アングル:汎用半導体、供給不足で価格高騰 AI向け生産急拡大のあおりで
[ソウル 21日 ロイター] - 半導体業界では大手メーカーが人工知能(AI)向け製品の生産を急拡大したため、スマートフォンやコンピューター、サーバーに使われる汎用製品の供給がひっ迫し、一部でパニック的な買い付けや価格高騰が起きている。
半導体販売を手掛けるフュージョン・ワールドワイドのトビー・ゴンナーマン社長は「この1、2カ月で需要が急激に膨れ上がっている」と言う。「事態はまさに急速かつ激しく動いており、混乱はさらに広がるだろう。過去の供給不足のときと同じように二重発注や三重発注が起きている」
<生産シフトが供給不足を助長>
調査会社テックインサイツのダン・ハッチソン副会長は「莫大な資金が市場を駆け巡り、需要を押し上げている」と述べ、このところ半導体やデータセンター関連で大型の案件が活発化していると指摘した。
また、従来型データセンター事業者は17-18年の前回のブーム期に購入したサーバーのアップグレードや更新を始めている。
ゴンナーマン氏はデータセンター事業者について、「6―8カ月前まではDRAMであるDDR5サーバーメモリが供給過剰だった。しかし今ではDDR5サーバーモジュールの平均販売価格は急騰している。マイクロン、ハイニックス、サムスンにとってはまさに朗報だ」と話した。
テックインサイツのデータによると、さまざまな用途で使われるDRAMのスポット価格は今年9月には前年比でほぼ3倍に跳ね上がった。4月時点では前年比4%高にとどまっていた。
DRAM半導体の平均在庫期間は23年初頭には31週間だったが、1年前には10週間となり、現四半期にはわずか8週間にまで短縮した。
KB証券の調査部門トップのジェフ・キム氏は、現在の価格上昇が続けば来年は非HBM半導体の収益性がHBMを上回ると予想する。同氏の推計に基づくと、サムスン電子は7─9月の営業利益率が一般的なDRAMで約40%、HBMで60%だ。マイクロンは先月、26年にはHBMと非HBMの両方で健全な利益率を確保できるとの見通しを示した。
一方、米国の関税引き上げや、中国によるレアアース(希土類)輸出規制の拡大に伴うサプライチェーン(供給網)混乱の懸念など、既にコスト上昇に直面している家電メーカーやサーバーメーカーは半導体価格高騰で利益がさらに圧迫されるリスクに直面する。一部の企業はコスト上昇分を消費者に転嫁し始めている。
<スーパーサイクルに慎重な見方も>
非HBM半導体の収益性改善を受けてメモリーメーカー株は今年に入って上昇。サムスン電子の株価は80%超値上がりし、SKハイニックスとマイクロンの株価もそれぞれ170%、140%急騰している。
ただ、投資家の間ではAIバブルの兆候に対する警戒感も強まっている。
テックインサイツのハッチソン氏は「スーパーサイクルという表現は大げさだ」と述べ、現在の状況は通常1ー2年続く典型的な供給不足の局面に過ぎないと指摘した。テックインサイツは27年に半導体業界が調整局面に入ると予想している。
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