〈Economist誌が警告〉トランプが北朝鮮と取引し、同盟国の韓国や日本を売り渡すという最悪シナリオ(Wedge(ウェッジ))

 Economist誌9月27日号の社説が、成果を誇示したいトランプ大統領は北朝鮮との取引に応じ、結果的に同盟国である韓国や日本を売り渡してしまう危険性がある、と警告している。要旨は次の通り。  トランプは第一次政権時、当初は核戦争で北朝鮮を脅し、次に金正恩と一連の首脳会談を行った。この芝居がかった行動は新聞の大見出しは生んだが、進展はもたらさなかった。  そして今トランプは米国に対する北朝鮮の脅威を縮小し、あわよくば朝鮮戦争の正式な終結を仲介することも期待して第二幕を欲している。他方、金正恩は自分の条件に従うなら会ってもよいと言っているが、その条件はトランプ第一次政権時よりも悪いものになるのが必至だ。  北朝鮮は当時よりさらに危険になっている。保有する兵器は増え、性能も向上し、その大陸間弾道ミサイルはトランプのフロリダの別荘も狙える。また金正恩は自国の社会と経済への締め付けも強化している。  外部世界も金正恩に都合のよい形に変わってきた。金正恩はウクライナ戦争を利用してロシアと戦時パートナーシップを築き、さらにそれによって北朝鮮の主たるパトロンという立場を失いたくない中国を不安にさせている。  米国の北朝鮮政策は長年2つの陣営に分裂してきた。強硬派は、抑止と制裁を強化し金王朝が転覆されるのを待とうとし、関与派は、手を差し伸べる太陽政策で金一族は軟化するかもしれないと反論する。  しかし、どちらも功を奏しなかった。元々金政権が自らの存続の最善の保証と見る兵器を制裁により諦める可能性はほとんどなかったのであり、今や制裁が効く可能性はさらに小さくなった。

 それよりも別種の圧力の方が効果的かもしれない。金正恩は、資本主義の民主主義国家である韓国に比べて北朝鮮の生活がいかに惨めかを自国民に示すあらゆる情報を恐れている。西側はKポップや昼メロ等のコンテンツを大量に北朝鮮に送り付けるようなことをもっとしたら良い。  一方、世界が北朝鮮を核保有国と認めた上で北朝鮮と交渉し共存する努力をすべきだ、と言う者もいる。しかし、この道は重大な危険を孕む。北朝鮮が核兵器を製造・保有しても懲罰を受けなければ、他国にも同じ道を促すことになり、弱体化した核不拡散体制は崩壊する可能性がある。  金正恩が核をカネと交換することは決してないだろうが、トランプが受け入れたい誘惑にかられるだろう別の取引には応じるかもしれない。北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの開発を止めれば、米国を再び安全にしたとトランプは主張できるようになり、北朝鮮も平和条約を結んで朝鮮戦争を正式に終結させることが出来るようになる。  そうなればトランプは長年示唆してきたように、韓国から米軍を引き揚げ、金正恩に大きな褒美を与えてしまう可能性がある。その場合、引き続き北朝鮮のミサイルの脅威に直面する韓国や日本は自前の核兵器開発に走る可能性がある。  これは世界にとり恐ろしい結末だ。金正恩が平和的共存を望んでいる気配はない。それよりも彼は譲歩されれば、その成果をせしめた挙句、問題を起こし続ける可能性が高い。北朝鮮のような国との軽率な取引は、全く取引しないよりもタチが悪い。 *   *   *

Wedge(ウェッジ)
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