深夜2時の投稿、トランプ氏の焦燥にじむ-米中対話の停滞浮き彫り
トランプ米大統領は米中間の貿易やハイテク分野での対立激化を防ぐ上で、中国の習近平国家主席との個人的な対話が重要との認識を示している。
しかし、習氏は電話会談に応じるには何らかの見返りが必要だとの姿勢を崩しておらず、その強硬な態度がトランプ氏を夜遅くまで悩ませているようだ。
トランプ氏は米東部時間4日午前2時17分ごろ、トゥルース・ソーシャルに「習主席のことは好きで、これからもそうだが、交渉するには彼は極めてタフな相手だ!」と投稿した。この未明の投稿に先立ち、米政府関係者からは、両国首脳が今週中にも電話会談を行うとの見方が相次いで出されていた。
首脳会談の実現に向けて中国側がホワイトハウスにどんな譲歩を求めているのかは、依然として明らかになっていない。しかし、トランプ氏の呼び掛けに中国側が応じない現状は、打開の糸口さえ見えない深刻な対立を浮き彫りにしている。
一方で中国は、欧州に対して歩み寄りの姿勢を見せている。欧州もまた、トランプ氏との間で関税問題を抱えている。
トランプ政権1期目で国際経済を担当し、今は法律事務所ホーガン・ロヴェルズのパートナーであるケリー・アン・ショー氏は「中国側が電話会談を望んでいないとすれば、それは合意に応じる意思がないか、あるいは意図的に手の内を明かさずにいる可能性がある」と指摘。「電話会談が行われなければ、関係が再び緩和に向かう前に、米中関係はさらに一段と緊迫することになるだろう」と語った。
膠着の背景には交渉スタイルの不一致があり、この状況が長引けば、米中関係の行方に深刻な影響を及ぼす可能性がある。トランプ氏は首脳間の直接対話による打開を模索しているが、中国側は事務レベルの交渉で成果を積み上げる前に約束を交わすことには慎重な姿勢を崩していない。
すれ違い
「根本的なすれ違いがある」と話すのは、ホワイトハウスの首席補佐官代行を務めた経験があるミック・マルバニー氏だ。同氏は3日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで「トランプ氏は最も高いレベルでの直接対話を望んでいるが、中国側が常にそうしたやり方を好むとは限らない」と語った。
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米中が合意に達する可能性はなお残されているものの、その内容を巡っては双方の期待に大きな隔たりがあるとみられる。
中国の政策当局者は、人工知能(AI)や軍事分野の発展を念頭に、米国製の先端半導体へのより広範なアクセスを求めており、対米投資の拡大にも関心を寄せている。加えて、米国産農産物の輸入拡大にも前向きな姿勢を示している可能性がある。
ただ、バイデン前政権下で強化された先端技術に対する包括的な輸出規制を緩和することは、米国内では政治的に極めて困難との見方が強い。米政界では、中国を国家安全保障上の脅威とみなす点で、共和・民主両党が珍しく足並みをそろえている。
米当局者は、中国が数十年にわたり米国市場で製品をダンピング(不当廉売)し、自国の雇用や産業を脅かしてきたと考えており、中国側に対して大幅な譲歩を求めている。
米中双方が主張の隔たりを埋めないまま協議を続けている姿は、中国のレアアース政策を巡る混乱の中でも浮き彫りとなった。レアアースは米国の国家安全保障上のサプライチェーン、特に自動車産業にとって不可欠な重要鉱物だ。
トランプ氏は、5月にジュネーブで締結した合意に中国が違反していると非難。米国側は、関税の引き下げは、中国が一部レアアースの輸出規制解除に合意することが条件だったとしている。一方で中国商務省も、米国が合意内容に違反したと非難し、自国の利益を守る措置を講じるとの報道官談話を発表した。
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EUに接近
トランプ氏に対して冷淡な姿勢を保っているのとは対照的に、中国は欧州への関心を強めている。
7月に北京で予定されているEU中国首脳会談を見据え、シェフチョビッチ欧州委員(通商担当)は3日、パリで中国の王文濤商務相と会談した。
中国は両経済圏の長期的な関係を象徴するものとして、早ければ来月にもエアバス製の航空機を数百機規模で発注することを検討しているという。2017年以降、中国から大口受注を得られていないボーイングにとっては、さらなる打撃となる可能性がある。
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習氏が会談に慎重な姿勢を取っている背景には、今回の通商対立において、中国がトランプ氏の予測不能な行動に一定の耐性を持っていることもありそうだ。
世界第2位の経済大国である中国は、対米依存の脱却を図りつつ市場の多様化を進めており、国民もトランプ氏の圧力に対して比較的まとまった姿勢を示している。一方、米国は経済・安全保障政策の大幅な見直しを進める中で、同盟国・敵対国を問わず各国・地域との関係にひずみが生じつつある。
上海の華東師範大学のジョセフ・グレゴリー・マホーニー教授(国際関係学)は「問題の一つは、トランプ氏がディールを重視する姿勢の下、通商圧力を常態化させようとしている点にある」と指摘。「もう一つの問題は、トランプ氏が依然として日和見主義的な姿勢を崩しておらず、たとえ合意に至ったとしても、その履行が保証されない点だ。次期政権でも同様の不確実性が残るとみられる」と語った。
原題:Trump’s Late-Night Plea to Xi Shows Trade Fight Lacks Off-Ramp(抜粋)