【ANAに直撃取材】新運賃に不満噴出!?座席指定不可は“空の格差社会”の始まりか…新ルールの意図

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「えっ、ANAに乗るのに座席指定もできないの?」──そんな戸惑いの声が広がっている。

ANAが今年5月19日の搭乗分から、国内線で新たな運賃システムをスタートさせる。フタを開けてみれば、最安運賃やセールで買った場合、事前の座席指定ができず、無料で預けられる手荷物もこれまでの2個から1個に減るというシビアな内容だ。

飛行機によく乗る層からは「事実上のルール改悪では」「まるでLCC」と不満が噴出しているが、実はこのシステム、海外では数年前から当然のように適用されている「グローバルスタンダード」でもある。

フルサービスが当たり前だった日本人がこれから直面する、「空の格差社会」のシビアな現実とは――。旅行ジャーナリストのシカマアキ氏が、日本人がまだ知らないマイル事情の現実と、ANAの狙いに迫った。

海外の「最安運賃」のシビアな現実

マイレージプログラムを世界で最初に導入した航空会社で知られるアメリカン航空は、格安運賃での搭乗時におけるマイルやロイヤリティポイントの付与を、’25年12月17日より適用外に。乗客に提供する無料サービスが最小限の「ベーシックエコノミー」と呼ばれるこの運賃は、ここ数年、欧米など多くの航空会社で採用されている。

海外で普及している「ベーシックエコノミー」は、通常のエコノミークラスの運賃より安い代わりに、事前座席指定や受託手荷物は有料、マイル付与はないか最小限、搭乗順は後回しなどが特徴。

一方、機内食やドリンクなどのサービスは他の運賃と同様に受けられ、機内持込手荷物のルールも基本同じだ。

事前座席指定や受託手荷物1個から有料などはLCCによくみられる。しかも、1つ上の運賃を買おうとすると、その金額が跳ね上がることもある。

航空会社の上級会員であっても、ベーシックエコノミーでは事前座席指定や受託手荷物1個が無料の特典が受けられる航空会社もあれば、最上ランクの会員でも一切優遇しないケースも。現状、各航空会社で対応が分かれている。

3つの新運賃、何が違う?

ANA国内線の主な新運賃は、「シンプル」「スタンダード」「フレックス」の3つ。

「シンプル」は、予約変更不可/払い戻し有料/無料手荷物許容量1個(23kg)/事前座席指定不可(出発24時間前から可)/アップグレード不可など。金額が安い分、サービスは最低限に絞られている。

対して「スタンダード」は、予約変更有料/払い戻し有料/無料手荷物許容量2個(23kg)/事前座席指定無料/アップグレード可など。これまでと同じサービスが受けられる運賃と考えていいだろう。

さらに、「フレックス」は当日まで購入可能で、予約変更無料/払い戻し有料(航空券購入後~出発時刻前は取消手数料500円のみ)/無料手荷物許容量2個(23kg)/事前座席指定無料/アップグレード可など、フルサービス運賃だ。

ほかに、「セール」「ANAカード優待割引」「Biz」「株主優待割引」「島民割引」に加え、ANAマイレージクラブ会員およびANAカード会員限定の「ユース」(満12歳以上25歳以下)「シニア」(満65歳以上)などがある。

なお、「介護割引」は’26年5月18日搭乗分までで終了となるので、くれぐれも注意したい。

結局いくら? 新旧運賃を比較

新たな運賃スタイルになると、金額はどれほど変わるのか。東京(羽田)→札幌(新千歳)の最安運賃で比較してみた(いずれも片道、エコノミークラス/2026年3月5日調べ)。

【2026年5月18日】

スーパーバリュー 11,460円

バリュー 33,930円

株主優待割引 24,580円

ビジネスきっぷ 39,870円

フレックス 48,340円

【2026年5月19日】

セール 11,490円 ※セール期間のみ販売

シンプル 12,370円

スタンダード 15,780円

株主優待割引 24,580円

ANAカード優待割引 39,870円

フレックス 48,340円

「シンプル」と「スタンダード」で比べると、大半の路線で1000~2000円ほどの金額差がみられる。それが往復だったり、家族での利用だったりすると、この金額差は決して小さくない。また、事前に座席指定したい家族連れやグループには、痛手となる変更だ。

一方、株主優待割引、ビジネスきっぷ/ANAカード優待割引、フレックスは、5月18日までと19日以降で比べると、それほど大きな金額差が今のところ感じられない。旧運賃から金額据え置きとなっているようだ。

要注意! キャンセル料も変更

新運賃では、例えば、ANAマイレージクラブで最上の「ダイヤモンドサービス」メンバーでも、エコノミークラスを「シンプル」で買うと、事前座席指定ができない。

さらに厳しいのが、取消(キャンセル)規定の変更だ。これまでの最安運賃「スーパーバリュー」は「出発55日前までなら払戻手数料のみ」だったが、今後は出発がかなり先の日程でも、発券後すぐに「取消手数料」が発生してしまう。

その取消手数料はスタンダードでも、購入後の取消手数料が出発45日前まで運賃の約10%、搭乗28日前まで約20%、27日前~出発前は約30%、出発後は100%の取消手数料がかかり、加えて1枚(1区間)につき440円の払戻手数料が必要となる。なお、「バリュー」だとこれまで、購入後から出発前まで運賃の約5%相当のみだった。

ANAを直撃! 新ルールの「意図」

FRIDAYデジタル編集部がANAに質問状を送付したところ、以下の回答が得られた。

新運賃を導入する理由は、「国内線と国際線の旅客サービスシステムの統合に伴う、国内線運賃のリニューアル」とし、「国内のみならず、海外のお客様にもご利用いただきやすくなるよう、多様化するニーズに、よりお応えできる運賃体系へ見直しを行いました」とのこと。

ベーシックエコノミーが普及する海外に合わせたものではなく、あくまで「お客様の幅広いニーズにお応えできる運賃ラインナップの強化を行っています」とのことだった。

新たな手荷物ルールに関しては、「今回リニューアルした運賃ラインナップのなかには、無料手荷物許容量0個の運賃は設定しておらず、『シンプル』運賃においても無料手荷物許容量1個/23kgをお預けいただけ、無料手荷物許容量の重量が現在の20kgよりも多くなっております」との答え。

事前座席指定においてダイヤモンド会員でも優遇がない点は、「『フレックス』や『スタンダード』をご利用の場合、座席指定が可能なエリアを継続してご用意しております」との回答だった。

マイルなし? 進む「空の格差」

LCCの台頭で、短距離路線で片道数千円というのも珍しくないヨーロッパで、FSC(フルサービスキャリア)の存続をかけて誕生した「ベーシックエコノミー」。しかし、もともとサービスがさほど良いとは言い難い欧州系航空会社がさらにシビアな運賃を導入したことで、その評判は芳しくない。

また、アメリカでは、さらに先行する動きもある。

ユナイテッド航空では、会員プログラム『マイレージプラス』のクレジットカードおよびデビットカードを所有する利用者に対し、マイルと交換で予約する航空券を10%割引し、提携カード保有の「プレミア」会員には15%割引に引き上げる。一方、ベーシックエコノミーだとマイレージプラスの会員でも今年4月以降、提携カード保有が必須条件となる。

デルタ航空は、ベーシックエコノミーだとマイルや上級会員の資格獲得に必要なクレジットは原則として獲得できない。先に紹介したアメリカン航空もこれに続いた形だ。

日本では「大手航空会社はLCCよりサービスが良く、座席指定も手荷物も無料」と考えている人は多いだろう。

しかし海外では、上級会員でも優遇されないケースや、マイレージ会員でも提携カード保有が必須条件になるなど、よりシビアな改定が相次いでいる。

今回のANA国内線の新運賃は、果たして日本で定着するのか。そして、他の航空会社がこれに追随するのかどうかも気になるところだ。

取材・文・写真:シカマアキ

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