「性能では“SSDが勝ち”」でもなぜHDDが使われ続けるのか(TechTargetジャパン)

 HDDも、SSDと同様に不揮発性のストレージデバイスの一種だ。ただし、SSDと異なり可動部品を含む構造となっている。HDDでは、磁性体でコーティングされた円盤(プラッタ)が高速回転し、その表面にデータが記録される。プラッタは保護ケース内に収められ、内蔵されたコントローラーによって、データの読み書きやアクセスが制御される。データの読み書きは、アクチュエーター(可動アーム)に取り付けられたヘッドが担当し、ランダムアクセス可能なブロック単位で実施される。  HDDには複数のフォームファクター(形状やサイズの規格)が存在し、プライマリーストレージ(OSやアプリケーションの保存用)とセカンダリーストレージ(バックアップやアーカイブ用途)の両方に使われている。  HDDはコンピュータ内部に内蔵される他、外付けストレージとして利用されることも多い。特に企業の利用環境では、性能や信頼性を高めるために、複数のHDDを組み合わせたストレージアレイの構成要素として使われるのが一般的だ。

 SSDとHDDを選定する際には、容量、性能、使いやすさ、耐久性、コストといった複数の観点から総合的に評価することが重要だ。 容量  現在、複数のSSDベンダーが60TB超の製品を提供している。100TB超の容量を持つSSDもある。データの記録密度が高いということは、同じ容量でも装置の占有スペースが小さく済むということであり、データセンターのスペースや電力などのリソース消費を削減できる。一方、HDDも容量増加の進化を続けており、30TB超の製品もあるが、容量増加のペースはSSDに見劣りする。 速度  SSDはHDDに比べて読み書きの速度が高速だ。1TB当たり単価は高くなる傾向にあるが、高パフォーマンスを重視する企業はコストを受け入れてでもSSDを採用する傾向がある。HDDは今も広く使われているが、高速アクセスを要するアプリケーションでは、HDDのアクセス速度やレイテンシがボトルネックとなるケースがある。 使いやすさ  SSDはその読み書き性能の高さにより、業務の生産性向上に貢献する。管理者にとっては、SSDはHDDよりも耐久性が高い傾向にあるため、保守作業の負荷軽減が期待できる。  SSDは動作音が静かで、発熱量も少ない。これにより、データセンターやオフィスの静音化、冷却コストの削減といった副次的な利点も得られる。ただし、ファームウェアの定期的なアップデートや状態監視といった基本的な運用管理は必要だ。 耐久性  SSDは可動部品を持たないため、物理的な衝撃に強い。一方、HDDは内部でプラッタを回転させる機構や、データを読み書きするアクチュエーターなどの機械部品を多く含み、摩耗や物理損傷のリスクがある。例えば、落下や振動でアクチュエーターがずれると、データの読み取りエラーや故障の原因になることがある。  HDDは発熱量が大きいため、それが寿命を縮める要因にもなり得る。ただし、経験豊富な技術者による温度管理や最適な運用設計によって、信頼性を高めることも可能だ。  一方、SSDに搭載されているNAND型フラッシュメモリは、書き込み回数に制限があり、書き換えとともにメモリセルの劣化が進む。これに対応するため、SSDのコントローラーは耐久性向上機能を備えている。 コスト  HDDは1TB当たりの単価がSSDよりも低くなる傾向にあるため、ストレージ容量を重視する用途では依然として優位だ。ただし、コスト比較においては初期投資だけでなく、長期的な運用コストも重要だ。SSDは高密度・高性能である上に、省スペース・省電力・メンテナンス負荷の低減といった利点があり、総所有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)の削減につながる可能性がある。  後編はSSDとHDDを含めて、ストレージを選定する際にどのような点に着目すればよいのかを解説する。

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