本格的な夏の始まりを前に猛暑の兆しー史上最高気温更新の可能性

中国の北部では、路面の温度がセ氏70度に上昇し、米カリフォルニア州中央部のセントラルバレー地域では、気温がカ氏100度(セ氏約38度)台に達している。スペインの多くの地域でも気温が急上昇し、観光客に対して警告が発せられている。

   北半球で本格的に夏が始まる数週間前から、北米、欧州、アジアが今後数カ月にわたり猛暑に見舞われる兆しが出ている。世界の気温は今夏に観測史上最高を更新する可能性もあると、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の気候学者、ダニエル・スウェイン氏は指摘する。

  猛暑によって、北米・欧州・アジアでは電力網への負担の増加や作物の成長不良、エネルギー価格高騰の恐れがある。また、高温で乾燥した天候に伴う山火事のリスクも高まっており、カナダの石油産業の中心地であるアルバータ州では既に火災が発生している。

  人的・経済的な影響は深刻だ。ある試算によると、猛暑は2030年までに米国だけで年間約2000億ドル(約28兆6000億円)の損失をもたらすと予想されている上、損失は50年までに5000億ドルと2倍超に膨らむ見通しだ。

  UCLAのスウェイン氏によれば、北米・欧州・アジア全てが気候変動による猛暑に見舞われるが、特に米国の西部と中部、カナダ、欧州の西部と北部への影響が大きいという。

ハリケーン「ベリル」直撃後に洪水に見舞われた住宅(米テキサス州、2024年)

  「温暖な季節に大雨に見舞われる傾向がある地域では、極端かつ記録的な豪雨や洪水のさらなる発生が見込まれる」と同氏は述べた。

  猛暑によってエネルギー需要も拡大する見通しだ。北米電力信頼度協議会(NERC)によれば、米国では今夏に約8900万人が電力の供給不足に見舞われるリスクが高い。

  猛暑は作物の成長不良につながり、物価高が続く中、食料品価格が上昇する恐れがある。米国では大豆、トウモロコシ、小麦の主要生産地域で干ばつが拡大している。

乾燥が進む欧州

  欧州では、降雨が少なく乾燥が進み、熱波や干ばつ、危険な山火事につながる条件が整っていると、民間の気象学者や政府の予報官は指摘する。

  ポルトガルとスペインでは先週、アフリカから高温の大気が押し寄せ、気温がセ氏約38度を超えた。

アジアの見通し

  気象庁によると、日本は今夏に例年よりも暑くなる可能性が高い。東南アジアも平均よりも暑くなると、東南アジア諸国連合(ASEAN)専門気象センターが予想している。

  中国は一部の極北部地域を除き、6月も暑くなると気象局は予測。主要な農産物供給国である米国との貿易戦争が続く中、北部の干ばつが小麦の重要な成長期を直撃し生産が脅かされている。

  UCLAで気候変動関連の統計を研究するカレン・マッキノン教授は「猛暑の増加は、気候変動の最も明確な症状だ」と指摘。「数度程度という一見小幅に思える気温の変化でも、夏が大幅に過酷に感じられるようになる」と述べた。

原題:Highways Baking at 158F Signal Red-Hot Summer From US to China (1) (抜粋)

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