記録連発の『鬼滅』と『国宝』 実は「夏の二強」ではなく「夏の一強」である理由

 日本の夏、シネコンの夏。景気のいい記録更新が揃い踏みとなった。8月第3週の動員ランキング、5週連続の1位は『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。週末3日間の動員121万8000人、興収は18億7500万円。8月17日までの31日間の累計動員は1827万2900人、累計興収は257億8300万円。公開からたった1ヶ月で、『君の名は。』(2016年公開、251.7億円)や『アナと雪の女王』(2014年公開、255.0億円)の記録を上回って、歴代興収4位のポジションにつけた。今後、大失速しない限り3位の『タイタニック』(1997年公開、277.7億円)、2位の『千と千尋の神隠し』(2001年公開、316.8億円)を抜くのも時間の問題。焦点は、果たして『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020年公開、407.5億円)超えがあり得るのかというシリーズ内対決に絞られてきた。

 公開11週目にして3位にランクアップした『国宝』の週末3日間の動員は36万5000人、興収は5億4400万円。8月17日までの73日間で累計動員は747万3500人、累計興収は105億3900万円。実写日本映画としては、『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年公開、173.5億円)以来、22年ぶりに興収100億円を突破した。こちらも、実写日本映画歴代2位の『南極物語』(1983年公開、110.0億円)を抜くのは時間の問題となっている。

 国内興収歴代1位に肉薄しそうなアニメーション作品と、22年ぶりの快挙を成し遂げた実写作品。一つの夏(『国宝』の公開は6月初旬だったが)に二つの規格外のヒット作が生まれたこと自体が異例のことだが、この2作品が同じ配給会社(東宝)の作品であるだけでなく、同じ系列の製作母体を持つ作品であることは今後の日本映画の未来を占う上でも重要だろう。

 『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の製作、及び東宝と共同配給を手がけているのはアニプレックス。『国宝』の製作を手がけているのは2年前からそのアニプレックスの完全子会社となっているミリアゴンスタジオ。アニプレックスはソニー・ミュージックエンタテインメントの完全子会社なので、『鬼滅』と『国宝』は東宝の作品であると同時に(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントではなく)ソニー・ミュージックエンタテインメントの作品であるとも言える。

 『鬼滅』と『国宝』がソニー・ミュージックエンタテインメントの作品であること、つまり現在の日本映画界の因習や規範の外側で生まれた作品であることは、製作幹事にテレビ局が入っていないこと、企画の初期段階から海外マーケットを見据えていることにも表れている。配給も製作もあまりに一強となっていることは気がかりではあるが、近年一部のアニメーション作品のヒット作に支えられてきた日本の映画界が、新しい時代に入ったことは間違いない。

■公開情報 『国宝』 全国公開中 出演:吉沢亮、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、三浦貴大、見上愛、黒川想矢、越山敬達、永瀬正敏、嶋田久作 宮澤エマ、田中泯、渡辺謙 監督:李相日 脚本:奥寺佐渡子 原作:『国宝』吉田修一著(朝日文庫/朝日新聞出版刊) 製作幹事:アニプレックス 、MYRIAGON STUDIO 制作プロダクション:クレデウス 配給:東宝 ©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会 公式サイト:kokuhou-movie.com 公式X(旧Twitter):https://x.com/kokuhou_movie 公式Instagram:https://www.instagram.com/kokuhou_movie/

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