ドルのベーシススプレッド縮小、プレミアムほぼ消失-米国債離れの兆候

近藤雅岐

為替デリバティブ市場におけるドルのプレミアムが消滅しつつあり、米国債に対する海外からの需要が弱まりつつあることを示唆している。

  ブルームバーグの集計によると、主要5通貨に対する加重ベースのドルベーシススワップ3カ月平均は現在3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)をわずかに下回っている。このままいけば、2020年8月以来初めてマイナスに転じる方向だ。

  ベーシススワップは、ある通貨を借り入れる際に投資家が支払うプレミアム(追加コスト)を示す指標。マイナスになればディスカウント(割引)を示す。

  長年にわたり、対米貿易黒字を持つ国々が得たドル資金は、米国債に振り向けられることが多く、通貨ヘッジ付き債券投資への需要がドルのプレミアムを支える要因となってきた。しかし、ブルームバーグの集計によると、外国人投資家が保有する米国債の割合は、2012年の52%をピークに低下を続け、現在は発行残高の33%にまで落ち込んでいる。

  さらに、トランプ米大統領の財政政策や関税に関する懸念もあり、市場の一部ではここ数カ月に「米国売り」という議論も広がっている。

  野村証券の小清水直和シニア金利ストラテジストは、長期ゾーンの米国債に対する海外勢の需要の弱まりは、ドルプレミアムの縮小につながる一因となり得ると指摘。その上で、最近までの高水準な資金調達コストがドルに対する需要をそいだほか、米国の政策をめぐる不透明感が、ドル資産からの分散を促した可能性があると分析した。

  米財務省のデータによれば、海外投資家による米国債保有額は6月に過去最高を記録した。ただ、保有額の増加にもかかわらず、市場に占める外国人投資家の割合は低下しており、資金の投資先を他に求める動きが強まっていることがうかがえる。

原題:Dollar Basis Premium Hints at Weakening Appetite for Treasuries(抜粋)

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