートルごとに6カ所設置しています。先月からは毎日2人の猟師が3カ所ずつ見回りを担当しています。

「次の所が5日くらい前、110キロある小型のヒグマくらいのツキノワグマが(わなの中にいた)。箱わなに入っていても怖い。覚悟して行きます」

 辺りに注意を払いながら箱わなへ近付き、中を確認する川崎さん。わずかな距離でも油断はできないといいます。

「車から箱わなに確認に行く作業で(クマに襲われ)けがをした猟友会も。できれば車から降りたくない」

 川崎さんが所属する猟友会では、先月だけで10頭以上のクマを駆除しました。

 駆除したクマは、基本的に自分たちで食べるといいます。定番は、味噌で味付けして一晩煮込んだクマ鍋です。そのクマ肉の味は、歯ごたえもしっかりあって臭みもなく、とても食べやすいといいます。

 今年は例年に比べて、駆除数が大幅に増加。そこで川崎さんは業者に依頼し、クマ肉を長期保存が可能な缶詰にして活用しています。

 川崎さんが猟友会に参加したのは7年前。最初は畑を荒らすカラスの駆除を手伝っていました。ところが、今年はクマの出没が相次ぎ、駆除の要請が一気に増えています。地域のためとはいえ、クマを撃つことへの葛藤も抱えています。

「本当に複雑な。(クマを)撃ちたくて撃っているわけではない」 「(Q.難しい立場ですね?)そうですね」

 クマの被害は横手市の隣・湯沢市でも急増していました。湯沢市の雄勝猟友会に所属する鹿角良榮さんに町を案内してもらいました。

「やっぱり散歩の人はいないな。きょうがというよりも、いなくなったんだな、やっぱり」

 町の中心部は昼間でも人通りが少なくまばら。住民は市街地に出没するクマを警戒しているということです。

 先月、消防本部の防犯カメラが捉えたのは、自動ドアから庁舎の中へと入っていくクマの姿でした。

 同じ日に、市の中心部の住宅密集地で男性4人がクマに襲われる被害が発生しました。被害者の一人は、コンビニエンスストアから自宅に帰る途中で襲われたといいます。

「私が左端歩いていて、急に後ろから。どしっという感じで、まだ痛みも背中の方はあるので」

 男性は大事には至りませんでしたが、鹿角さんは注意を呼び掛けています。

「爪でやられると5センチまでバッと入るから、これだとどうされてもやっぱり傷が大きいと思うんですよ」

 見せてくれたのは駆除したクマの爪です。大きさは3センチから5センチほどで、非常に硬く鋭いため、一度引っかかれただけでも致命傷となる可能性があるということです。

「これでやられると、もうくっつかないよ。刃物でやられたのと全然違うからね。刃物でさっと切られたらピタってくっつくけど、(これは)こうやってやられただけでも、ここなんもなくなる」

 例年では出没しない地域でも対策が必要になっています。湯沢市役所では、建物内にクマが侵入してくるのを防ぐため、自動ドアを手動に切り替えました。

 また、毎年この時期に行われているイベントでも、対策を余儀なくされています。夜間はラジオを流し続け、投光器で会場を照らすことでクマが近付きにくい環境をつくっているといいます。

 農家への影響は、より深刻です。リンゴ農家では…。

「皆(クマが木に)上がったんですよ。収穫ゼロ、収穫ゼロ」

 リンゴの木の下には、クマのフンが無数に残されています。これから収穫シーズンを迎えますが、その前にクマにほとんど食べられてしまったといいます。

 被害が出始めてからは電気柵を設置しましたが、それでも防ぐことはできませんでした。

「全滅すごいなあ、わせ種。あー、もうこれもない、わせ種。はぁ、収穫するところがない」

 この辺りはクマの生息地から離れた場所にあるため、例年はほとんどクマの姿を目撃することはありませんでした。ところが、今年は200箱分以上のリンゴが食べつくされてしまいました。

「(Q.被害額はいくらですか?)分からない。何百万円もいってるだろうな」

 さらに、クマが登ったことで折れたり、枯れてしまったリンゴの木。被害は今年だけでなく、来年以降の収穫にも影響するといいます。

 本来、クマは臆病で人間を避ける動物。しかし、鹿角さんは「クマの性質が変化してきているので、今後はより警戒する必要がある」と話します。

「(クマは)人のいる所にはなるべく来ない。ただ人のものを食べてるやつ(クマ)は違う。人がいれば寄ってくるんだから。(人の食べ物の)味を覚えてるクマはな」

(「グッド!モーニング」2025年11月3日放送分より)


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