首謀者摘発の闇バイト強盗、実行役の報酬は最大で数万円 「使い捨て」の実態、捜査で判明

首都圏強盗の首謀者検挙について会見する警視庁幹部ら=令和7年12月、東京都千代田区(成田隼撮影)

令和6年に首都圏で発生した「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」による連続強盗事件で、警視庁などの合同捜査本部が昨年末、初めて「首謀者」とみられる4人を摘発した。もともと、特殊詐欺に関与していたとみられるグループはなぜ、強盗に手を染めたのか。捜査では、4人が役割の細分化など詐欺組織の構図を維持しながら、短絡的に手口を凶暴化させた過程が浮かび上がってきている。

「腹を蹴れ」「指を折れ」電話で指示

強盗事件は令和6年8~11月、神奈川、埼玉、千葉、東京で18件発生。店舗や家屋に実行役が複数人で押し入り、金品を奪ったり、住人にけがをさせたりする手荒な手口が共通しており、横浜市では被害男性が激しい暴行を受けて死亡した。

このうち、千葉県市川市の事件を主導したとして、強盗傷害などの容疑で逮捕、同罪で起訴されたのは、福地紘人(26)、斉藤拓哉(26)、村上迦楼羅(27)、渡辺翔太(26)の4被告だ。

「腹を蹴れ」「指を折れ」-。4人は秘匿性の高いアプリ「シグナル」の9つのアカウントを使い分け、車内やホテルなど複数の場所から、実行役らに電話などを通じて指示。暴行させる際には、非のない被害者を悪者に仕立てるなどし、実行役に罪悪感を感じさせないようにしていた。

押収したスマートフォンの解析などから、4人が6年8~10月、X(旧ツイッター)の他人名義のアカウントを購入していたことが判明。「強盗」「案件多数」などと書かれた募集の投稿が見つかり、4人は実行役を集める役割も担っていたとみられる。

報酬得た実行役は逮捕の38人中6人

そんな「闇バイト」に応募し、一連の事件で逮捕された実行役は、全部で38人。ところが、実際に報酬を得ていたのはそのうちわずか6人で、取り分は最大で数万円だったとみられる。全18事件の被害総額は約2300万円とされており、「高収入」などとうたう闇バイトに応募した実行役は、ほとんど報酬を得られていなかった。

一方、実行役らが強盗で得た金品の「回収役」は、数十万円の報酬を得ていた者もいた。首謀者らは回収役により高い報酬を与えることで、自分たちに確実に金品が渡るようにしていた可能性がある。

回収役の一部は福地被告の知人から紹介を受けており、市川の事件では、被害金品は数日のうちに、3人の回収役を介して最終的に福地被告の元に渡っていた。

首謀者4人の間に明確な上下関係はなかったとみられるが、福地被告は暴走族OBらで構成する準暴力団「打越スペクター」の関係者で、主導的な役割を担っていた可能性がある。また、斉藤容疑者は、指定暴力団住吉会系組織と関わりがあったとみられ、グループの背景には、反社会的勢力の影がちらつく。

特殊詐欺から強盗へ

〝トカゲの尻尾切り〟のように実行役を使い捨てる組織の構図は、「受け子」や「出し子」を入れ替えながら犯行を繰り返す特殊詐欺グループに重なる。捜査関係者によると、4人はもともと特殊詐欺に加担していており、人集めなどのノウハウを強盗に転用した可能性がある。

6年5月ごろに作成されたとみられるSNSのグループチャットでは、「うまく(実行役を)説得させれば、タタキ(強盗)もやれそう」などと、強盗をほのめかす内容も確認された。

「相手を言葉巧みにだますスキルが必要な特殊詐欺よりも、強盗の方が手っ取り早くカネが得られると考えたのではないか」。捜査関係者は、4人が暴力団などへの上納金の獲得に窮し、詐欺から強盗に手口を変化させた可能性を指摘する。

一連の事件では、住宅などに押し入ったものの、ほとんど金品を得ることができないなど犯行の「粗さ」も目立った。実行役は、報酬のためだけに集まった希薄な関係で、「組織への帰属意識がない分、指示役について抵抗なく供述するものもいた」(捜査関係者)。寄せ集めの組織であるトクリュウのこうした「ほころび」が、首謀者摘発の足がかりになったという。

合同捜査本部は、4人がほかの事件にも指示役として関与した可能性があるとみて、全容解明を進める。

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