高齢者のうつ症状が便秘症状と関連することが明らかに :ニュース

うつ症状は生活の質(QOL)を低下させ、食欲低下などを生じて生命予後にも影響を及ぼす。うつ症状を含む気分障害は、高齢者で多く見られることがわかっている。 また、便秘症状もやはり高齢者に多く認められる。便秘は、QOLの低下に加え、冠動脈疾患や脳血管疾患、慢性腎疾患、フレイル・サルコペニアとの関連も報告されている。

これら、高齢者に多いうつ症状と便秘症状は、ともに予防対策が重要である。

順天堂大学の研究グループは、高齢者のうつ症状と便秘症状との関連について、国際的に広く用いられている評価スケールを用いた横断研究により、うつ症状の重症度と、上~下腹部症状のQOLの低下および便秘重症度が関連していることを明らかにした。

本研究の対象となったのは、研究グループが属する高齢者医療センターを受診した平均年齢78.1歳の自立歩行可能な高齢者984名である。調査には、高齢者専門大学病院における多職種によるフレイル実態調査の大規模前向きコホート研究(JUSTICE研究)の登録時データを活用している。 具体的な調査項目は、患者背景問診と内服薬、腹部症状質問票として消化器症状関連QOL問診票(出雲スケール)および便秘症状重症度(CSS:Constipation Scoring System)、心理検査として認知機能関連問診(MMSE:Mini-Mental State Examination)および老年期うつ病評価尺度(GDS15: Geriatric Depression Scale-15)である。これらに関して、GDS15のスコアと各種調査項目における相関、ならびに多変量解析(重回帰分析)によるリスク因子の解析を行った。

うつ症状の割合は、正常(GDSスコア0~4点)が61.3%、軽度うつ状態(同5~9点)が32.4%、中等~重度うつ状態(同10~15点)が6.3%で、今回調査した高齢者の38.7%が軽度もしくは中等~重度のうつ状態に該当していた。 うつ症状の重症度別に、各種腹部症状スコアとの相関を見たところ、逆流・胃痛・胃もたれ・便秘・下痢といったすべての上~下腹部症状のQOLの低下や便秘重症度と、うつ症状の重症度が相関していることが明らかとなり、なかでも便秘症状は、うつ症状の強さに比例して重症であった。また、うつ症状の強さに比例して、逆流や下痢の症状も悪化しており、やせ(BMI)や認知機能低下(MMSE)とも関連していることが浮き彫りとなった。

うつ症状と便秘症状はともに高齢者の健康長寿に影響を及ぼすものであり、人生100年時代のわが国で、高齢者のうつ・便秘の予防・対策への重要性が示唆された。今回の研究で得られた知見をもとに、今後、便秘やうつ症状に対して予防・介入を含めた臨床研究への展開が広がり、高齢者の健康寿命延伸に寄与することが期待される。

詳しくは、下記の順天堂大学Webサイト参照

「本邦初:高齢者のうつ症状が便秘症状と関連することを国際的に広く用いられている評価スケールを用いて確認」

https://www.juntendo.ac.jp/news/23454.html

【関連ページ】 ●危険な病態につなげない! “重篤な便秘”を見抜く・ケアする

https://www.almediaweb.jp/excretion/constipation-care/

●新たな段階に移る“便秘ケア”

https://www.almediaweb.jp/expert/feature/1904/

●「ディアケア プレミアム」 在宅での【排便】アセスメントと 手技指導やケアのコツ(実践ケア動画)

https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat10/theme008/index.html

●「ディアケア プレミアム」 排尿・排便ケア実践テクニック(実践ケア動画)

https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat10/theme001/index.html

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