約22万円の新型「Mac mini」で初めてのローカルAI体験 ストレージの価格高騰対策にピッタリかも(1/3 ページ)

 世間を見てみると、最近は「ローカルAI」が注目を集めている。要するにLLM(大規模言語モデル)をはじめとする生成AIを手元のPCやワークステーションで動かすということなのだが、個人で取り組む人も見受けられる。

 だが、いろいろ見ていると、「自作PCにNVIDIAの『GeForce RTX 5090』を複数枚組み込みました!」とか、「M5 Ultraチップ積んだ『Mac Studio』を買い増した!」とか、数百万円するマシンで動かすという、ある意味で“豪気”な話ばかり聞こえてくる。

 筆者は、市井のMacユーザーなので、そんな金額スケールでは、とても手が届かない。もうちょっと気軽に生成AIは動かせないものか――そう考えていたところ、M6チップを搭載する「Mac mini」の24GBメモリ構成を借りて使う機会があった。

 「これ小さなLLMを入れて、自宅AIサーバとして利用できる手はないか?」ということで、ちょっと試してみることにした。

M6チップに24GBメモリの「Mac mini」は、LLMの夢を見ることができるのか……?(写真が若干ネタバレな予感もするが気にしないでほしい)

 といっても、筆者はMacにはそこそこ詳しくても、AIにそんなに詳しいわけではない。そこで、たまたま家に帰ってきていた、大学でコンピュータサイエンスとAIを学んだ息子(卒業して2027年春に就職予定)に教えてもらいながら取り組むことにした。

 そんなわけで、この記事は筆者と同じように「LLMには詳しくないけれど、MacにLLMを組み込んで使ってみたい」と思っている人を想定して書いている。なお極力詳細には書いたが、書き切れない部分もあるので、実際にチャレンジする方は、ご自身の環境を踏まえて生成AIなどに質問しながら、作業を進めていただければと思う。

今回は、台湾の大学で4年間コンピュータサイエンスとAIを学んできた息子の力を借りた。といっても、彼はAIを「作る」方を学んできたので、「使う」方は、専門じゃないとのことだ。2027年春からは「AIアーキテクト」という聞きなれない職種で社会に進出する予定だ

 まず、「クラウドLLM」と「ローカルLLM」の違いを説明した上で、ローカルLLMのメリットについて解説しよう。

 「LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)」とは、大量の文章などを学習し、入力された言葉に続く内容を予測することで、文章の生成や要約、質問への回答などを行うAIモデルのことを指す。開発者の用意したデータセットを学習した、大量のパラメーターの“塊”だ。

 皆さんが一般的に使う「ChatGPT」や「Gemini」といったAIサービスは、その心臓部に当たるLLMがクラウドサーバ上にあり、(詳細は公表されていないが)数千億から兆単位のパラメーターを持つと言われている。

 それに対して、ローカルLLMはパラメーター数こそ少なくなるが、データをクラウドサーバに送信しなくてもいいのがメリットだ。「社外秘の情報」「守秘義務下の情報」でも安心して扱えるし、一般のクラウドLLMでは規制(制限)されているデータも使いやすい。

 話によると、M5 Ultraチップ搭載のMac Studioで、メモリを大幅に増やした構成(200万円超)なら100B~200B(1000億~2000億)のパラメーターを持つLLMなら、クラウドLLMとそう大きく変わらない使い勝手が実現できるらしい。しかし、現在手元にあるMac mini(24GBメモリ)では、限られたことしかできないようだ。そのあたりも含めて試してみよう。

 今回Appleから借りているMac miniは、先述の通り最新のM6チップを搭載し、メモリは24GBを備えている。ストレージは512GBのSSDで、この構成のApple Storeにおける販売価格は22万1800円だ。

 本体は約12.7cm四方で、厚さは約5cmと比較的コンパクトに収まっている。パッケージには本体の他には電源ケーブルしか入っておらず、ディスプレイや、マウス、キーボードは別売となる。

 Apple Storeや一部家電量販店ではカスタマイズ(CTO)も可能で、上位の「M5 Proチップ」モデルであれば、メモリは最大64GB、SSDは最大8TBまで選択できる(この場合のApple Store価格は18コアCPU/20コアGPUのチップで119万9800円!)。

 現在のMacに積まれるApple Silicon(Apple Mシリーズ)はiPhoneのチップセットを基に開発されているため、パフォーマンスの割に発熱が少ないので、このコンパクトなボディーを実現できるのだそうだ。

Appleから借用したM6チップ搭載のMac mini。M6チップは2nmプロセスで生産される最新のSoCで、CPUのシングルコア性能は、現行のMacで最も速いとされる。上位モデルは1世代前のM5 Proチップとなるが、マルチコア性能ではM6チップを上回る

 今回は、このMac miniを自宅に置いた上で、外出した際にMacBook AirやiPhoneを使ってアクセスし、自宅のストレージにある資料を探したり、録音ファイルから文字起こしをしたり、翻訳したりする――こういうイメージで使ってみようと思う。

 これが実現すれば、取材時に持ち歩くMacBook Airに多くの資料を入れておく必要がなくなる。

 筆者は現在、持ち歩き用に2TB SSD構成のMacBook Airを使っているが、昨今のストレージ高騰を受けて、本体の買い替えがつらくなっている。データは自宅サーバに置いて、外からアクセスして取り出せるようにできれば、大きく経費を削減できるかもしれない、というのが筆者の思惑もある。

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 インストールしたQwen 3.5 9B Q4_K_Mに、まずは「何ができますか?」と聞いてみた。すると、できることを端的に説明してくれた。

 そして筆者の過去の原稿を渡して要約してもらったり、英語に翻訳してもらったりもした。いずれも現在のクラウドAIで使われるモデルほどの精度はないようだが、容量を抑えたLLMとは思えないほど、きちんと動作している。

 ネットの使えない環境などで、単純作業を延々と行うのには便利かもしれない。

 「Apple Intelligenceとは何?」「最新のiPhoneについて教えて」など、いくつか質問をすると、Webを検索して回答してくれる。最新のChatGPTやGeminiほど洗練されてはいないが、これほど小さなLLMとは思えないくらい、ちゃんと動作した。

筆者の過去原稿のテキストを渡し、要約して、さらに英訳してもらった。筆者は英語が得意ではないので、ローカル環境だけで日本語と英語を翻訳できるのはとても便利そうだ

 最後に、Mac miniにTailscaleをインストールして遠隔操作をできるようにする。これにより、外出先で使うMacBook Airから、自宅のMac miniのQwenを操作できるようになる。

TailscaleはVPN/ネットワークサービスアプリで、双方のデバイスをネットワークを越えて接続できるようにする
MacBook Airから、ネットワークを越えてMac miniのQwenを扱えるようになった

 早速、MacBook AirからMac miniのOpenClawを操作し、Ollama上のQwen 3.5 9B Q4_K_Mにファイルの取り出しを指示してみよう。いわば、ここまでの“集大成”だ。

 「Mac miniのダウンロードフォルダにある『旅行の写真.jpeg』を取り出して」と頼んだところ、意図通り、見事にMacBook Air側から取り出すことができた。これで同じような作業が可能だと思う。

MacBook Airから、自宅にあるMac miniのQwenに頼んで、Mac mini内のフォルダにある画像ファイルを送ってもらうテスト。自宅のWi-Fiではなく、iPhone経由のテザリングでつないでもきちんと動作した。外出先でもバッチリ動きそうである

 もちろん、多くのタスクはクラウドAIを使った方が高いパフォーマンスで実行できる。しかし、セキュリティ上、クラウドAIを使えない仕事もある。

 筆者の仕事でいえば、守秘義務(秘密保持)契約(いわゆるNDA)を結んで、発表前のデジタルデバイスをテストしたりレビューしたりすることがある。その際に、デバイスに関する資料も受け取るのだが、当然これもNDAの対象である。これらをクラウドAIサービスに読み込ませるのは、契約上やってはいけないことだ。読者の皆さんの中にも、NDA資料に限らず仕事において社外に持ち出せない資料を扱う人もいるだろう。

 そんな時に、ローカルストレージやローカルAIを使えれば、資料を外部に出さずに要約したり和訳したりできる。こうしたAI付きのファイルサーバとして自宅のMac miniを活用できれば便利だと思う。

 また、「自宅に据え置いたPCをメインマシンにして、持ち歩くノートPCのストレージ容量を小さくしてコストダウンをする」という使い方をする際に、自宅側も持ち運び側もMacなら、Mac miniとMacBook Air(場合によってはMacBook Neo)を選ぶ、というのもアリかと考える。

 今回Mac miniにインストールしたサイズのLLMで性能的に十分かどうかは、少々議論があるかと思う。性能が物足りない場合は、自宅側のMac miniをより性能の高いものにしたり、LLM自体の性能向上があったりすると、より便利になりそうだ。

 筆者のようにさほどコンピュータ操作に詳しくない者でも、何とかそういった環境を構築できる時代になってきたのは、よいことである。

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