備蓄米「きのうはヨーカドーで購入」 「買いだめ」心理を助長するもの
トイレットペーパー、マスク、そしてコメ――。
不安から買いだめや買い占めが起きれば、価格の高騰や供給不足が深刻化する。
「きのうはヨーカドーで購入」
随意契約による政府備蓄米の店頭販売が始まると、複数店舗で連日買い求めていた客の発言がメディアで報じられた。X(ツイッター)には「こういうことをするから出回らなくなることを学ばないのか」などと批判コメントが相次いだ。
長引く「令和のコメ騒動」にどう向き合えばいいのか、社会心理学が専門の新潟青陵大の碓井真史教授に聞いた。
<主な内容> ・マスクとコメの違い ・社会不安を起こすモノ ・コメ9キロに10人並んだら?
・政府がすべきこと
――備蓄米を求めて、複数の店を回るなどした人もいました。
◆じわじわコメの値段が上がり、スーパーにいつも山積みされていたコメが消えました。一部の個人や業者に買いだめ的な行動もみられます。
そこに今回の政府備蓄米が出てきたのです。「半額だけど数量限定、早い者勝ちです」となれば人は殺到します。さらに報道で長蛇の列を見れば「私も私も」となります。
心理学で「希少性の原理」と言いますが、人は手に入れにくいモノに価値があると感じます。「コメ余り」と言われると興味を持ちませんが、「コメ不足」と言われると食べたくなります。
こうした原理に基づいた「数量限定」のような売り方は、商売としては良い方法でしょう。ですが生活必需品の場合はトラブルが生じることもあります。
――新型コロナウイルス禍では、マスクを求める人が各地で列をなし、高値で取引されました。トイレットペーパーも「不足している」というデマから買い占めが起こり、混乱しました。
◆心理的には同じ現象ですが、背景が違います。
マスクは現実に不足し、世界的な奪い合いが生じていました。
トイレットペーパーに関しては、政府や業界団体が迅速に動いた成功事例だと考えています。不足は流通の問題であることを説明して商品が山積みされた倉庫を公開し、パニックは早期に解決されました。
今回のコメの場合、なぜ不足しているのかほとんどの人がよく分かっていません。
政…