イスラエルの極右閣僚、エルサレムの聖地で礼拝 宗教間の取り決めに違反

画像提供, Itamar Ben-Gvir X account

画像説明, アル・アクサ・モスクの前に立つイスラエルのイタマル・ベン・グヴィル国家安全保障相

ヒューゴ・バシェーガ中東特派員(エルサレム)、アリス・デイヴィス記者(BBCニュース、ロンドン)

イスラエルの極右政治家イタマル・ベン・グヴィル国家安全保障相は3日、エルサレムのアル・アクサ・モスク(イスラム教の礼拝所)を訪れ、構内でユダヤ教の礼拝を行った。中東で最も神聖な宗教施設の一つとされる同地で、数十年にわたって維持されてきた取り決めに違反した形だ。

現地で撮影された写真や映像には、ベン・グヴィル氏が礼拝を主導する様子が映っている。アル・アクサ・モスクのある場所は、ユダヤ教では「神殿の丘」として知られ、イスラエルが占領する東エルサレムに位置している。

構内は現在、ヨルダンのワクフ(イスラム教財団)が管理しており、ユダヤ教徒の訪問は認められているものの、礼拝は禁じられている。今回の行為はその取り決めを破るものだ。

イスラエル首相府は声明を発表し、イスラエルの政策に変更はなく、現状維持の合意に基づき、同地ではイスラム教徒のみが礼拝できる状態を維持していると強調した。

ヨルダン政府は、ベン・グヴィル氏による訪問は「容認できない挑発行為だ」と非難した。

パレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマスは、「パレスチナ人民に対する継続的な侵害の深刻化だ」と批判。パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス大統領の報道官も「すべての一線を越えた行為だ」と反発した。

「神殿の丘」は、旧約聖書に登場する第一神殿と第二神殿が存在したとされる、ユダヤ教で最も神聖な地とされている。一方、イスラム教徒にとっては、預言者ムハンマドが天に昇ったと信じられている第三の聖地だ。

この場所は、1967年の中東戦争でイスラエルがヨルダンから占領した。現状維持の取り決めに基づき、ヨルダンは歴史的な管理者としての役割を継続し、イスラエルは警備と出入りの管理を担っている。

パレスチナは、イスラエルがこの取り決めを弱体化させようとしていると非難している。また、近年ではユダヤ教徒がイスラエル警察に制止されることなく祈りを捧げる様子が目撃されていると訴えている。

アル・アクサ・モスクを管理するワクフは、ベン・グヴィル氏を含む1250人のユダヤ教徒が3日、モスクの構内に入ったと発表した。

ウルトラナショナリストであり、警察を管轄する国家安全保障相でもあるベン・グヴィル氏は、これまでにも同地を訪れているが、イスラエル紙「タイムズ・オブ・イスラエル」によると、公然と礼拝を行ったのは今回が初めてだという。

ベン・グヴィル氏は、警察官に付き添われながら構内をめぐった。

また、ガザ地区全域の占領と、パレスチナ人による「自主的な移住」を促すべきだとの持論を改めて展開した。

専門家らは、この主張は民間人の強制移動に相当し、戦争犯罪に該当する可能性があると指摘している。

ベン・グヴィル氏は、占領下のヨルダン川西岸におけるパレスチナ人コミュニティーへの度重なる暴力扇動により、イギリス政府から制裁を受けている

関連記事: