パウエルFRB議長、0.25ポイント利下げで意見集約に成功
米金利政策を巡り連邦公開市場委員会(FOMC)内の見解が大きく割れる中にあって、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は17日、政策金利を0.25ポイント引き下げる決定に意見を集約することにおおむね成功を収めた。
執拗(しつよう)に利下げ注文を繰り返すトランプ大統領の強い政治的圧力にとらわれることなく、米労働市場の減速を巡る懸念や、根強いインフレに対する警戒感など多様な意見の間で妥協点を見いだした。
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雇用の伸びが大きく鈍化するとともに、ホワイトハウスが前例のない形で大幅利下げを求める状況にあって、FOMCは17日、今年に入って初めてとなる0.25ポイントの利下げを賛成11、反対1の賛成多数で決定。ただ、トランプ氏の関税措置がインフレに及ぼす影響は引き続き不透明だ。
パウエル議長はFOMC会合後の記者会見で、「どうすべきか判断は難しい」と述べるとともに、「リスクのない道筋はもう存在しない」と語り、追加利下げの是非を検討するのに当たり、金融当局者が今後数カ月にわたり難しい選択を迫られることを明確にした。
利下げ決定はほぼ全員一致で下され、反対票を投じたのはマイラン理事のみだった。マイラン氏はトランプ氏の最側近の1人で、0.5ポイント利下げを主張していた。一方、7月に利下げ支持の立場から反対票を投じていたウォラー理事とボウマン副議長(銀行監督担当)は今回、賛成に回った。
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幅広い賛成を取り付けたことは、パウエル議長にとって大きな成果だ。来年5月に任期満了となる議長は、連邦準備制度の独立性に対する数十年ぶりの脅威を退けようとしている。ただ、17日に公表された最新の四半期経済予測では、金利の見通しを巡って当局者間に依然として意見の相違があることが示された。
当局者による最新予測の予想中央値では、今週の利下げに加え年内にあと2回の追加利下げが見込まれ、これは年内利下げを計2回としていた6月時点の想定より1回多い。それでも、6人の当局者は年内の追加利下げを想定しておらず、複数の当局者が引き続きインフレに強い懸念を抱いていることが明らかになった。
最新の金利予測分布図(ドットプロット)に基づけば、当局者の1人は17日の会合だけでなく年末まで利下げを見送るべきだとの見解を示唆。一方で、別の当局者1人は年内に政策金利をさらに1.25ポイント引き下げるべきだとの見方を示した。
BofAセキュリティーズの米国担当シニアエコノミスト、アディティア・バーベ氏は「1人を除いて全員が0.25ポイントの利下げに同意したが、インフレ見通しはクリアにならないため、政策金利が下がれば下がるほどタカ派の声は大きくなるだろう」と述べた。
パウエル議長も金融当局の政策運営が一層難しくなることを認めた。これまで力強い労働市場が背景にあり、当局者は関税によるインフレ圧力に備える余地があった。だが、最近の雇用統計で採用の大幅減速が示され、当局者は最大限の雇用と物価安定の実現という二つの責務のうち、雇用の側面に一段と重点を置くようになっている。
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ウォルフ・リサーチのチーフエコノミスト、ステファニー・ロス氏は「両方の責務が困難に直面し、今は決断が一層難しくなっている」とした上で、「どちらか一方に踏み込み過ぎれば、もう一方の責務が大きく損なわれかねない」と指摘した。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の米国担当チーフエコノミスト、アナ・ウォン氏らは「連邦準備制度は0.25ポイントの保険的な利下げを実施したが、最新のドットプロットは分裂を浮き彫りにした」と分析。成長と雇用の見通しを上方修正しながらも、さらなる利下げを予想している点を挙げ、「いずれにせよ、金融当局の反応関数はよりハト派的な方向にシフトしたように見受けられる」とコメントした。
政治的混乱
連邦準備制度を取り巻く政治的混乱を踏まえると、FOMC内の意見集約は一層の意味を持つものとなった。トランプ氏がFRB理事に指名した最側近のマイラン氏は、上院が異例の速さで承認手続きを進めた結果、16日午前に理事に就任し、同日からの会合に出席した。
一方、クック理事の会合出席も、15日遅くに連邦高裁の判断が下るまで確定していなかった。クック氏は、トランプ氏が根拠のない住宅ローン不正の疑惑を理由に解任を試みたして、職にとどまるための法廷闘争を続けている。
連邦準備制度を取り巻く政治的脅威について繰り返し質問されたパウエル議長は、当局者はあくまで経済データに基づき、米国民の利益を最優先に判断していると強調した。記者会見の冒頭では「独立性を維持することに強くコミットしている」と話した。
他方、5月に議長任期が切れた後に理事を辞任するかどうかについては、今回も明言を避けた。ホワイトハウスは現在、後任の議長候補の面接を進めており、数カ月以内に決定する計画だ。
原題:Powell Rallies Fed Colleagues as Economic, Political Risks Grow(抜粋)
— 取材協力 María Paula Mijares Torres, Catarina Saraiva, Maria Eloisa Capurro and Amara Omeokwe