最も古い部類の陸生草食動物か、大きな顎に並ぶ歯で繊維をすりつぶす 新研究
「ティラノロテル・ヘベルティ」のイラスト/Hannah Fredd
(CNN) 約3億700万年前に地球を闊歩(かっぽ)していた生物が、陸生草食動物が現れた経緯を探る科学者に解明の手がかりを与えてくれそうだ。新たに記述されたこの種は、植物ベースの食生活を送っていたことが確認された最古の四肢動物の一つとなる。
学術誌ネイチャー・エコロジー・エボリューションに10日付で発表された研究によると、発見の中心となったのは、化石化した木の切り株の中から見つかった頭蓋骨(ずがいこつ)だ。カナダ東部ノバスコシア州に浮かぶケープブレトン島の崖沿いで見つかった。学名の「ティラノロテル・ヘベルティ」は、化石を発見した地元の古生物愛好家、ブライアン・エイバー氏の名前にちなむ。
論文の筆頭著者を共同で務めたアージャン・マン博士はこの学名について、「エイバーの暴君の掘り手という意味だ」と説明する。土を掘るのに鼻先が使われていた可能性があることから、「暴君」と「耕す人」を意味するギリシャ語を組み合わせた。
調査の結果、四肢を持つ最古の陸生生物であるこの動物は、石炭紀中期ごろには植物を食べ始めていた可能性が高いと判明。草食脊椎(せきつい)動物の誕生時期は従来の想定よりさかのぼることになる。マン氏は「これは四肢動物が完全に陸上へ移行してまだ間もない時期だ」と説明する。
初期の草食動物の姿
研究チームは3Dスキャンと3Dプリントを用い、化石を驚くほど精密に調査した。米シカゴのフィールド自然史博物館で学芸員として初期の四肢動物を担当するマン氏は、「こうしたデジタル処理により、頭蓋骨を可視化して3Dプリントを作成することが可能になる。化石の実物を危険にさらすことなく、博物館のコレクションや普及活動、海外への持ち出しに活用できるようになる」と説明する。
化石を調べて近縁種の骨格と比較した結果、研究チームはティラノロテル・ヘベルティが「大きめでずんぐりとした、アメリカンフットボール大の爬虫(はちゅう)類のようなかわいらしい生き物」だったことを突き止めた。トカゲの一種、マツカサトカゲに似た外見だったとみられる。ただ、この生き物を区別するのはその歯と頭蓋骨だ。
ティラノロテル・ヘベルティは幅の広いハート形の頭蓋骨を持ち、上顎(うわあご)の口蓋(こうがい)と下顎には大きな歯が並んでいた。これらの歯がパズルのようにかみ合い、固い繊維質の植物をすりつぶすことができた。
マン氏は「口蓋の表面部分の多さ、そしてそこを覆う大きく頑丈な歯がおそらく草食への適応に重要だったのだろう」と解説する。
草食だったことを確認するため、研究チームはCTスキャンや電子顕微鏡を頼りに、歯がすり合わさる咬耗(こうもう)面を特定した。「後の時代で同じような咬耗面を持つ動物は草食動物だ」とマン氏は指摘する。
本研究に関与していないシカゴ大学のマイケル・コーツ教授(生物学・解剖学)は新たな研究について、草食が従来考えられていたより早く、より多様な動物群で進化していたことを示すものだと指摘した。初期の陸上生態系が形成された過程に光を当てる内容だという。
コーツ氏はまた、ティラノロテル・ヘベルティの歯の列は水生の祖先から受け継いだ特徴だとも指摘した。
論文の著者らの仮説では、ティラノロテル・ヘベルティは当初は昆虫を食べていたが、世代を重ねるうちに草食へと進化したとみられる。コーツ氏もこれに同意し、植物を食べることで「昆虫という『仲介者』を排除し、食物連鎖」を短縮したとの見方を示した。