全日本選手権ロードレース2025男子エリート 選手コメント
勝利者インタビューで突如、現役引退を発表した小林海(JCLチーム右京)。2位の山本元喜や3位の金子宗平、逃げで見せ場を作った鎌田晃輝や新城幸也など、選手たちがレース後に語ったコメントを紹介する。1位 小林海(JCLチーム右京)独走でフィニッシュを目指す小林海(JCLチーム右京) photo:Satoru Kato嬉しいですし、ホッとしています。僕、今日で引退するんですよ。だから(現役)最後のレースだったので嬉しいです。勝つために準備していたのですが、あまり連覇というのは頭の中になく、とにかく良い走りがしたいと思っていました。そのために毎日、目の前のキツいトレーニングをこなし、辞めると決めていたので「もうこんなキツいトレーニングは今日で最後だ。もう雨の日に自転車乗らなくていいんだ」と思いながら、一日一日を過ごしていました(笑)。良い形で勝つことができて本当に嬉しいです。チームとしても勝てたので、それが一番大事かなと思います。(レースプランは)それほど考えないようにしていて、勝つにはどうしなければいけないのかを、レース中に考えていました。金子が去年と同じく、本当に強かったのも分かっていました。金子が途中にアタックした時、「金子のアタックで自分が千切れることはないだろうな」と思いました。だから次はどうしようかと考え、今年はスプリントに持ち込みたくありませんでした。連覇を決めた小林海(JCLチーム右京) photo:Satoru Kato去年よりもちょっとだけ体重が重いので、(登りアタックの)一発で行けないだろうなと思っていました。だから何発か仕掛けなければと思い、周りを消耗させながら行こうと思っていました。だからホームストレート手前の坂でペースを上げたり、何度も(他の)登りでアタックしました。登りでアタックしても下りを含め、フィニッシュまで距離があるので(アタックを)迷っていました。でも「俺、ビビっているな」と気づき、「それは良くないな」と思い仕掛けました。仮に(後続が)残ってスプリントになっても仕方がないと思い、とにかく出せるものは全部出そうとアタックしました。そうしたら元喜さんがついてきて「マジか」とは思いましたが、競輪養成所の裏の登りで限界まで踏みました。それが上手くいき、勝てたのでホッとしています。こんなに辛いこと、僕は人生でもうしなくていいのかと思うと嬉しいです。勝利者インタビューで突然の引退発表をした小林海(JCLチーム右京) photo:Makoto AYANO長い間、ありがとうございました。僕もこんなに早く引退するとは思っていなかったので、びっくりしています。1年間は日本王者ジャージを自分でオーダーして、そこら辺を走っているので声をかけてください(笑)。
2位 山本元喜(キナンレーシングチーム)
厳しい上りでアタックを繰り出す山本元喜(キナンレーシングチーム) photo:Makoto AYANOチームのミーティングでも真っ向から力勝負で戦うと決めていたが、展開と言うほどのこともなく力勝負のレースになった。ラスト4周くらいで周りの雰囲気から狙えるなと感じてはいたが、小林海選手が強かった。残り2周で集団がバラバラになった時は小林選手が淡々とペースを上げていったので、ついて行くだけでもキツかった。それで2人になってどう勝つかと考え、スプリントに持ち込んで差せればと思っていた。山本元喜(キナンレーシングチーム) photo:Satoru Kato最終周の登りでもペースを上げてきたので、なんとか粘って喰らいついて、これでスプリントに持ち込めると思っていたら、競輪養成所の裏の登りでもう一発行かれて「あぁやられた」と。ミスというよりも脚負けしたという感じ。次のレースの予定は決まっているが、ここで前半戦の区切りと考えてきたので、この後のことはまだ考えられない。でも来年も全日本を狙えればいいなと思っている。3位 金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)
厳しい上りで加速する金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム) photo:Makoto AYANO今年2冠を取りたかったので悔しい。昨年と同じようにラスト4人が残るような展開でも勝てるようにスプリント力をつけて臨んだが、千切られなければチャンスはあったと思う。でも力不足で登りでついて行けなかった。毎回キツくてなんとか最後までついて行こうと頑張っていたけれど、作戦どうこうではなく力が足りなかった。小林海選手が強かった。3位で2年連続の表彰台に立った金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム) photo:Satoru Kato来週の個人タイムトライアルは2連覇したい。ド平坦のコースで一番速い人は誰だろうと気になっている。窪木(一茂)さんは今日も序盤走れていたので個人タイムトライアルを狙っているのではと思っている。サーヴェロさんにサポートして頂いて新しいバイクを用意してもらえるので、明日ポジション合わせをして本番に備えたい。4位 谷順成(宇都宮ブリッツェン)
谷順成(宇都宮ブリッツェン) photo:Makoto AYANOここまでのTOJや熊野などのレースを見て、岡が日本人の中では最強だということは誰もがわかっていたことなので、「岡のスプリントで勝つ」というのをブリッツェンの第一目標にしていました。そして第2エースの自分がスキをついて逃げに入る。チームとしては最後まで枚数を残して岡をサポートするという作戦でした。残り6周で岡選手がキツイと話してくれて、自分が最後を狙うということも視野に入れて走りました。しかしキツい上りの度に金子選手と海選手がペースを上げて、自分は脚にきていた。4人のなかではマリノ選手がいちばん余力があることは分かっていた。ここは力で必ず決まるコースなので順当な結果です。自分としては今シーズンの今までリザルトは無いものの、キャリアで最も良い状態で、自信もありました。力勝負で負けました。もっと強くなって帰ってきます。来年こそ宇都宮にジャージを持ち帰ります。5位 岡篤志(宇都宮ブリッツェン)
岡篤志(宇都宮ブリッツェン) photo:Makoto AYANO最後まで残れれば自分にチャンスが有ると思っていた。残れなかったのは力不足。純粋に今日は自分が弱かった。中盤まで緩い展開で温存できていたと思ったけれど、そこから自分で動きすぎたと思う。ただマリノさん元喜さんらも動いていたので、自分の力不足です。また一年間しっかりトレーニングを積んで帰ってきたい。6位 孫崎大樹(ヴィクトワール広島)
終盤までに絞られた集団に残った孫崎大樹(ヴィクトワール広島) photo:Satoru Katoラスト6周くらいから4人(小林海、山本元喜、金子宗平、谷順成)が抜け出そうとしていて、最初のうちは僕や岡(篤志)さんや(山田)拓海らがついて行こうとしていたけれど、ラスト3周あたりから(小林)海さんの余裕が他の選手と違っていた。僕はオールアウト直前だったので、ひとつでも上の順位を狙うことに切り替えた。孫崎大樹(ヴィクトワール広島) photo:Satoru Kato今までの僕の走りを知ってる方には、全日本でトップ10に入ると予想してなかったと思う。でも僕はここに合わせてしっかり絞ってコンディションも合わせてきたので、トップ5に入れるチャンスはあると考えていた。展開に恵まれなかったこともあるけれど、5位以内を狙える位置にいて6位という結果はちょっと悔しい。前日にU23で永井(健太)が5位に入ってくれたこともあり、チームのためにもUCIポイントを取らなければというプレッシャーもあった。次は7月にJプロツアーのホーム戦があるので、自信をもって積極的に行きたい。チームとしてもリーダーのエリオット・シュルツをはじめベストメンバーで臨めるし、チームの雰囲気も良いので楽しめるようにしたい。7位 新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)
レース後に笑顔を見せた新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo:Makoto AYANO今日はスタートから暑く、雲がなくなると一層暑くなるため、深部体温を上げないよう常に氷を(背中に)入れて水を被りました。心拍も収まらず、それは昨日、一昨日の練習で分かっていました。なのでレッドゾーンに入れないように1日中気をつけ、大分冷静に走ることができました。最後にサバイバル(な展開)になるだろうと思い、集団で力を使わず、大人しく過ごしていました。最後は残り2周で全身が攣ってしまい、動けなくなってしまいました。でもそれがいまの実力ということです。もっと準備やトレーニングを上手く行えていればロスすることもなかったとは思いますが、今日は、僕なりに出来ることは全部できました。「レッドゾーンに入らないよう」プロトンの後方で脚を回す新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo:Makoto AYANOさっき妻に「年取ったけど順位が変わっていないので成長だね」と言われました。なので40歳で成長したのかもしれません(笑)。一つ良いことを挙げるとすれば、調子が悪くなかったこと。長年ヨーロッパから帰ってきて(全日本選手権に)臨んでいますが、火曜日ではなく水曜日(4日前)に帰って来た方が調子が良いなど、長年の経験で調整方法が分かってきました。来週のタイムトライアルに向けて準備をし直します。衰えは感じていますが、経験でカバーできると思っています。僕ができることは若者にレースや生活、準備などヨーロッパのプロトンにいないと得られない情報を伝えていきたいです。今後どこまでやるかはわからないですが、今シーズンはジャパンカップまで突っ走りたいと思います。小林海の引退発表を聞いて
自分なりの選択肢があるだろうし、人それぞれの人生ですからね。お疲れ様と伝えたいですね。8位 鎌田晃輝(JCLチーム右京)
序盤から逃げ続けた鎌田晃輝(JCL TEAM UKYO) photo:Satoru Kato自分が最初に逃げることによって、チームの負担も減るだろうと思い、また(そのまま)自分が勝ち切るという作戦でした。タイム差を2分以上得ることができ(逃げに乗るという)役割は果たせたと実感しました。今日の走りは60点で、足りない40点は勝てなかったから。でも海さんの勝利はとても嬉しかったです。(小林の引退を知っても)いつも通りラフな感じでレースに臨むことができました。来年は(僕が)勝つので応援をよろしくお願いします。text:Sotaro.Arakawa, Makoto AYANO, Satoru Kato