【日本市況】円買われ債券先物下落、日銀の年内利上げ観測-株式反落
25日の日本市場は、円が対ドルで一時146円台後半へ上昇。日本銀行は、日米関税交渉の合意で年内に利上げできる環境が整う可能性があるとみていることが複数の関係者の話で分かり、円を買う動きが広がった。債券は取引終了間際に先物が下落転換し、前日まで連騰していた反動による売りで株式は反落。
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SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、内田真一日銀副総裁の先日の会見で一部言及していた部分もあったが、「明確に利上げの旗を降ろさないだけでなく、きちんとスケジュールが見えてきたという内容」との認識を示した。
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25日の日本市場の為替・債券・株式相場の動き- 円は対ドルでニューヨーク終値比0.1%高の146円94銭-午後3時35分現在
- 午前には一時147円49銭まで下げる場面があったものの、午後3時前には146円82銭まで上昇
- 長期国債先物9月物の終値は前日比8銭安の137円43銭
- 新発10年国債利回りは横ばいの1.6%
- 新発20年債利回りは前日比2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い2.56%
- 新発30年債利回りは3.5bp低い3.06%
- 新発40年債利回りは一時5.5bp低い3.345%
- 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.9%安の2951.86
- 日経平均株価は0.9%安の4万1456円23銭
外国為替
東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=146円台後半に上昇。SBIリクイディティ・マーケットの上田氏によると、ドルの上値が重くなったタイミングで日銀の年内利上げ環境が整う可能性があるとの報道で円が買われたという。
日銀の利上げを巡るブルームバーグの報道は「相場のトレンドを決める話ではないが、年内利上げがあることを固めたという内容で、その方向は正しい」と見ている。
一方、午前の取引では147円台半ばまで円は下げる場面があった。あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、欧州中央銀行(ECB)が8会合ぶりに利下げを見送るなどタカ派スタンスとなり、「欧州金利高でユーロ・円が上昇している影響」を受けたほか、午前10時前の仲値にかけて実需も「ドル買いがやや多かった」と話していた。
債券
債券相場は先物が取引終了にかけて下落に転じた。日米関税交渉の合意を受け日銀が企業行動次第で年内に利上げできる環境が整う可能性があるとみていることが分かり、売りが広がった。
朝方発表された7月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)が生鮮食品を除くコアベースの前年比伸び率が4カ月ぶりに3%割れとなったことが支えになり、午後後半まで先物、現物債とも買われていたが、日銀を巡る報道を機に中長期債は横ばいとなった。
一方、超長期債は午後3時過ぎに値が付き、軒並み利回りが低下(価格は上昇)した。日銀の早期利上げでインフレが沈静化すれば、長めの金利が低下するとの見方から買われた格好だ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは、日銀を巡る報道で債券市場は影響を受けやすい2年債、5年債が売りで反応したと指摘。超長期債については利上げ期待の影響を相対的に受けにくいゾーンで、昨日以降、やや金利が一服している流れもあり、「イールドカーブ(利回り曲線)はフラット(平たん)化している」と述べた。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.845% 1.135% 1.600% 不成立 不成立 不成立 前日比 横ばい 横ばい 横ばい - - -株式
東京株式相場は反落。米国株市場で素材や資本財など景気敏感業種が下げた影響を受けたほか、前日まで連騰した反動で売りが出やすく、化学や鉄鋼など素材株、輸送用機器や電機など輸出株中心に安い。TOPIXは前日までの2営業日で5%、日経平均は2000円以上値上がりしていた。
化学では通期営業利益計画が市場予想を下回った信越化学工業が急落。今期営業利益計画を下方修正したキヤノンの下げも目立った。市場参加者の間では、今後本格化していく主要企業の決算発表を見極めたいとの姿勢も強かった。
楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリストは、直近の大幅高や週末を控え利益確定売りが加速していると分析。今週の急騰で日本株のパフォーマンスはグローバル市場に追いつきつつあるが、ここから上昇するには企業が楽観的な利益見通しを示す必要があると言う。