マイランFRB理事、政策金利は高過ぎる-失業率の上昇招く恐れ

マイラン米連邦準備制度理事会(FRB)理事は22日、政策金利が高過ぎるとして、労働市場を守るために今後数カ月で積極的な利下げを実施すべきだと主張した。同氏の見解はトランプ大統領の要求と一致しているが、FRB内では例外的な見解であることが浮き彫りとなった。

  マイラン氏はこの日、ニューヨーク経済クラブで理事に就任後、初めて金融政策に関して講演。景気を熱しも冷やしもしない中立金利の水準が低下した理由について論じた。

  中立金利はこれまで過大評価されていた可能性が高く、最近では関税や移民規制、税制によってさらに低下していると主張。そのため、経済への悪影響を回避するには、金利はもっと低くあるべきだと述べた。

  「要するに、金融政策は大幅に景気引き締め的な領域にある」と準備原稿で指摘。「政策金利が約2ポイントも引き締め過ぎの水準にとどまれば、不必要な人員削減や失業率の上昇を招くリスクがある」と述べた。

  マイラン理事は先週公表されたFRB当局者の金利見通しで、年内に合計1.5ポイントの利下げが望ましいとの考えを示した。これに対し、19人の当局者による中央値は、追加で0.5ポイントの利下げにとどまっている。

  講演後の質疑応答で「これはパニックではない。75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)以上の引き下げならパニック的な措置だろう」とマイラン氏は指摘。その上で「パニックには陥っていないが、中立金利を大きく上回る水準が長引けばリスクが高まるとみている」と述べた。

  さらに今後の連邦公開市場委員会(FOMC)会合でも反対票を投じ続ける可能性が高いとの考えを表明。「自分の考えが変わらない限り、この見解を主張し続ける。もしそれが反対票を投じ続けることを意味するなら、反対を続ける。存在しないコンセンサスの幻想を作り出すためだけに、自分が信じないものに賛成票を投じるつもりはない」と述べた。

中立金利は低下

  同理事は講演で中立金利が現在低下していると考える複数の理由を提示。「私の見解では、国境管理や財政政策の変化が中立金利に強い下押し圧力となっている点を十分に考慮していないため、一部で金融政策が実際よりも引き締め的ではないとの誤解につながっている」との見方を示した。

  規制緩和のように「成長に対する重大な障害」を取り除くことで中立金利を押し上げる可能性があるとする一方で、財政政策が中立金利を大幅に押し下げている可能性が高いとした。また市場ベースの金利指標も自身の見通しに組み込んだと述べた。

  同理事は中立金利を約2.5%と推定しており、FRB当局者の中央値である3%を大きく下回っている。ただ、他の複数の当局者も中立金利が推定3%未満と考えている。それでも、その水準に急ピッチで到達すべきだと主張しているのは同理事だけだ。

意見の相違鮮明

  この日発言した他のFRB当局者は10月28-29日のFOMC会合で追加利下げを支持する用意があるとは述べず、マイラン氏との意見の相違が鮮明となった。

  これまでインフレへの懸念を強く示してきた当局者3人は、物価が依然としてFRBの目標である2%を上回って推移していることから、追加緩和には慎重に臨むべきだとの考えを示した。

  セントルイス連銀のムサレム総裁は、一定の条件下に限り、追加利下げを支持する考えを表明。「労働市場の弱さを示すさらなる兆候が現れた場合、インフレが目標を上回って長引くリスクが高まっておらず、長期的なインフレ期待が安定していれば、政策金利の追加引き下げを支持する」と述べた。

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  米クリーブランド連銀のハマック総裁はインフレは依然として高過ぎる水準にあり、景気過熱を避けるためにも利下げには慎重であるべきだと指摘した。

  金融政策は先週の利下げ後も「ごくわずかに」景気引き締め的で、「その引き締め効果を経済から取り除けば、再び過熱に向かうのではないかと懸念している」と語った。

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  アトランタ連銀のボスティック総裁はウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙とのインタビューで、先週の利下げに違和感はないが、年内追加利下げの必要性はほとんど感じないと述べた。

  「インフレが長期にわたってあまりに高い水準にあることを懸念している」とし、追加緩和について「現時点で動くことや、それを支持することはないだろう。状況を見極めていく」と話した。

  一方、 米リッチモンド連銀のバーキン総裁は、関税引き上げのうち消費者に転嫁されているのは「わずか」だとしつつ、価格に反映されるには時間がかかるとの認識を示した。

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原題:Fed’s Miran Makes an Outlier’s Argument for Cutting Rates(抜粋)

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