港区は4人に一人が「社長か外国人」
黒坂岳央です。
東京・港区は、色んな意味で「特別な街」だ。
東京商工リサーチの調査によれば、港区の住民の6人に1人が社長(社長比率16.5%)である。さらに、港区の公開データによれば、約7.9%にあたる約2万1千人の外国人が住み、その国籍は130か国に及ぶ。
つまり、港区の住民の約4人に1人(24.4%)が、高い経済活動を担う社長か国際的な背景を持つ外国人である。
また、開業医、タレント、弁護士などの士業といった高所得専門職の居住比率も、他の区と比べて圧倒的に高いと推測される。港区には美容医療や会員制アンチエイジングなど、富裕層向けの高単価の自由診療クリニックが集中し、大手法律事務所や監査法人、制作会社などが集積している。
この特異な富裕層・専門職の集積は、今後もさらに加速していく可能性が高い。
なぜ社長は港区を選ぶのか?
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社長が港区を選ぶ5つの理由
社長が港区に住居を構えるのは、贅沢やステータスのためだけではない。それは投資対効果(ROI)に基づいた冷徹なビジネス上の戦略的選択と考えるべきである。
1つ目は時間だ。
港区在住社長の平均通勤時間は極めて短い水準にあることで知られ、平均通勤時間はわずか7.2分とされる。これは全国平均の42分と比較すると、年間で約320時間もの通勤時間を節約できる計算になる。
仮にトップ経営者の時間価値を時給10万円と試算すれば、この節約分は年間数千万円の「時間価値」に相当する。実際、高層オフィス併設の住居に住み「エレベーター通勤」する社長がいるが、これはまさに「お金で時間を買う」という行為を体現している。
2つ目は投資である。
港区の高級タワーマンション価格は、直近10年で全国平均を大きく上回るペースで上昇している。自宅は流動性の高い資産であり、外資系や富裕層からの需要が常にあるため、売却時も即座に買い手がつく。
港区居住は、賃貸であっても分譲であっても、資産防衛と資産増加を両立させる合理的な投資とみなされている。
3つ目はネットワークだ。
港区内1km²あたりの社長数は渋谷区の3倍に迫る約1,800人であり、情報交換の「密度」が極めて高い。高い意思決定力を持つ社長同士が偶発的に出会うことで、新たなビジネスシナジーを生む可能性が高い。ビジネスが加速する環境自体が、港区の最大の価値である。
4つ目はリクルーティングだ。
外国人比率7.9%の港区は、外資系エグゼクティブや高度な専門職が徒歩圏内に住む、稀有な人材プールである。採用プロセスも円滑で、グローバルな即戦力確保の場として機能している。
5つ目は信用力だ。
名刺に「港区」と書かれているだけで、信用力が増すことを否定できる人は少ないだろう。港区住所の企業ということでブランド力は事業のスピードアップと資金調達において絶大な効果を発揮する。
このように、港区に住むこと自体が社長という属性と極めて高い親和性を持つ、戦略的行為なのである。
大阪や福岡も続く
この現象は東京だけの特異性ではない。
東京商工リサーチのデータでも、大阪市(社長比率4.1%)、福岡市(3.4%)といった地方中核都市の都心部でも、タワーマンション建設が進むエリアを中心に類似の構造変化が確認されている。
社長の居住地が「職住近接」と「利便性」を極限まで追求するトレンドは全国的なものであり、地方都市においても都心と郊外の二極化が加速している。
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地方では歯止めのかからない人口減少で徐々に過疎化するエリアがある一方で、富裕層の集中により人口が増え続けるエリアとの差は明確になっていく。この構造変化は、東京23区が将来的に「普通のサラリーマンが住みづらい街」となる可能性を示唆しているといえるだろう。
今後、東京港区は「普通の日本人がいない街」になっていくと見ている。
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