イスラエル、レバノンの首都南部を空爆 イスラム教の祝祭前夜に
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イスラエルは5日夜、レバノンの首都ベイルート南郊に複数回の空爆を行った。レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラのドローン(無人機)製造施設を標的にしたという。
空爆は、イスラム教の最も重要な祝祭の一つ「イード・アル・アドハ」の前夜に実施された。ベイルート市内では先に、ヒズボラが拠点を置く地域にある複数の建物から避難するよう警告が出されていた。
イスラエル国防軍(IDF)は、「イランのテロリスト」から資金提供を受けて地下で「数千機」のドローンを製造するヒズボラ部隊を特定したと説明した。
イスラエルは、昨年11月のヒズボラとの停戦合意発効後もレバノンへの空爆を繰り返している。
レバノンのナワフ・サラム首相は、5日の空爆について「強く非難する」と述べた。
「私はこの空爆を、特に祝祭前夜と観光シーズンというタイミングに合わせて行われた、我が国とその安全保障、安定、経済に対する体系的かつ意図的な攻撃とみなしている」と、サラム氏はソーシャルメディアに投稿した。
人口が密集するベイルートでは、避難を呼びかける警告を受けて数千人が路上にあふれ、交通渋滞が発生した。その後、上空に煙が立ち上った。
レバノンのジョセフ・アウン大統領は、「神聖な宗教的な祝祭の前夜に」空爆が行われたと指摘し、「国際協定への明白な違反」だと述べた。
IDFは、「ドローンの大々的な使用」がヒズボラのイスラエル攻撃の中心になっているとし、こうした活動は「イスラエルとレバノンの合意に対する明らかな違反」だと主張した。
IDFのアラビア語報道官アヴィチャイ・アドラエ氏は空爆の1時間前、ベイルート南郊のダヒヤ、ハレト・ヒレク、ボルジュ・エル・ブラジネの住民に避難命令を出した。
アドラエ氏は、「あなた方はヒズボラと関係するインフラの近くにいる」と、特定の複数の建物を示す地図とともにソーシャルメディアに投稿した。
2023年10月にパレスチナ・ガザ地区で、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まる以前、イスラエルと、ハマスと同様にイランの後ろ盾を受けるヒズボラは、1年以上にわたり国境を隔てた敵対行為を展開していた。両者の衝突は最終的に、イスラエルによる激しい空爆とレバノン南部への地上侵攻に発展した。
この攻撃でレバノン国内では多くの民間人を含む約4000人が死亡し、120万人以上の住民が家を追われた。
イスラエルは、国連平和維持軍がヒズボラを止められなかったとして、イスラエル国境近くのヒズボラ施設を解体するために軍事介入が必要だったと主張した。
ヒズボラの攻撃により、イスラエル北部からの避難を余儀なくされた約6万人の住民を帰還させることが、軍事攻撃の目的だとしている。
昨年11月下旬に、イスラエルとレバノンによる停戦合意が発効すると、IDFがレバノン南部から撤退し、レバノン軍が同地域の治安維持を引き継いだ。ヒズボラは停戦に合意していない。
この合意は、「国際法を順守して国を守るという、固有の自衛権を行使するイスラエルまたはレバノンの権利を妨げるものではない」としている。
イスラエルは合意発効後の数カ月間、レバノン国内のヒズボラに関連しているとする標的に対し空爆を行っている。
4月には、ダヒヤにあるヒズボラの「精密誘導ミサイル」の倉庫だとする場所を攻撃した。
4月上旬にも同様の空爆を実施。レバノン保健省はヒズボラ幹部ら4人が殺害されたと発表した。
レバノン政府はこうした攻撃や、イスラエルがレバノン南部の5カ所に駐留し続けていることについて、停戦合意違反にあたるとしている。
ヒズボラと同様にイランの支援を受けるハマスは、2023年10月にイスラエルを奇襲し、約1200人を殺害。251人を人質に取った。イスラエルは直後に、ハマス壊滅を掲げてガザでの軍事作戦を開始した。ヒズボラはガザのパレスチナ人に連帯を示すために、イスラエル側に攻撃を仕掛けたとしている。