「邪道」な副首都構想、定数削減は「横暴で不見識」 片山善博氏
大阪都構想を前提とした副首都構想と、衆院議員定数の1割削減。自民党と日本維新の会が連立合意した二つのテーマを、その道のプロはどう斬るのか。鳥取県知事や総務相を歴任した片山善博・大正大特任教授(地方自治論)に尋ねると、「邪道だ」と切り捨てた。
――日本に副首都は必要か。
◆政治経済や行政の機能が東京に集中している。首都直下地震などで深刻な被害を受けたとき、東京の代わりに中枢機能を果たすような役割は必要だと思う。東京と大阪が同時被災することもあり得るので、どこかを副首都と定めていろんな設備を持っておくというのではなくて、災害の状況を見て臨機応変に対応できるように、札幌や福岡など複数箇所を想定しておくのがいいだろう。
Advertisement――特別区を設置する自治体でないと副首都になれない?
◆大阪都構想を前提に副首都の議論をするのは邪道だ。維新の底意が見えて、ちょっとうんざり感がある。特別区を設置する自治体でないと災害時のバックアップ機能を果たせないということは、全くない。
――二重行政は都構想でなければ解消できないか。
◆そんなことは決してない。道府県の権限を政令市に移す特別(自治)市構想の方が筋が通っている。韓国・釜山などもそうだし、そちらの方が世界標準だ。
――住民投票で2回否決された大阪都構想を持ち込むことの是非は。
◆法律がある以上、3回目の住民投票を否定することはできない。選ぶのは住民だ。ただ、維新が自分たちの思惑を達成せんがために、国策としての副首都を絡めて住民を引きずり込むのはやっぱり邪道だ。
――衆院議員定数の1割削減。比例代表を対象とすることについて。
◆はっきり言って、横暴で不見識だ。現在の小選挙区比例代表並立制は中選挙区制をやめて小選挙区制を導入する際に、それだけだと切り捨てられる民意がたくさん出て、少数意見が埋没するという理由で比例代表を並立した歴史がある。
それを大きく覆そうという時に、相対多数の自民・維新の2党だけで決めるなどもってのほかだ。選挙で多数を取った側が民主主義の基盤を自分たちに都合のいいようにいじくり回すことはあってはならない。議員定数削減を念頭に置きながら、各会派で相談して、専門家の意見を聞きながら丁寧に議論を始めるべきだ。
――現状、国会議員の数は多いと考えるか。
◆全国で見ればそんなに多すぎることはないと思う。ただ、いわゆる「1票の格差」を是正するために、都市部では小選挙区の定数が増えた一方、地方では削減され、地方の声が届きにくくなっている。民主主義は数で決めるというのが重要なルールだが、しっかり議論して、合意形成の過程で少数意見を尊重する精神がなくてはいけない。「1票の格差」の是正一辺倒では、多数派の横暴になってしまう。単純な人口比例だけを基準にするやり方には懐疑的だ。
――中選挙区制に戻すべきだという議論も。
◆中選挙区制の時代にいろいろな弊害があって、それを解消しようというのがこれまでの流れだった。一方で、小選挙区制の導入からある程度時間がたち、これはこれで弊害が出ている。もう一回、洗いざらい材料を出して、一から議論し直す時に来ている。
いずれにしても、今権力を握っている人たちが自分たちに都合のいい選挙制度に変えてしまえば、彼らはますます強くなる。多数を握った人たちは、謙虚でなければいけない。
【聞き手・高良駿輔】