「残クレアルファード」はこうして広まった マイルドヤンキーとトヨタの“最適解”
トヨタのLサイズミニバン、アルファード/ヴェルファイアの人気に陰りが出ていると言われ始めた。 【画像】「もう売れていない」は本当? 「残クレ頼み」では説明できない、初代はこんなデザインだった、人気に火がついた「3代目」を見る(7枚) しかし、実際の売れ行きを見ると、2025年11月の乗用車の登録台数は、アルファードがフリードやステップワゴンを上回る6位で、ヴェルファイアは23位。両車種の合計台数は、8位のヴォクシーと9位のノアを足した数よりも少ないものの、1万台を超える。プリウスや日産ノートよりも売れているのである。 これだけの大型高級車で、この高い人気を約6年にわたって維持しているのだから、お化けモデルと言っていいほどの人気ぶりだ。その人気を支えているのは、主に法人の送迎用(ハイヤー利用も含む)と個人ユーザーだ。 しかし、法人向けで毎月何千台も需要があると思えないから、需要の大半が個人ユーザーであるというのが実情だろう。どうしてそれほど高い需要を維持できるのか。その理由は、トヨタが築き上げた独特のビジネスモデルにある。 といっても、トヨタはビジネスモデルもマルチパスウェイ(あらゆる選択肢を現実的に使い分ける戦略)だ。古くはカローラバン、現代ではプロボックスやハイエースなどの営業バンが法人営業や職人の需要を取り込み、クラウンやアルファード、レクサスLSなどは法人の重役や自治体首長の送迎用として需要がある。プリウスやアクア、ヤリスなどは広く法人・個人ユーザーに利用される。幅広いユーザー層に対応するカテゴリーを設定し、豊富なモデルを用意して、販売網を充実させてきた。 最近では、センチュリーSUVによって、従来は法人の重役向けだったセンチュリーセダンのイメージを刷新。センチュリーを独立した超高級ブランドとして展開していくことを明らかにしている。 しかし、アルファード/ヴェルファイアの販売台数や収益構造はセンチュリーとは全く異なり、その規模の大きさから見ても大成功といえる。
アルファードは登場当初から人気車だった――そう思われがちだ。だが実際は、Lサイズミニバンの先駆者である日産エルグランドに対抗するモデルとして2002年に登場したものの、発売当初の人気は限定的だった。 確かにハイエースにはない高級感や快適性は魅力的ではあったが、異形ヘッドランプとフロントグリルを組み合わせた上品な大型ミニバンであり、当時は薄いヘッドライトを二段に重ねてインパクトのある顔つきにした兄弟車ヴェルファイアの方が人気が高かった。 人気が爆発したのは、先代の3代目モデルが2015年に登場してからだ。プラットフォームを一新し、ボディ剛性を高めるとともにリアサスペンションをマルチリンク(トヨタはダブルウィッシュボーンと呼んでいる)化することで、大柄な車体ながらも乗り心地とハンドリング性能を大幅に向上させた。 しかし人気の要因は、そんな機能面や走りの改善ではない。高級かつインパクトのあるフロントマスク、風格を感じさせる“顔つき”こそがヒットの原動力なのである。 しかも、3代目も当初から爆発的なヒットとなったわけではない。従来モデルとそれほど変わらなかった売れ行きが変化したのは、登場から2、3年たってからだ。街で新型のアルファードを見かけるようになり、その迫力ある顔つきによって前走車や対向車のドライバーが購買意欲をそそられたのである。 そして残価設定クレジットという“打ち出の小づち”を使い、高い残価設定を実現することにより、アルファードは飛ぶように売れ始めたのである。